第15話【エーフリの街と商人ギルド登録】

 ふたりは次の日の午後にはエーフリの街に到着した。


 シミリの言った通り街には外壁が設置されており門では門兵が不審者に目を光らせ受付担当者が街へ入る人達の審査や通行料の徴収を行っていた。


「これは見事な外壁だな。

 他の街もこんなに厳重な造りなのか?」


「このエーフリは国境に近い城塞都市のひとつとして交流の拠点になっているので街も人もそして通行料も多い場所になってるの」


 シミリの言葉を聞いた僕は「なるほど」と納得して通行料の準備をしながら受付での回答についておさらいをしておいた。


 やがて受付の順番がやって来て僕達は3番の窓口に案内された。


 どうやら1番が街の住民で2番が商人手形専用で3番窓口は新規の入場者の対応窓口みたいだった。


「この街には何をするつもりで来たんだ?仕事か?買い物か?」


「はい、僕はこの街の冒険者ギルドに登録するために、彼女は商人ギルドに登録するために訪れました」


「冒険者ギルドか。

 お前何か特技でもあるのか?あそこはゴロツキ崩れのような奴等も多数うろついているからな。

 お前のような貧弱そうな奴がいたらすぐに絡まれるぜ。

 まあ精々気をつけるんだな。

 そっちの女は商人ギルドか。

 商人の証は持ってるな?こいつは登録料が高いぜ?金を持ってるのが分かると寄ってくる屑が居るから気をつけな!」


 僕達が受付に頷くと男は紙に内容を記載しながら言った。


「通行料はひとりにつき銀貨1枚だ。

 他の街に比べたら高いがこの街にはそれだけの価値があるって事だ」


(他の街より高いってシミリが言ってた額と同じなんだが他に行ったことがないからよく分からないな。

 まあ、シミリもこの街しか着たことが無いんだろう)


 僕は準備していたふたり分の銀貨2枚を受付に払うと通行許可書を渡してきたので鞄に入れてから街に入った。


「意外とすんなり入れたな。

 もう少し厳しい審査があるかと構えていたよ」


「あはは。あまりキツくしてたら時間がいくらあっても足りないし、あからさまに挙動不審か手配中でもない限り捕まる事はないと思うわ」


「まあ、そうだよな」


 僕達は前に決めた通り先ずは商人ギルドに向かった。


 登録はシミリだけだが単独行動は危険なので僕も一緒に行く事にした。


 キィ、からんからん。


 商人ギルドのドアを開けると受付から声がかかる。


「ようこそ商人ギルドへ!本日のご用件はどのようなものでしょうか?」


 元気のいい若い女性は帳簿を書いていた手を止めて僕達に聞いてきた。


「あっ、商人ギルドへの新規登録をお願いしたいのですが・・・」


「新規登録ですか?

 私は受付のマイと言います。

 それでは、失礼ですがステータスプレートの提示と商人の証である指輪の提示をお願いします。

 それと新規登録手数料として銀貨20枚をお願いしていますが大丈夫ですか?」


「はい。これで良いですか?」


 シミリは受付で言われたとおりにステータスプレートと指輪を提示した。


 マイはステータスの職業が商人なのを確認した後に証である指輪を確認してシミリを見て言った。


「この指輪はファウクス商店の店主の物ですがどこで手にいれましたか?」


 マイはステータスプレートの職業欄の確認をしただけで名前欄をしっかり確認していなかったらしくシミリに厳しく問いかけた。


「その指輪は父の形見です。

 先日両親が亡くなりどうしようかと思ってたのですが私も商人の天職を授かり父の遺志を継ぎたいと思い登録に来ました」


「そっそれは申し訳ありませんでした!

 知らなかったとはいえ辛い事を思い出させてしまいました。

 理由は確認出来ましたので登録料をお願い致します」


 それを聞いた僕は鞄の中から銀貨20枚を取り出してカウンターに置いた。


「登録料はこれで頼む。

 シミリは暫くは店舗を持たない行商として商売を予定しているので各地の街の商人ギルドに顔を出す事になるんだがそれぞれの街で登録が必要なのか?」


「いえ、シミリさんは今回エーフリの商人ギルドで登録になります。

 これから国内の各地商人ギルド共通の許可書を発行しますので各地の商人ギルドを利用される時はその許可書を提示頂けますと問題なくご利用できます。

 勿論街への出入りにも使用できますよ。

 ちなみに商人だと持ち込む商売荷物の量で通行料が変わりますので注意してください」


 マイは書き終わった許可書を僕達の前に提示して受付をしめ括った。


「特に質問が無ければこれで登録は完了です。

 勿論、分からない事があればいつでも聞いてくださいね。

 あ、許可書は常に携帯しておく事を推奨します。

 何かと提示を求められる事もありますので。

 ではシミリ様に商売の神のご加護がありますように」


 マイはそう言うと僕達を笑顔で見送ってくれた。

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