第13話【襲撃者の末路と思いついた悪巧み】
「それじゃあ出発するよ」
僕はシミリに声をかけて宿を出た。
シミリは食事の他に弁当を作ってくれた宿の女将さんに何度もお礼を言いながら後ろからついてきた。
「まあ、この村はエーフリまで歩いて3~4日だ、商人をしていればまた来ることもあるだろう。
今は前を向いて歩こう」
宿を出た僕達を蔭で監視していた者が二手に別れて移動する。
一人は依頼者に報告にもう一人は僕達を追って。
「シミリ、君にこれを預けておくよ。
もし昨日のゴロツキが君を襲ってきたらこのボタンを押すといい。
きっと君を守ってくれるはずだからね」
村を出て街道沿いにエーフリに向かう僕はそう言うと昨夜作ったばかりのペンダント型の魔道具をシミリに渡した。
ふたりが分断された時に彼女を守れるようにと考えた結果ボタンを押すと彼女の体の周りにバリアのように電撃が発生する装置になった。
やつらはシミリを殺す事はしないだろうからこれでシミリを捕まえておく事は出来ないはずだ。
実は僕にはゴロツキ達がついてきている事は分かっていた。
探索魔法で調べれば十数人が不自然に固まって移動しているのが分かった。
(まだ村からそんなに離れていないから様子見ってとこかな?
多分僕達が休憩をとったところで襲うつもりなんだろう。
さてどうしてやろうかな)
僕はシミリの横に並ぶように歩きながら奴らに聞こえないように声を落としてシミリに伝えた。
「シミリ、振り返らないで落ち着いて聞いて欲しい。
後ろから昨日の奴らが付いて来てるんだけどまだ村が近いせいで来る気配は無い。
もう少し進んだ所に少し開けたところがあるからそこでわざと休憩して奴らをおびき寄せよう」
そこは以前デルター達が獣に襲われていた場所だった。
道幅があるので馬車が休憩するのに便利なのだが村からもあまり離れていないので実際はあまり休憩をとる者はいなかった。
「シミリさっきも言ったけど奴らに捕まったらボタンを押してくれ。
恐らく奴らは君には危害を加えないと思うけど僕に対して人質にするなら怪我のひとつくらいと思うかも知れないからね」
僕は荷物袋から水筒を二つ取り出すとひとつをシミリに渡して水分補給をした。
(そろそろくるかな?)
探索魔法には僕達をぐるりと取り囲む人間の影が写っていたので油断はしないが分断させられる可能性は充分あった。
(しかし僕一人に十数人も用意するなんてなかなか見る目はある奴らじゃないか。
まあまだ足りないけどな)
僕がそんな事を考えていると背後から突然男が切りかかってきた。
「死ねやぁー!ぐはっ!?」
(コイツも馬鹿か、わざわざ叫び声をあげて切りかかるやつは三流のやることだ)
僕はひょいと剣をかわすと後ろ向きにゴロツキの腹を殴り飛ばした。
「この馬鹿野郎!迂闊に飛び出す奴があるか!
相手は手練れだと言っただろうが!囲んで一斉にかかるんだ!」
刺客は十人ぐらいで周りを包囲して剣を構えて切りかかるタイミングを計っていた。
男達はちょうど僕達をぐるりと囲む円になっていたので僕は魔法をひとつ唱えた。
「ファイアウォール!」
【ゴウッ!】
「うわぁぁー!」
「なっなんだこれは!?」
「なんで何もないところから炎が!?」
次の瞬間、僕達のまわりに高さ3メートルはある炎の壁が出現して刺客達を焼いた。
壁は数秒で消えたが全身を焼かれた者、部分的に火傷をおった者、様々だったが戦意は完全に喪失していた。
「馬鹿野郎!何してやがる!
コイツを始末出来なきゃ俺達に戻る場所はねぇぞ!!」
「ふん、やはりあのタヌキの指示か。
まあ良いさどうせ襲ってきた時点でお前達は盗賊と同じだ。
こちらとしても一人も生かして帰す訳にはいかないんだよ」
僕はそう言うと魔法で倒れた男の使っていた剣を拾うとまだ息のある刺客達に止めを刺していった。
しかし、僕がシミリの傍を離れた隙をついて一人の男がシミリを拘束して叫んだ。
「ははははっ馬鹿め!コイツの命が惜しければ剣を棄てておとなしくしやがれ!!」
「あー。シミリボタンを押して!」
「はい!ポチっと!」
『ビリビリビリ!』
「ぎゃあ!?」
シミリを拘束していた男は魔道具の電撃を受けて気絶した。
(なかなか使えるじゃないか。
これから仲間には全員持たせるようにするか)
僕は効果に満足そうにしながらも残りの残党を片付けていった。
「コイツで全員かな?
どいつもこいつもたいしたレベルじゃなかったけど売られた喧嘩は買わないといけないな」
その時僕にはある名案が浮かんでいた。
「シミリ、あのタヌキがやってるゼクス商会はエーフリの街が本店だと言ったよね?
今は村の支店に居るから本店は当然留守になるな。
暗殺も仕掛けられた事だし、シミリの件もあるから、奴の商会を潰してやるか?僕に名案があるんだ」
「ーーーそんな事出来るの?
お父さん達の敵を討てるの?
もし本当ならばお願い!
私には何もないからオルトがいいなら私を買ってください!
下働きでも何でもするから!」
「僕は売られた喧嘩を買うだけさ。
でもシミリには少しだけ手伝いをして貰うよ」
僕達はエーフリへの旅を再開しながら商会潰しの作戦を確認していった。
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