第10話【話を聞かないゴロツキと助けを求める少女】
翌日はこれからの旅に必要な物を揃えるために村にある唯一の商店に買い物に行った。
村長のウスビーからお礼で貰ったお金のおかげで旅の道具を揃える目処はたっていた。
「店主！これ全部でいくらになるんだい？」
「へい！全部で銀貨３枚と小銀貨５枚になりやす。ありがとやんした」
僕は商店で買い物を済ませて宿に帰る途中で怒鳴る声と僅かながら「助けて！」の声が耳に入った。
（ああ、また余計な事に首を突っ込むことになるのか・・・）
僕は苦笑いしながらも声の方へ走った。
そこで見たものは見た目が僕と同じくらいの少女が数人の男達に腕をつかまれて連れて行かれる所だった。
「おい！そこで何をしている！？」
「ああ？なんだテメーは！？
関係ない奴が首を突っ込むんじゃねぇよ。
死にたくなければな」
男達の脅しを全く気にせずに僕は無造作に近付き腕をつかまれている女の子に話しかけた。
「この人達は君の知り合いかい？
あまりガラの良くない行為だけど合意の事なのかい？」
女の子に話しかけた僕を睨みつけて腕を掴んでいた男が怒鳴った。
「何勝手にしゃべってやがる！
いいか、コイツの親は俺達に多額の借金があるんだよ！
期限が来ても返す宛がないからコイツは奴隷としてうちの店で体で返して貰うんだから関係ない奴は引っ込んでな！」
「そんな！無理矢理借金をさせてから商売の邪魔をして廃業に追い込んだくせに！
あんた達のせいでお父さんもお母さんも・・・うわぁぁぁぁん！！」
（なるほど大体背景は分かった。
どこの世界にも無理矢理搦め手で女の子を集める屑は居るもんだ。
しかしコイツらをここで叩きのめすのは簡単だが借金を盾にとられると面倒だな。
どうすれば収められるか・・・）
僕は考えを纏めてから悪党達に交渉を持ちかけた。
「話を聞く限りどう聞いても悪いのはあんたらみたいだし、このまま見過ごすのは寝覚めが悪いんだよ。
あんたらを叩きのめすのは簡単だけど一応あんたらの雇い主と話しがしたいんで案内してくれるかな？」
「はあ？何を言ってんだお前は！？
なんでお前の事を聞かなきゃなんねぇんだよ！」
いきなり男達の一人がキレて殴りかかってきたが僕は軽く躱して男のみぞおちを軽く小突いた。
「ぐわっ！？」
小突かれた男は前のめりに倒れこんで泡を吹いて気絶していた。
「なっ何しやがった！？」
「いやいや、そっちがいきなり襲いかかってきただけでしょうが。
こっちが紳士的に接してる間に素直に聞いたほうがいいと思うんだけど。
なんならあんたらもやってみるかい？」
「このクソガキがぁー！！死ぬほど後悔させてやるぞ！」
男達は少女の手を掴んでいる一人を残して一斉に襲いかかってきた。
「あー惜しいな。はっきりと“殺す”と言ってくれれば手加減なしで相手してもいいんだが“死ぬほど後悔”か・・・。
まあいいや、ならばあんたらにも死ぬほど後悔して貰おうかな」
僕はそう言うと襲いかかってきた男達の手や足を折ってやった。
「ぐわっ！？いてぇ！？がぁっ！？」
あっという間に襲いかかってきた男達は全員手足が折れた状態で地面に転がりうめき声をあげていた。
「さて残りはあんただけだが、どうだい？依頼主まで案内する気になったかな？」
僕が少女を拘束している男に笑顔で問うと男は恐怖のあまり少女を盾にして叫んだ。
「ちっ近づくんじゃない！コイツがどうなってもいいのか！！」
「おいおい、待ってくれよ。
僕は別にお前らをどうこうするつもりは無いんだって言ってるだろ？
コイツらは問答無用で襲い掛かってきたから正当防衛で無力化しただけじゃないか。
それにその娘は僕とはなんら関わりがないからそんなことしても無駄だよ。
それよりもいい加減あんたの依頼主に会わせてくれないかな？」
（いい加減馬鹿どもの相手をするのは疲れてきたけどやはり突っ込んだ首を途中で引っ込めるのは格好が悪いからもう少しだけ頑張って説得してみるか）
僕は内心ため息をつきながらも男との交渉を続けた。
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