第16話 イケメン君とボッチ君

俺は、一撃でオークを倒せた事の驚きと共に神木さんのスキルへの畏敬の念を抱いた。

今回のレベルアップでFランクに上がったとは言え神木さんに比べると俺は、まだまだ初級者レベルであると言う事を痛感してしまったが、ある意味それで良かったと思う。

Fランクに上がって自分が強くなったと調子にのりかけるところを、諌められた気がして明日からは、気持ちを入れ替えて頑張ろうと思う。

でも、今回の魔核はオークのものなので三万円の価値がある。一日で三万円稼げるとは信じられない。

この調子で頑張れば、今回使ってしまった二十万円を取り戻すのもそう遠くは無いと思う。

オークの魔核を回収してテンション高めの状態でロードサイクルに乗って家に帰っている途中


「グギャギャギャギャ」


遠くから聞き慣れたゴブリンの声が聞こえて来た。

俺には何の通知も無かったので他のサバイバーが担当しているのか?

横取りするとトラブルになりそうなので被害が広がらない様にだけ見守っておこうと思いながら、声の方に向かうと、3人組のサバイバーがゴブリンと相対して追い詰めているところだった。

あれは………新城か?

俺には三人のサバイバーのうちの一人に見覚えがあった。

あれは俺と同じクラスのイケメン君の新城だ。

新城が戦っているのを見るのは初めてだが、ゴブリンに対して3人いるので不覚をとる事は無いだろう。

俺はそのままの距離を保ちながら戦況を見守る事にした。

三人のサバイバーがそれぞれスキルを使いゴブリンに手傷を負わせながら弱らせていっている。

それなりに連携も取れている様に見え、戦闘はスムーズに進んでいる様だ。


「ゴブリン、これで決める! 死んでも恨んでくれるなよ『アイスジャベリン』」


新城がゴブリン相手に恥ずかしいセリフを言い放つと同時にスキルを発動して氷の槍が飛んで行きゴブリンを串刺しに仕留めた。


「ふっ………所詮俺達の敵じゃ無かったな」


また恥ずかしいセリフを吐いているが、そもそもゴブリンって日本語を理解しているとは思えないが、こいつはその事を理解した上でこんなセリフを吐いているんだろうか?

恥ずかしいセリフと共に戦闘を終了した三人がゴブリンの魔核を回収して撤収を始めた。

俺は、なんとなく面倒なので気づかれる前にその場を立ち去ろうとしたが


「おい! お前うちのクラスのボッチじゃないのか?」


新城が目ざとく俺を見つけてくれてしまった。

正直無視して帰ってしまいたい衝動に駆られるが、明日からの学園での事を考えるとそうもいかない。

それにしてもボッチ君って……


「あ、ああ、新城くん。奇遇だね」

「こんなところで何やってるんだ? その格好もしかしてお前もモンスターを討伐に来たのか?」

「まあ、そんなところだよ」

「おい、まじかよ。確かお前って攻撃能力無しの無能者だったよな。そんな胸当てつけて肉壁にでもなるつもりかよ。プフッ……」

「いや、まあ」

「おい、お前らもこいつの事知ってるだろ。こいつ俺のクラスの最下層サバイバーの無能者だぜ」

「あ〜こいつか、ブハッ! 格好だけは一丁前だな、恥ずかしくね〜のかよ」

「肉壁かよ。俺なら恥ずかしくて死んじゃうかもな。無能者なんて呼ばれたら生きていけね〜よ。最悪だな」

俺の事を知ってるとなるとこいつら全員同じ学園の生徒か。

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