第101話【国宝級の魔道具を渡す条件】
「魔道具の金額は・・・」
期待と不安から
「お金は・・・そうですね。
但し、お渡しするのには金銭の他に幾つか条件があります」
「条件ですか。それは一体なんでしょうか?」
性能を考えると金貨でも何枚になるかわからない道具のあまりの安さと『条件』の言葉に身構えるビガントだったが、クーレリアはそんな父の心配をよそに神具を授さずかったがごとく自分の打った剣を眺めてはニヤニヤしながら
「いや、たいした事じゃないけれど以下の3つ程約束をして貰いたいんです」
1.道具に関することの他言無用
2.クーレリアさんに僕専用の剣を打ってもらう
3.この先で僕が鍛冶関係で困った時には協力をして欲しい
「本当にそれだけですか?」
ビガントはどんな無理難題を言われるかと思っていただけに少し疑心暗鬼になっていた。
それを見た僕は状況の確認をするために説明をしていった。
「自分でたいした事ないと言いましたが、実際は結構大変だと思いますよ?
まあ、僕の剣を打つとか何かあったら協力してとかはまだ何とかなると思いますけど、道具の他言無用はかなり気をつけておかないとバレますよ?
この店に置いてある武器防具が急に神品質になったら絶対に探りを入れてくる者が居ますよ?それに・・・」
「それに?」
「仮に道具の事はわからなくても、クーレリアさんが打ったとまわりに広まったらお嬢さんを取り込もうとする大手の鍛冶士が婚姻を結ぼうと何かと手をまわしてくるかもしれません」
僕はそこまで話して改めてふたりに向き直り最終確認をした。
「ここまでお見せしておきながら勝手で申し訳ないのですが、今ならば全て見なかったことにして関係した道具と今打った剣を有償で引き取ってもいいですけど、どうしますか?」
どうしますか?と言われてもこれから先、修行に打ち込んだとしても品質が劇的に向上する可能性は高いとは言えず、ましてやたった今、試し打ちで作った品のレベルも不可能に近いのだから答えは決まっていた。
「「お願いします。是非とも使わせてください」」
「わかりました。では、約束は守って頂くようにお願いしますよ。
お店にはいろいろ試してみて納得いった品のみ出した方が良いかと思いますよ。
ああ、僕の剣はお嬢さんの鍛冶レベルがもう少し上がって安定した頃に素材持ち込みでお願いすると思います。
では、明日の改修の方はお願いしますね」
僕はそう言うとエスカを連れてビガントの店を後にした。
「あれで良かったのですか?
私じゃないですけど本人の力量以上に優秀になるといろいろと大変になると思うんですけど・・・」
「じゃあエスカは今の力は習得しなければ良かったと思ってる?」
「そんなこと絶対にありません!
私はこの力でひとりでも多くの人を助けて皆が幸せになる道を自分で選んだのですから、後悔は
ちょっと意地悪な質問をする僕の横でエスカは頬を膨らませてすぐに反論した。
「まあ、そういうことなんじゃないかな?
結局それぞれ夢や目標を持って頑張っている人達は今以上の力を手にしても自分のエゴだけに使ったりしない。
君がそうだったみたいにね」
僕の言葉に顔を赤くしながらエスカは言った。
「オルトさんは考えが甘すぎます。
夢を持っている人は皆の事を考えているなんて幻想にすぎないですよ。
私だって私利私欲に走る可能性だってあるとは思わないのですか?」
「これでも一応、見る目はあるつもりなんだけどな。
誰にでもやってる訳じゃないし、約束をしてもらうことや何かあったときは責任をもって対処出来るようにしているんだよ」
「えっ?私にも実は何かやってたりするんですか?」
僕の言葉に不安そうな顔をするエスカに微笑みながら言った。
「当たり前じゃないか。って前にも言ったし、その指につけている指輪モノは何だったかな?」
「あっ!そういえばそうでしたね。
契約をしたのをすっかり忘れてました。
でも、これ本当に効果はあるんですか?」
「疑うならば試してみてもいいよ。
僕は側でゆっくりと結果を見させてもらうからね」
エスカは契約違反の代償が「恥ずかしい事がおこる」だったのを思い出して慌てて首を左右に振った。
* * *
「ただいまー。工事は明日来てくれるそうだからテーブルとかの移動は今日中にやってしまおう」
「オルト君お帰りなさい。うまく話はついたみたいね。
こっちも開業に必要な品物の準備はほとんど集まったわよ。
まあそれほど大きな物は無かったけど商人ギルドに頼んで届けて貰ったんだけどね」
シミリは今日は留守番だったので商人の伝手を使って必要な品物を発注してもらっていたが無事に済んだようだ。
さすが僕の嫁さん抜かりはなさそうだ。
「それじゃあ明日は改修工事をするから皆よろしくな。そしてディールさんもよろしくお願いしますね」
すべての前準備が終わった僕達は明日の改修工事に向けて早めに休息をとった。
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