第34話 天使の内に潜む鬼
「……………………………」
「凛くん、どうかしましたか?」
「……………わかりません」
「そうですか……どこがわからないのでしょうか?」
「ほとんどわかりません」
「………今日から徹夜ですね」
「えっ?」
「あと2日でテストが始まるのですよ。テスト期間中も勉強は続けるとしてこの二日間、普通に勉強して問題が解ける様になると思いますか?」
「………………思いません」
「そうですよね。だから本当はお勧めできませんが徹夜です。明日は二時間だけ寝ても大丈夫です。テスト前日ですからね」
「…………………」
葵が鬼に見える。
その天使の様な笑顔の裏に潜む魔物が……
「凛くん。変な事を考えてたりしませんよね」
「はい、もちろんです」
そこからは俺の精神力と集中力が擦り切れて穴が空いてもお構い無しに葵先生による超特訓が繰り広げられた。
人生の中でこれ程勉強に集中したのは初めてだ。
今までも、試験の度にそれなりに勉強して来たつもりだったが、あんなのは勉強のうちに入らないというのを思い知らされてしまった。
今やっているこれこそが本当の試験勉強。眠っていた脳細胞が一つ残らず叩き起こされた。
二十四時を回ってからは眠気が襲って来たりもしたが、葵先生はそんな事はお構いなしに俺の脳細胞を叩き起こしてくれた。
そして驚いた事に葵先生は朝まで俺の勉強に付き合ってくれた。
「葵まで徹夜する事なかったのに」
「だって私が寝てしまったら凛くんに教える人がいなくなってしまうじゃないですか」
「本当にありがとうな」
「いえ、パートナーですからこのぐらい当然です」
やはりパートナーだったらこのぐらいは当然なのか?
前回も同じ様にパートナーだからと言われたが、パートナーならこれほど色々やってくれるものなのだろうか?
今まで仮パーティしか組んだことのない俺には分からない。葵には感謝しかないが、正直学園でまともに授業を聞いていられる自信はないのでせめて先生にバレない様に眠りに入らなければならないだろう。
今日も繰り広げられるであろう超特訓に備えて授業中にしっかり寝溜めをしておく必要がありそうだ。
ちなみにテストが終了するまでのおよそ一週間はサバイバーの依頼通知が入らない様にOFF設定に切り替えをさせられてしまった。
テスト期間中でもサクッと狩りに出ようと思っていた俺が浅はかだった。
その後昨日と同じ様に葵と一緒に学校へ向かったが、今日は疲労の為か全くと言っていい程視線は気にならなかった。
そして授業が始まり一時間目はなんとか耐え切ったが、二時間目と三時間目は完全に夢の中へと誘われてしまった。四時間目の途中から立て直して真面目に授業を受けたが先生からは死角になっていたのか一度も注意を受ける事は無くお昼休みを迎える事が出来た。
お昼になると昨日同様に葵が教室に現れた。
「凛くん。お弁当食べましょう」
まあ、今日までの特別だから突き刺さる視線も気にせず葵のお弁当をじっくりと堪能する。
「やっぱりおいしいな」
「そう言っておいしそうに食べてくれると、これからも作り甲斐があります」
これからもって今日までの間違いだろうけど本当においしかった。またいつか葵のお弁当を食べてみたいな。
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