第11話【あくどい商人とお金で買える少女】
「分かった、危害を加えないと約束するなら案内するから付いてきてくれ。
ただしこの女は一緒に連れていくからな」
男はびくびくしながらも女の子の手を掴んだまま歩きだした。
女の子が一度僕を見た時に僕が頷いたため大人しく男に付いて歩いていた。
ちなみに地面に転がっていた男達は最初に気絶した男を起こして連れて行かせた。
怪我を治してやる義理もないのでそのへんはしっかりと後悔して貰おう。
「この家だ、依頼主に掛け合ってくるから少しここで待っててくれ。
ほら、お前は一緒に行くんだぞ」
男が少女も一緒に連れて行こうとしたので僕は男に警告した。
「待て、その
このまま家に入ったまま行方をくらませないとは限らないからな。
それが無理なら僕もついていくぞ」
僕が少しの殺気を男に向けると渋々ながら少女を置いて行く事に同意した。
「ぐっ!わっ分かったよ。
その変わりあんたも逃げるんじゃないぜ。
逃げたらあんたをお尋ね者として手配するからな」
「そのへんは好きにするがいいさ。
まあ、あんたレベルのゴロツキを何十人集めても怪我人が増えるだけだから大人しく依頼主を呼んだほうが身のためだぜ」
そう言われた男は仕方なしに少女の手を放し、僕の方へ渡すと家の中に入っていった。
少女は僕の傍に来るとお礼を言った後で助けて欲しいと懇願してきた。
僕はとりあえず依頼主が来る前に経緯を確認する事にした。
「私の名前はシミリと言います。
父は小さな商店を経営してたのですが大手の商会が資金にものをいわせて潰しにかかってきたのです。
父も借金をしてまで店を大きくして対抗したのですが大手の商会とは資金力が違いすぎた上に商会から嫌がらせを受けてとうとう倒産してしまったのです。
その後、父は何者かに襲われて亡くなり、借金のかたに店は取られて母は心労で倒れ先日亡くなりました。
行く宛の無い私も借金の不足分として連れて行かれる所でした」
「借金の不足分はいくら位あるんだ?」
「分かりません。
帳簿も借用書も見せてもらえませんでしたので・・・」
(ああ、これは典型的な詐欺のやり方だな。
借金をさせて商売を邪魔して潰して娘まで奪い取る最悪の手口だ)
僕がどうするか考えていると家の中から主人らしき男が出てきた。
「借金のかたに連れてきた娘を匿ってうちの従業員に怪我をさせたのはお前か!
一体なんの権利があって勝手な事をしてるんだ?」
主人らしき男は奥から出てくると僕の姿を見て怒鳴りつけてきた。
「お前達が不甲斐ないから舐められるんだよ!」
その後、男はいきなり怒鳴り散らしながら先程の男の頭を殴りつけた。
「どこの誰だか知らないが、その女はうちが貰い受けた商品なんだからとっとと置いて帰るんだな!
それともお前がその女を買い取ってくれるのか?まだ若いから少々高いがな!」
男は下品な笑みを見せながら借金の証文らしき紙を僕に見せて言った。
「その女が欲しいならば金貨1枚だな。
それだけ出せばうちの従業員への治療費も見逃してやるよ。
まあ、きさまみたいな小汚い小僧には一生かかっても払えないだろうがな!」
少しムッとした僕だったが少女の手前とりあえず穏便にする事にして男に話しかけた。
「金貨1枚で間違いないな!後になって間違いでしたは通用しないぞ!」
男は僕の言葉に少しだけ驚きの表情を見せたがすぐにニヤニヤ笑いながら「小僧が見栄を張りよるわ」と相手にしなかった。
「さあ、もういいだろう諦めてさっさとその女を置いてさっさと帰るんだな!」
「まあ、待てよ。これでいいんだろ?」
僕は袋から金貨を取り出して男に見せた。
とたんに男の表情が変わった。
「偽物じゃないだろうな?
なぜお前みたいな小僧が金貨など持ってる?
何処かで盗んできたか?」
「馬鹿な事を言うもんじゃないぜ。
コイツは僕が依頼で稼いだお金だ。
大体、金貨など盗んだらすぐに手配がまわるだろうが。
そのくらい常識じゃないのか?」
(むぅ。あの女が手に入らないのは惜しいが金貨1枚の価値は到底無いだろう。
それよりも一旦あの金貨を巻き上げてから後で手下を送って始末すればあの女も手に入るか。
いくら腕がたっても10人以上に殺らせれば始末出来るだろう)
男は心の中で悪どい事を考えながらも表には出さずに僕に言った。
「そういうことならば仕方ありませんね。
私も商売人ですので一度言った金額を変える事はしませんよ。
金貨1枚でその女は売って差し上げましょう。
ああ、返品は認めませんよ」
「そんな!父さんが借りた借金でもそんなに無かったはずなのに!」
「利子ですよ。利子。
さあ金貨をこちらに渡してください。
この証文と交換しましょう」
「そんな!駄目ですよ!」
「気にしないでいいんですよ。
こんな事でもないとどうせ金貨なんて使う場面はありませんから気にしないでください」
僕はそう言うと男に金貨を渡して証文を受け取った。
「それではこれで売買成立ですね。
じゃあ僕達は行きますのであしからず。
さあ、お嬢さん僕と行きましょうか」
僕はそう言うと少女の手を取って歩きだした。
「くくくっ、逃がさないよ。
おい!お前達あいつを始末して女も連れてくるんだ。
くれぐれも失敗しないようにな」
あくどい顔をした男は手に入れた金貨と歩いて行く僕達の背中を交互に見ながらほくそ笑んでいた。
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