第35話 俺のやる気スイッチ
「凛くん、ちゃんと授業は受けれてますか?」
「あ、ああ、まあ、それなりに」
「明日のテストのポイントとかを言ってくれる場合もありますからしっかり受けてくださいね」
「ああ、はい。わかりました」
葵の忠告もあり五、六時間目はしっかりと聞くことが出来たが残念ながら授業でテストのポイントらしきものを教えてくれた様子は一切無かった。
「凛くん、帰りましょう」
昨日と同じく葵が迎えに来てくれたのでさっさと教室を出る。
「今日はスーパーに寄って帰りましょう。食材が今日の分で終わってしまうので」
「ああ、そうしようか」
俺も明日からのカップ麺を買う必要があるので丁度いい。
先日と同じスーパーマーケットに行って買い物を始めるが、葵がカゴに入れていく食材が微妙に多い気がする。
「葵、そんなに買って大丈夫?」
「はい、もちろん大丈夫ですよ」
一体葵はどれだけ食べるつもりなんだ?
この前と同じぐらい買おうとしてないか?
まあ、いいけど、俺のカップ麺を……
「凛くん、それはなんですか?」
「えっ?カップ麺だけど」
「どうして買おうとしているのですか?」
「いや、だって明日から食べるものが無いし」
「カップ麺はダメだって言いましたよね」
「いや、でも……」
「それに食べる物が無いってどう言う意味でしょう? 今買っているこの食材を何だと思っているのですか?」
「どう言う事?」
「私と凛くんの二人分に決まってるじゃないですか」
「え? そうなの」
「当たり前です。パートナーとして食事は私が作るって言ったじゃないですか」
「それって……三日間だけじゃなかったの? これからもご飯を作ってくれるって事?」
「凛くんが嫌じゃなければ、私はそのつもりでしたけど」
「嫌なわけない。葵のご飯は最高においしいから」
「それじゃあ、それは返して来てくださいね」
「はい」
なんと信じられない事にこれからも葵が俺のご飯も作ってくれるらしい。
俺は前回の食材分だけだと思い込んでいたが、葵は最初からそのつもりだったらしい。
こんな事があっていいのだろうか?
この天使の様な葵が俺のご飯を毎日三食作ってくれるのか?
この数日で既に俺の胃袋は完全に葵の作るご飯に掴まれてしまったと言っても過言ではない。
ファミレスのハンバーグにも心を掴まれたが、今は全く食べたいとは思わない。
それほどに葵のご飯は美味しい。
もちろんご飯は葵との関係の一部にすぎないのは理解しているが、パーティを解消されない様に一層努力する必要がある。
まずは明日からの試験を乗り切る必要がある。
俺は軽く考えてしまっていたが、成績優秀者の葵にとってテストで落ちこぼれると言う事は大変な事なのかもしれない。
それがパートナーである俺であっても、もしかしたら許してくれないかもしれない。
その場合最悪パーティ解消という事もあり得るかもしれない。
これはもう死ぬ気になって頑張る以外に選択肢は無い。
「葵、早く帰って勉強しよう、俺頑張るよ」
「私も凜くんが頑張れる様にお手伝いしますね」
「ああ、よろしく頼むよ」
先程まで、葵による超特訓に後ろ向きな感情を抱いていたが、今はポジティブな感情しか湧いて来ない。
今日からの俺は昨日までとは違う。
必ずテストを好成績で乗り切って見せる。やる気を漲らせた俺は、急いで部屋に戻って勉強を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます