第15話 初めてのオーク戦

サブウエポンとしてのナイフは、回数制限の厳しい『ウェイブブレイド』の事を考えると補完する意味で悪い買い物で無いのは間違い無いが、本来であれば1本で十分だったはずだ。

バイヤーズハイとでも言うしかないが感覚の麻痺とお店の人の薦めで思わず買ってしまった。

買った瞬間は何の後悔もしなかったが、家に帰りながら徐々に正気に戻った俺は、強烈な後悔に苛まれることとなった。

お金を使い過ぎた……

調子に乗って買いすぎた。

今日だけで二十万円近く使ってしまった。

自分で自分が怖い。必要な物だったとは言え、人間お金を持つと怖い。

数ヶ月前の俺が、今日この日に二十万円使うなどと聞いたら、あり得ないと相手にもしていなかっただろう。

もう買ってしまった物は仕方が無いので明日からは、節約生活に戻りサバイバーとしてもしっかりと活動していきたいと思う。


翌日の昼にロードサイクルが届けられたが、とにかくカッコいい。

今までのボロボロのママチャリと違い、とにかくピカピカだ。

しかも見た目がカッコいい。

言うなればファミリーカーとスポーツカーの違いだろうか?

同じ自転車なのに全く違う乗り物の様な気さえしてしまうが、乗る姿勢も全く違うのでちゃんと乗れるのか心配になって、思わず練習走行してしまった。

最初は感覚が違い、上手く乗れなかったが暫く乗っていると次第にスピードが乗って来た。下手をすると今までの倍ぐらいにスピードは出ているんじゃないだろうか?

おんなじ自転車でこんなに違うのか?

余りの違いにこの日、俺は軽いカルチャーショックを受けてしまったが、新しい自転車にはすぐに活躍の機会が訪れた。


夕方になり端末に連絡が入った。

Fランクになって最初の討伐なので妙に緊張してしまう。

勿論ゴブリンでも通知が来る様に設定してあるので行ってみたらゴブリンだったなんて言う事もあり得るが、ホブゴブリンやオークの可能性もあるので自然と緊張感が高まって来た。

俺はすぐに昨日買った胸当てを装着し、ナイフ二本を腰に下げてから新品のロードサイクルに跨って現場へ向かう。

何事も形からなんて言う言葉もあるが、装備と自転車が変わっただけで新しい自分に生まれ変わった様な錯覚を覚えてしまう。

勿論、調子に乗ると命に関わるので、モンスターへの対応はしっかりと脳内でシミュレートする。

多分昨日までのママチャリだと三十分はかかる距離だったと思うが今日は二十分かからずに現地に到着した。

自転車を脇に置いて、はやる気持ちを抑えて周囲を見回しながらモンスターを探すが、モンスターはすぐに見つかった。


「グアアアアア〜!」と言う大きな叫び声が聞こえていたからだ。

叫び声の方に慎重に近づいて行くと、そこではオークが暴れていた。

心臓の鼓動が早まる。

オークはホブゴブリンと同じFランクのモンスターだ。

勿論俺は戦った事は無いが、以前神木さんが一撃で倒しているのは見たことがある。

ただ俺は神木さんとは違う。

俺の劣化版『ライトニング』がどこまで通用するか分からないが、とにかくやってみるしかない。

俺は、出来るだけ気配を消してオークとの距離を詰め


『ファイアボール』


いつもの様にファイアボールで先制攻撃をかけてから即座に俺の最大の武器である『ライトニング』を発動する。


「くらえ! 『ライトニング』」


前方に閃光と雷鳴が起こり小型の雷がオークに降り注いだ瞬間、オークが完全に消滅した。


「へっ!?」


一撃!?

なんとFランクのモンスターであるオークを一撃で倒せてしまった。

今までGランクのモンスター相手にしか使った事が無かったが、もしかして『ライトニング』は俺が思っていた以上に強力なスキルだったのか?

劣化版の『ライトニング』でオークを一撃で倒せるって、あの神木さんのオリジナルは一体どれ程の威力があったんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る