第12話【襲撃準備とこれからの予定】

 ゴロツキのリーダーは武器の準備をしながら伝達係の部下に指示を出していた。


「かなり腕が立つらしいから人数を集めとけ。

 俺が奴を襲いやすい所へ誘導するからそこで殺るぞ。

 ああ、女には傷をつけるなよ価値が下がるからな」


 僕達が商会を離れて宿に向かう頃、金で雇われたゴロツキ冒険者達は襲撃する作戦をたてていた。


 シミリを連れ去る役目だった男達はオルトに叩きのめされて殆どが戦線離脱状態であった為に警戒レベルを上げて確実に殺すつもりだった。


 しかし僕達が宿に帰る道に襲える場所は無く、宿に見張りを付けて明日以降に持ち越す事になっていた。


「ちっ、しかたねぇ。

 旦那にはそう報告して宿の見張りをしっかりしとけよ。

 奴等が出かけたら隙をみて女を拐え。

 女を人質にして奴を殺すぞ!」


「「へい!分かりやした!」」


 その頃、僕達は宿に着いて宿主と交渉していた。


「彼女も泊まるからもう一部屋用意してもらえないかな?」


 宿主は僕の言葉に少女を見ると驚いたように少女に聞いた。


「あんたファウクス商店の娘さんのシミリちゃんじゃないか?

 なぜこんな所に・・・ってすまない両親があんな事になってしまったからだよね。

 あのゼクス商会のクソ野郎、こんな小さな村の商店を潰してまで支店を広げる事はないだろうに・・・」


(ああそうだよな。

 それほど大きくない村で唯一つだった商店が潰されて大手の支店が開店したら誰がやったか予想もつくよな)


「ああ、すまない。

 部屋の追加だったね。隣の部屋でいいかい?」


「ああ、ありがとう。

 シミリもそれでいいかい?

 それで後で話したい事があるから夕食の後で少しいいかな?」


「私は・・・オルト君と同じ部屋で大丈夫です。

 助けられたのに宿まで用意されたらお返しするものが私にはありませんから・・・」


「気にしなくてもいいよ。

 さすがに女の子と同室はいらない詮索をされる事になるからやめておこうよ」


「分かりました。

 オルト君がそれで良いならそうさせて貰います。

 ありがとうございます」


 僕達は夕食を食べた後、僕の部屋でこれからの事を話しあった。


「予定より1日早くなったけど僕は明日この村を出るつもりだ。

 おそらくだけどゼクス商会のあのタヌキは君の事を諦めてないように思うし、僕が金貨を持っていたのを見てゴロツキをけしかけてくる可能性もある。

 どちらにしても村に留まるのは得策じゃないと思うんだ」


「それならば何処に行くの?」


「まずは隣街のエーフリの街に行こうと思ってる。

 僕はちょっと訳ありでステータスを提示したくないから街の移動や生活費を得るために冒険者登録をしようと思ってるんだ。

 多分Fランクでの登録になると思うけど、実際僕はランクなんてどうでもいいんだ。

 冒険者カードなんてただの証明書がわりに使うだけだから」


 僕は持っていた水筒の水を一口飲んでから話を続けた。


「そこでだが、シミリはどうしたい?

 この村に身を寄せる親類や知り合いがいれば良いが恐らく難しいだろうし、あのタヌキがまたちょっかいをかけてくる可能性だってある。

 君さえ良ければ僕と一緒に隣街まで行くかい?あまりお金が無いから徒歩での移動になるけどね」


 僕はシミリに言いながらふと気になった事を聞いてみた。


「そう言えば、シミリはステータスプレートによる職業は何だったの?

 それとも、もしかしてまだ発行してない?」


「私は少し前に15歳を迎え、両親が亡くなる直前にステータスプレートの発行はしています。

 私の天職は“商人”でした。

 奇しくも両親と同じ職業を与えられた事を喜んでいたばかりだったのに・・・」


「すまない。辛い事を聞いてしまった。

 商人ならばエーフリの街に行けば仕事は何かあるかも知れないから街の仕事斡旋場に行ってみないか?」


「うん、そうする。

 駄目でも大きい街なら何か仕事はあると思うもの。

 オルト君、私もエーフリに連れて行ってください」


 シミリはそう言うと持ち物の中から僅かばかりのお金と金の指輪を取り出した。


「これが今の私の全財産になるの、この指輪は父の形見であり商売人の証です。

 この指輪をお互いにはめて照合しなければ正規の商取引は成立しません。

 それは商会であろうと行商人であろうと変わりません。

 勿論ですが商人の天職がない人間がはめても効果はありません」


「そんな物があるんだね。

 なるほど・・・分かったよ、それらはシミリが持っていてくれ。

 きっと何処かで役に立つはずだから」


(そうか、あのタヌキがシミリを欲しがったのは商人の称号と商売人の証だったか。

 確かにこの世界では商人の天職を受けた者しか商店の店主は出来ない。

 あいつはシミリを借金と圧力で支配下に置いて支店のお飾り店主に使うつもりだったに違いない。

 体で払って貰うとか言うから別の事を考えたじゃないか・・・)


「それじゃあ明日の朝食を食べたら村を出るからね。

 エーフリには基本的に歩きで行くから今夜はゆっくり休んでおいてね」


「旅の準備はどうするの?私何も持ってないんですけど・・・」


「ああ、それについては僕が準備しておくから大丈夫だよ。じゃあおやすみ」


 その後、僕は宿の店主にエーフリまでの道程や街での情報をチップを払って収集しておいた。

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