ポニーテールは正義!!と叫んだら幼馴染の妹が俺の彼女に立候補してきた

雲川はるさめ

第1話



お昼休み。

中3の俺らは学校の中庭のベンチで

会話中。


「何年になる?」

「何が?」

「おまえの彼女いない歴だよ?」

「えーと、今、15歳だから、

15年だな...」

「ふっ...!」

さもおかしいと言わんばかりに親友のユーマが鼻で笑った。

「じゃあおまえはどうなんだよ?」

「俺もだ」

「なんだよ、同じじゃねぇかよ」


「あーあ。

彼女ほしーなぁ。

飛び切り可愛い女の子がいいな。

歳上でも歳下でもいいからさ」


ユーマはそう呟いた。


理想が高いよな、ユーマの奴は。


「おまえは?お前はどんな彼女がほしい?」


「ポニーテールの似合う女!!」


立ち上がり、そう宣言すると。


どこからともなく、


「はーい!」



の声が聞こえた。


やたらときれいなソプラノの声だった。

「おい、今なんか聞こえなかったか?」


俺は思わず立ち上がった。


「ん?」


「はーい!とかゆー、綺麗な声が聞こえてきた気がするんだが...」


「気のせいじゃねー?」


「いや、そんな筈はないと思うんだけど...」


「山吹先輩!!」


突如として、さっきの綺麗なソプラノボイスが

すぐそばで聞こえたので振り返ると、

ポニーテールの女がいた。


「え、もしかして、さっきの「はーい」って

君?」


「そーですよ。わたしー、山吹先輩の彼女候補に立候補します!」


「えええ」


俺が声をあげるより、先に

ユーマの奴が飛び上がって声を上げた。



「何言っちゃってんの!

こんな陰気な見た目の山吹の彼女になりたいとか、何言っちゃってんの!?」


「私ー、本気ですよ?」


「さっきー、ポニーテールは正義!

って叫んでくれましたよね?

私、嬉しかったんです!

密かに想いを寄せる先輩がポニテ女子が好きだったなんて!」


「お、おい、ちょっと待って。

なんで、こんな美少女にお前が好かれるよ?」


「さ、さぁ...?」


「遠い昔に、スキー場で骨折した私を抱き抱えて麓まで降りてくれました!」


「あ、ああ...!そんなこともあったかもだな」


俺は少し思い出した。

あれは俺が中学二年生の冬のこと。




「ボードごと、私のこと抱えてくれて

重かった筈なのに、力持ちだなって思いました!」



完全に思い出した。


いま、目の前にいるのは。


俺のボーイッシュな幼馴染、真島マヒロの

妹、真島ミヒロだった。



幼馴染と家族絡みの付き合いをしてた俺は、

中二の

冬休み、俺ら家族と、真島家のみんなで

スキー場に行ったんだ。





それで、お姉ちゃんとは違って運動神経が

あんまり良くない、まだ小学六年生だった

ミヒロに俺がボードの滑り方を教えながら滑ってた。


そんな時。


ミヒロが派手にこけて、

足を痛めたんだ。



麓からあんまり離れていない場所で滑ってたから、下るのはそんなに大変じゃなかったが、

ひ弱陰キャの俺は休み休み、ミヒロを下ろしては、また抱き抱える、という恥ずかしい行為を繰り返してた。



それにしても。


小学六年生の当時は、髪の毛が短かったのに、現在、ポニテできるようになるとか、

随分と頑張って伸ばしたんだな、と思った。



ユーマの奴は、


「待てよ!山吹なんかより、

俺と付き合お!俺のが山吹より男前じゃん!

背も2センチ高いんだぜ!勉強だって俺の方が1できるし、運動神経だって俺の方がいいんだぜ!」


「こいつは吹奏楽部。俺はサッカー部なんだ

(補欠)だけど」


ユーマは補欠だとは言わなかった。

勉強も運動も確かにユーマのができたが、

俺との差は、笑っちゃうくらいない。


50歩100歩だ。




ユーマがミヒロの前で滅茶苦茶、俺すげーんだぜ、かっけーんだぜ!とアピっていたが、

ミヒロは顔色ひとつ変えなかった。


ちらりとユーマのこと見ただけで、

あとは俺のことずーっと見てた。


やがて、ユーマがキレて、

「なんだよなんだよ!もーいいよ!

