第7話 レベル3

俺の着いたタイミングも良かったらしく、おじいさんには目立った傷やダメージは無さそうだったので、もう一度大丈夫か確認してから、その場から撤収する事にした。

これまでも人を助けるべき場面に出会した事はあるが、残念ながら俺が自ら攻撃を仕掛けて倒せるわけでは無かったので、今までは他のメンバーの気分次第だった。

俺が助けたいと思っても他のメンバーが救助よりもモンスターを倒す事を優先した事もある。

だけど今はソロとしてゴブリンを倒す力を得たので自分の意思で行動する事が出来る。

今日のように自分の意思で人を助ける事も出来る。

今日はサバイバーとして今までとは全く違った充実感を味わう事が出来た。

サバイバーになって生活費を稼ぐ事は俺にとって最重要だが、人を助ける事ができる様なヒーローへの憧れが全く無かったわけでは無いので、今日の自分には結構満足している。

明日からも今日の様にしっかりとサバイバーとして頑張っていきたいと思う。

それはそうと今月既に一人でゴブリンを十二体も倒す事に成功している。


「これ……大丈夫か? 普通こんなに稼げるもんなのかな」


そして今月の収入は過去最高を大きく更新して十二万円を超えている。

俺はすぐに三万円を母親に仕送りして、生活費に充てる三万円を除いた六万円余りを自分のサバイバー専用口座に貯金した。

俺の十六年間の人生の中で一番の大金だ。クラスメイト達はお年玉でこれ以上の金額をもらったとか聞いたりもした事があるが俺には全くの無縁の出来事だった。それが今現実となって俺の手元に六万円を超える金額が残されている。

俺には大金すぎて、どうしていいかよくわからないのでとりあえず口座に残しておく事にした。


いつもの様に夕飯のカップラーメンを食べ終わってから学校の宿題をしている最中に、サバイバー専用端末に連絡が入ったので、受諾のボタンを押してから自転車に乗って現場へと向かう。

今回は、かなり距離があり到着までに1時間近くの時間がかかってしまった。

俺の感覚だと住んでいる部屋から十〜十五キロメートル程度迄の範囲までの敵に対して俺に依頼として知らせが入っている様な気がする。近くにいるサバイバーから順番に通達が行くのだと思うが、たまたま今回は対応出来るサバイバーが俺しかいなかったのかもしれない。

目的地に近づいたので端末を確認すると、思ったよりもかなり近いところまで来ていたので、すぐに自転車を置いて走り出す。


「グギャギャギャ」


見ると前方にはゴブリンがいたが、かなりの時間が経過しているせいで、結構周辺を荒らしている。

人的被害は無さそうだが、結構広範囲にわたって色んな物が壊されているのが見て取れる。

Fランクのゴブリンとはいえやはりモンスターだけあって容赦が無いが、こんな奴には不意打ちに限る。


『ファイアボール』


俺はゴルフボール大の火球をいきなり放ちゴブリンの頭部に命中させる事に成功した。

いくら小さい火球とはいえ顔に命中すればかなりのダメージが入る。


「ギャアアア〜!」


痛みで叫び声を上げるゴブリンに対して追撃をかける。

走って距離を詰め近距離から再び『ファイアボール』を頭部に向かって放つが、今度はゴブリンが頭部をガードしたのでそのまま突っ込んでいく。


「らぁっ!『ウェイブブレイド』」


スキルで刃を発生させてガラ空きになった胴体へ至近距離から攻撃を繰り返して消滅させた。


「ふ〜。今回も無事に倒せてよかったな〜。これで一三体目か〜。俺って密かにすごいんじゃないか?」


今までの事を考えると今の自分が信じられないが、無事に戦闘を終える事が出来たので一応ステータスを確認してみる。


「おおおおおおおっ。上がってる!」


この戦闘で俺のステータスは遂にレベル3に到達した。

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