第106話 侵食するエラー
昨日一日中考えてみたが翌朝になっても現実は変わらない。
変化の無かった俺のステータスが寝て起きたら都合の良い変化を起こしていたなんてことはもちろん無い。
完全に成長限界を迎えた事は理解できたし納得もした。
それでも今俺にできる事が一つだけある。
以前も考えたことはあったが『風舞』や『ボルテックファイア』のような強力なスキルへ模倣の上書き。
俺の能力がこれ以上上がることはなくても元々強力なスキルを模倣することができれば、もう少しの間葵の横に立つことはできるかもしれない。
運に頼る要素が強すぎるので前回は、頭の中からは除外したが今はこれが俺に残された唯一の可能性。
昨日はショックのあまりステータスをじっくりと見ることはできなかったが、今日になり気持ちを少しだけ立て直すことができたので、再度ステータスを確認した。
そしてステータスに全く変化がないというのは間違いだと気がついた。
なんとエラーが拡大していた。
〈《アイスジャベリン8》〉
『アイスジャベリン』のスキルホルダーのエラー表示が拡大していた。
レベル10では片方だけにあった《 のエラー表示が両側に増えてまるで二重表示のようになっていた。
成長限界を迎えた俺に追い討ちをかけるようなエラーの拡大に、スキルが使えなくなっているかもしれないと思い、慌てて外で『アイスジャベリン』を発動してみたが、前回の時同様何の問題もなく使えた。
「よかった……」
さすがにエラーに侵食されてスキルが、だんだん使えなくなるようなことがあれば完全に詰んでしまう。
それにしてもこのエラーはなんなんだ?
スキルが使え無くなる事もないが逆にパワーアップするわけでもない。
表示がおかしくなっただけでスキル自体には何の影響及ぼしていない気がする。
さすがに心配なので放課後にサバイバーの協会事務所に行って聞いてみよう。
いつものように学校へ向かう最中
「葵、今日はちょっとサバイバーの協会事務所へ行こうと思うから依頼はお休みでお願いしていいかな」
「どうかされましたか?」
「いや、ちょっと用があるだけだから葵は先に帰っておいて」
「…………そうですか。わかりました」
パーティを組んでからはずっと一緒に帰っていたので、少し変だとは思われたかもしれないが、まあ大丈夫だろう。
授業を受けてから放課後、早速サバイバー協会事務所へと向かう。
一般のサバイバーに過ぎない俺は協会事務所には今まで三回しか行ったことはないので、ちょっと緊張してしまう。
誰に相談していいのかもよくわからないので一応総合受付へと向かう。
「すいません。Eランクの山沖凛と言いますが、相談したいことがあるんですけど」
「はい、どういったご用件でしょうか?」
「ステータスとスキルについてなんです」
「わかりました。それでは相談窓口は五番になります」
「ありがとうございます」
俺は言われた通りに五番窓口に行って受付の人に声をかけて、係の人へと案内してもらった。
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