第14話 バイヤーズハイ

こんなペラペラのタイツみたいなのが五十万円か。

これを買ってしまうと俺の貯金の大半を持っていかれるのでキツ過ぎる。


「あの〜もう一つの方は?」


「部分的なプロテクターの方はカーボン繊維強化プラスティックで成形した防具ね。軽くて強度は金属並みにあるからおすすめね。ただしプロテクターのない部分を狙われると装備してないのと同じ事だから、出来ればアーマードインナーの上から装備する方がいいですね」

「こっちはどのぐらいの値段ですか?」

「そうですね。組み合わせるパーツにもよりますが、基本の胸当てだけだと一五万円ぐらいからですね」

「一五万円ですか。胸当てってどのぐらいの部分をカバー出来るんでしょうか?」

「大体鳩尾から上の部分をカバーする感じですね。お腹の部分までカバーすると三十万円になります。一体型が隙間がないのでお奨めですが、後で部分毎の追加もできますよ」


お店の人から値段を聞く限り胸当ての一択な気がして来た。


「あとは、頭部の防具ですが、ヘルメットや兜タイプもありますが、見た目や、結構重いので動き辛いとの事でサバイバーの方からはそれ程人気が無いんです」

「そうなんですね」


以前メンバーが顔に一撃をくらい鼻を折ったのを見てしまったので頭部の守りも気にはなるが、顔への一撃を防ごうと思うと仮面か………

だが流石に仮面をつけて行動する事にはさすがに抵抗感がある。

しかも仮面をしていても殴られたらただでは済まない気がする。

自転車用のヘルメットを注文済みなのでとりあえずあれを被っていれば何とかなるか。


「すいません、胸当てを合わせてみてもらっても良いですか?」

「勿論いいですよ。それじゃあこちらです。アジャスターがついているので、これで調整が効きますよ」


お店の人につけ方を聞いて装備してみるが、思った以上に軽いのでこれで本当に大丈夫なのか聞いてみるが、軽量ではあるものの強度は鉄などの金属と遜色ないとの事だったので購入を決めた。

価格は十五万円。

さっきまで俺史上最高額だった自転車の購入金額をあっさりと大幅に更新してしまったので、支払いの直前まで、本当にこれを購入しても後悔しないのか葛藤してしまったが、命には変えられないと決断して、血の涙を流しながら支払いを済ませた。

心の中ではこれで俺は装備的にも立派なFランクサバイバーだと思っていたのだが、支払いの際に武器は必要ないのかと聞かれてしまった。

スキルにブレード系があるので大丈夫だと答えたが、スキルが切れた時に丸腰では危険すぎると至極当たり前の助言をもらったので、一応念のために武器も見せてもらう事となった。

自転車での移動とスキルによるブレードが三十センチ程度である事を話すと、実用性を考えて長い剣よりもサブウエポンとしてのサバイバルナイフを薦めてくれた。

それほど嵩張る物でもないので刃渡りが十五センチ程度の小ぶりの物と三十センチ程度の刃渡りがある大振りのナイフ二本持つ事を薦められたが、この時の俺はちょっとおかしくなっていた。いわゆるバイヤーズハイとでも言えばいいのだろうか。

自転車と胸当てと言う高額商品を続けて購入したせいでナイフの値段である1万5千円と四千円がそれぞれ安いと感じてしまっていた。

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