第14話【穏やかな道中とシミリとの会話】

 あれから旅は順調に進んだ。


 道中は時々獣が出るくらいで盗賊の襲撃もなく予定では街まで後1日くらいの場所まで来ていた。


 道中オルトはシミリに商会の潰し方や今後の身の振り方、お金の稼ぎ方などをレクチャーしていた。


「この品物は完全に反則ね。

 こんなものがあると知れたら馬車に荷物を積み込んで盗賊や獣に襲われるリスクを背負いながら遠くの街に商売に行く行商が馬鹿らしいじゃないの。

 それ以前に盗みや密輸までやりたい放題じゃないの!?」


 シミリは僕の収納鞄アイテムバッグを見て驚いた後ですぐに突っ込みを入れてきた。


「確かにやりたい放題だけれども、そう簡単にはいかないんだよ。

 よく考えてみてよ、シミリも言ったけどこれは反則級のアイテムだよね?

 だったら人には見せられない物だ。

 馬車も持ってない僕達が大量の品を売りに出したら出所はどこだ?となってすぐにマークされるだろう。

 特に行商ならばなおさらだよね」


 僕は収納鞄アイテムバッグの上手い使い方を考え付いていたがあえて使いづらさを表に出してシミリの反応を見ていた。


「言われてみればそうよね。

 なんだ大っぴらに使えないんじゃ意味ないんじゃないの?

 精々がお金や貴重品をいれておくくらいしか使い道がないのかな?」


(うーん、惜しいな。

 そこまで気がついていながら有用性にたどり着かないか。

 まあ実際に使ってみないと難しいかも知れないけどな)


 僕はシミリに道中いくつかの秘密を話していた。


 これから暫くは一緒に行動することになるだろうから全てを秘密にする事は無理だし行動を決める時に出来る事を曖昧にしていると判断が遅れたり失敗に繋がる事があるからだ。


 ただし、話したからには秘密は守って貰う事を魔道具創造アイテムクリエイタで作った“契約の指輪”を媒体に約束させた。


「こんな物なくても人には言わないのに。

 私そんなに信用ないの?」


「僕は会ったばかりの人を完全に信用するほどお人好しじゃないんだよ。

 と言いたいけど実はシミリが裏切る事は全く考えてないんだ。

 ただ、情報を得ようとシミリを誘拐する輩がいるかも知れないから契約の指輪で契約したらシミリの居場所が分かるようになるから何かあったらすぐに駆けつけて助けてあげるよ」


「なぁんだ、それならばそうと先に言ってよ私まったく信用されてないかと落ち込んだじゃない!」


 シミリはホッとした表情で僕に聞いてきた。


「明日にはエーフリの街に着くけど、そろそろ商会を潰す手順の説明が欲しいな。

 まさか正面から乗り込む訳にはいかないわよ」


「あはははは。それいいね!やってみる?多分普通に潰せるよ」


「いや、それすぐにお尋ね者になるから。

 商会と心中は勘弁ね。

 ちゃんと考えがあるんでしょ?」


「まあね。せっかくだからシミリも言ってた反則技を使おうと思うんだ」


 僕はニヤリと笑うとシミリに手順と街での行動順序を説明していった。


「シミリ、街に入る時に審査とかってあるものなの?

 あと、お金って必要?」


「小さな村とかは囲いがないから入り放題で当然お金も必要ないけど、大きな街は壁や柵で囲まれていて門の所で門兵がチェックしてると思う。

 商人だと行商手形があれば行商税を払えば問題なく通れると思うわ。

 今の私達だと村から買い物に来たと言うかギルドに登録に来たと言って通行料を払って入るかだと思うよ。

 多分だけど通行料はひとり銀貨1枚くらいだと思うわ」


「なるほど分かった。

 で、次だけど街に入ったらまずはシミリの商人登録をしようと思うんだけどどうやるか知ってる?」


「私はもう商人の称号とお父さんの形見の指輪を持っているから後は商人ギルドに行って登録料を払えば手形を発行して貰えると思うわ。

 ただ、登録料がちょっと高くて銀貨20枚だったと思うの」


「銀貨20枚か、通行料と合わせて銀貨22枚になるが多分それくらいなら何とかなるだろう。

 ウスビー村長に感謝だな。

 で最後に冒険者ギルドで冒険者登録をするよ。

 とりあえずFランクでの登録を予定してる。

 シミリも一緒に登録しておこうと思うんだが商人との併用は出来るのかな?」


「多分出来ると思うよ。

 私達が天職として与えられた職業は変える事が出来ないけれど冒険者は誰でも登録出来るから冒険者は“職業ではない”と天職の神は判断しているんじゃないかな?」


「職業ではない・・・か。

 確かにそうかも知れないな。

 安定しない収入に死ぬかも知れない危険な仕事の数々。

 天職にならないはずだよな。

 まあいいさ、第二の職業(サブ職)と考えておけばいいだろう」


「私もFランク登録?」


「ああ、悪いけど合わせてくれ。

 それとふたりでパーティー登録もしておこう。

 そうする事で貢献ポイントでのランクアップの時期が重なるようになるから手続きが楽になると聞いたんだ。

 その後で宿屋に泊まってから商会潰しの準備をしようか」


「ええ、分かったわ。

 そろそろ出発しないと明日中にたどり着けなくなるわ」


 シミリの言葉に僕は慌ててエーフリの街に向かって歩きだした。

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