第8話 フェイカーの力

山沖凛

サバイバーLV3


スキル  『フェイカー』《ウェイブブレイド2》《ファイアボール3》《 ー 》


「うぉおおお〜やっぱりだ。レベルが上がると『フェイカー』のスキル欄が増えてる。しかも回数も増えてる!」


レベル2の時は確信が持てなかったが、今回レベル3になった事で確信が持てた。

俺のスキル『フェイカー』はレベルアップと共に使えるスキルの数が増えていくらしい。

しかも先程の戦闘で使用したスキルも回数が一回ずつ増えている。

どうやらレベルアップと共に使用上限回数も増えるらしい。

俺のスキル『フェイカー』はレアスキルなのか同じスキルを持ったサバイバーには今まであった事は無かったので能力の詳細は分かっていなかった。

余りに貧弱な性能に、臨時メンバーを組んだ事のある人以外周囲に公言する事も無く今まで過ごして来たので俺のスキルの詳細を知っている人は学園内でもほとんどいない。

サバイバーの組合はもちろん把握していると思うが、特に何も言われた事は無いので、末端のサバイバーのスキルにまで興味は無いのかもしれない。

ただこれで俺は三つのスキルを使用できる事になる。


「はは……俺がトリプルスキルホルダー? 嘘みたいだな」


あくまでも疑似的に、しかもかなりの劣化版ではあるが、それでもこれはとんでもない事の様な気がする。

二つのスキルでも十分にゴブリンを相手に戦えているのでもう一つのスキル次第ではもっと上を目指せるかもしれない。

今までの俺には考えられないような状況に柄にも無くテンションが上がってしまった。

レベル3に上がって模倣スキルを三つ使える様になってから四日が経過したが、俺は未だに二つのスキルしか使えない。今日もゴブリン相手に『ファイアボール』と『ウェイブブレイド』で戦い勝利を収めた。

俺のスキル『フェイカー』が模倣出来るのは、直近に間近で見たスキルに限定されるが、最近はソロで活動している為に他のサバイバーと一切会うことが無い。

自分としてはすぐにでも三つ目のスキルを模倣して戦ってみたいが、なかなかパーティメンバー以外のスキルをお目にかかることなど無い。

一応裏技はある。自分に届いたモンスターの通知をわざとスルーして、他のサバイバーが受諾するのを前提に現地へ遅れて向かう事で他のサバイバーの戦闘シーンに遭遇する状況を作ることができる気もする。だが、さすがにそれは気が進まない。

もしも俺がわざと受諾しない事でモンスターの討伐が遅れてしまい、そのせいで被害が拡大する事は流石に許される事では無い。自分がスキルを模倣する為に他人が被害を被る可能性が有ると言うのは、俺としては無い。そのため四日間何のスキルを模倣する事なく、今日を迎えてしまっている。


「こうなったら街中、自転車で周ってみようかな」


ゴブリンを倒して家に帰る途中で唯一と思える名案を思いついたが、今日は既にスキルを使ってしまっているので戦闘に巻き込まれると危ない。実行は明日以降にしようと思う。

スキルを使用すると結構疲れる様で、モンスターを倒した後はいつもよりよく眠れる。

次の日学校から帰っている途中にいつもの呼び出しとは違う音が端末から鳴った。


「ビ〜ビ〜ッ」


いつもとは違う音に表示を確認すると、近辺にモンスターが出現しており、俺に対しての退避通知だった。

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