第6話 レベル2の意味
「あああああああ〜!」
そのまま刃を抜いて何度もゴブリンの胸を目掛けて必死で突き立てる。
数回同じ動作を繰り返した時ゴブリンが消失して地面には魔核が残された。
「はははっ。やった……やった!」
俺は遂にゴブリンを一人で倒すことに成功した。昨日ホブゴブリンを倒したので厳密には二回目だが、昨日は他のメンバーもいて、運も味方して奇跡的に倒せただけだった。
だが今日は違う。完全に俺が思い描いた通りの攻撃で倒す事が出来た。
遂に今日この瞬間俺は本当の意味で一年越しのソロデビューを果たす事が出来た。
「ふ〜っ。疲れた〜」
アドレナリンが出過ぎて家に帰るまで気がつかなかったが、異常な程に神経を擦り減らしたらしく、部屋の床に座った瞬間しばらくは動く事が全くできなかった。
初めて自分一人でゴブリンを倒してから一週間が経過したが、俺は既に四体のゴブリンを倒す事に成功している。
残念ながらレベルは2のままだが、一人での戦闘にもかなり慣れて来て、ゴブリンと戦い終わっても動けなくなるような事は無くなっていた。
そして劇的に変わった事がもう一つある。
ソロでモンスターを倒すようになり魔核による収入が劇的に増えた。
今まではゴブリン一体につき二千円もらえればいい方だったが、今は一人でやっているので一体につき約一万円が手に入っている。
ホブゴブリンの魔核は一個で三万円にもなったが一応他のメンバーの事も考えて手をつけていない。それを除いても既に四万円を稼ぎ出している。あと一体倒せば俺の月額報酬レコードを更新することになる。
それにモンスターを一人で倒しているのでレベルアップも早いはずだ。
この先レベルが上がればどうなるのかも興味があるので早くレベルアップしてみたい。
「ピピッ」
サバイバー用の端末から着信音が聞こえてきたので、場所を確認してから準備を済ませてすぐに自転車で現場に向かう。
今日の現場はいつもより少し遠く自転車で三十分程度かかってしまった。
基本モンスターが出現すると周辺の人達には避難勧告が出るので、ゴブリン程度だと被害はそれ程無い事が多い。
「う、うわ〜っ! 誰か…… た、たすけてくれ〜!」
ただ、すぐに移動出来ないお年寄りや病人等はその限りではない。
俺のいる場所のすぐ先でゴブリンに杖をついたおじいさんが襲われている。
どうにか抵抗して命はあるようだが、一刻の猶予もなさそうだ。
俺に特別正義感が強い訳でもボランティア精神がある訳では無いが、サバイバーの目的はモンスターの殲滅とモンスターによる被害を防ぐ事なので、多少なりとも使命感はある。
以前なら見ている事しか出来なかったが、今は戦う力があるので躊躇無く飛び出して行く。
「こっちだゴブリン。そこからどけ!『ファイアボール』」
俺は注意を引くようにわざと大きな声で挑発してから攻撃をしかける。
小型の火球がゴブリンの体の側面に着弾してダメージを与えるが、怒り狂ったゴブリンは、おじいさんから完全にターゲットを俺に移した。
怒りに任せて向かってくる所を再び『ファイアボール』を放って足止めする。
今の俺の必勝パターンである『ファイアボール』で怯ませてから一気に接近し『ウェイブブレイド』で滅多刺しにして今回のゴブリンも無事消滅させることが出来た。
「ふ〜っ、おじいさん大丈夫ですか?」
俺は急いで襲われていたおじいさんの元に向かって安否確認をする。
「あ、ああ、助かった。ありがとう。年寄りの残り少ない命だが救ってくれてありがとう。モンスターにやられて死んだら成仏できなさそうだからな。寿命が縮んで天国に片足を踏み入れてるところだったよ」
「あぁ……間に合ってよかったです」
これは一応おじいさんなりの冗談なのかもしれないが、結構際どい話なので、受け答えに困ってしまう。
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