第19話 1対5

五体のモンスターを相手にするのは初めてだが、彼女さえ逃げてくれれば俺も適当なところで離脱する事も有りだ。

だが何故か彼女は逃げ出そうとしない。


「若葉さん早く逃げろ!」

「で、でも…………」

「いいから早くしろ!」


彼女も追われて気が動転していたのかもしれないが、五体のモンスターを前に俺も一切の余裕が無かったので普段よりも強い口調になってしまった。

依然彼女は逃げようとはしなかったが、何度も大声を上げたせいで五体のモンスターのターゲットは完全に俺へと移った様でモンスターが一斉にこちらに向かって走り出した。


「こっちへ来い! 『ライトニング』」


俺は向かって来たモンスターのうちオークの一体に向かって雷を放つ。

続け様にもう一体にもお見舞いする。


「まだだ! 消えてなくなれ! 『ライトニング』」


俺が瞬殺で二体のオークを消し去ったので、残りの三体は足を止めてこちらに警戒を示した。

だが一撃で倒せる手段はこれで打ち止めだ。後の三体は残りのスキルでどうにかするしかない。

残るは、二体がホブゴブリンで一体がゴブリンだが今の俺ならゴブリンは問題無く捌ける。

とにかくホブゴブリン二体をどうにかしないといけない。


「おおおおおっ! 『ファイアボール』 『ファイアボール』 『ファイアボール』」


俺は『ファイアボール』を連発して敵モンスターを足止めし自ら距離を詰める。

距離を詰めながら再度『ファイアボール』を連発するが『ファイアボール』の使用上限回数が来てしまったのですぐ様『アイスジャベリン』に切り替える。

俺の『アイスジャベリン』小型とはいえ氷の槍が直接的な殺傷能力を持つので近距離から叩き込めばホブゴブリンといえども無傷では済まない。


「これで決まれ! 『アイスジャベリン』 『アイスジャベリン』 『アイスジャベリン』」


至近距離から『アイスジャベリン』の三連発でようやくホブゴブリンの一体を倒すことが出来た。

残るは二体。

間髪入れずに二体目のホブゴブリンに向けて『アイスジャベリン』を放つが残念ながら2発では消滅まで至らなかった。


『ウェイブブレイド』


ダメージを負ったホブゴブリンに肉薄して『ウェイブブレイド』で胴体を滅多刺しにして消滅させる。


「はぁ、はぁ、はぁ………」


これで四体。残るはゴブリン一体だがこちらには『ウェイブブレイド』しか残っていない。

今までゴブリンと『ファイアボール』の牽制無しで戦った事は無い。

戦っている時間はまだ数十秒しか経過していないが、初めて相手にする数の敵を前に、目に見えて精神力、体力共に急激にすり減っているのが自分でも分かる。

長引けば不利になるが『ウェイブブレイド』だけでいけるか?

俺は身につけていたサバイバルナイフを左手で一本抜き二刀流を試みる事にした。

『ウェイブブレイド』

右手にブレイドを発生させてゴブリンに向かって行く。

勿論武術の心得など無い俺は二刀流など試した事は無い。

ぶっつけ本番だが、残念ながら『ウェイブブレイド』だけで勝てるイメージが全くといって湧かなかったのでやるしかない。


「うおおおおおおおお〜!」


自分を奮い立たせるべく雄叫びを上げてゴブリンに向かって走り出す。

ゴブリンが棍棒で殴りつけてくるのをクロスしたナイフとブレイドで受け止める。


「ぐうぅうう〜!」


すごい力だ。

やはりモンスターであるゴブリンの身体能力は俺を完全に凌駕している。

なんとか耐えられているのはレベル6になり俺の身体能力も以前より上がっているからなのだろう。


「がああああ〜!」


やばいこのままではやられてしまう。

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