シンジも、どーして告白されてるのに、

オッケーしないかね!?」


とぶーたれた。


オッケーしないのは

なぜかって?


その訳はちゃんとあるんだ。


俺はな、ミヒロじゃなくて、

俺の幼馴染で、ミヒロの姉のマヒロのことが、物心ついた頃から好きだったんだ。


だから、返答に困ってた。


それだけのこと。


そうこうしているうちに。


タイミングが、悪いとしか

いいようがないんだが、俺の好きな女が

ミヒロの背後から颯爽と現れたんだ。


「お、お姉ちゃん...!」


「ま、マヒロ...!!」


ど、どうする...



ここは妹のミヒロを優しく振って

マヒロ、お前のことが好きだ!と告ってみるか!?


俺が迷っていると、

マヒロが口を開いた。


「何してんの?シンジもミヒロも。

もうじき授業始まるよ。


私は移動教室に行くとこだけど」


今は女子バレー部のエースアタッカーで

ベリーショートで男みたいな髪型になっちまったが、

昔、マヒロは美少女だった。


それもポニーテールの。


だからこそ、俺はポニーテールの女が好きだ!

とついさっき宣告したんだ。


「お姉ちゃん!私ね!

いま、シンジ先輩に告白したんだ!!

だから返事待ち!」


「ふーん...」


マヒロの奴は顔色ひとつ変えない。


...くそっ!と思った。

このとき。


例えば、マヒロのリアクションとして、


ええーっ、だめよ、私がシンジのこと

好きなんだから!と言ってくれたら嘸かし楽なのに。


そーなったら俺は、


仕方ねぇな。マヒロ。おまえと俺は同い年だし、幼馴染だから

おまえと付き合うわ!とカッコよく言えるのに。

そうはならなかった。

マヒロと俺は同じクラス。

そして、ユーマも同じクラスだった。


「次は音楽の授業だよ。とっとと教室にリコーダー取りに行かなきゃなんじゃない?

言っとくけど、あと、三分で授業始まるんだからね!」

「ミヒロも!とっとと一年三組に戻りなさいっ!」


「はーい!」


ミヒロはくるりと向きを変えた。


「先輩!いい返事期待してますからね!」


「え、えーっと...」


今。女女してるのは妹のミヒロ。


この前行われた文化祭の美少女コンテストで

二、三年の綺麗な女子の先輩たちを差し置いて優勝したのはミヒロだった。


マヒロだって、髪の毛伸ばしたら

絶対負けてないのに。

マヒロはボーイッシュということもあり、

エントリーすらしなかったんだ。



姉妹なんだから、マヒロもミヒロも両方美人。


それにな、俺からみたら、

マヒロの方が可愛いと思うんだ。


ど、どうする...



ここは妹のミヒロを優しく振って

マヒロ、お前のことが好きだ!と告ってみるか!?


俺が迷っていると、

マヒロが口を開いた。


「何してんの?シンジもミヒロも。

もうじき授業始まるよ。


私は移動教室に行くとこだけど」


ミヒロがここで、口を開いた。


「お姉ちゃん!私ね!

いま、シンジ先輩に告白したんだ!!

だから返事待ち!」


「ふーん...」


マヒロの奴は顔色ひとつ変えない。


...くそっ!と思った。

このとき。


例えば、マヒロのリアクションとして、


ええーっ、だめよ、私がシンジのこと

好きなんだから!と言ってくれたら嘸かし楽なのに。


そーなったら俺は、


仕方ねぇな。マヒロ。おまえと俺は同い年だし、幼馴染だから

おまえと付き合うわ!とカッコよく言えるのに。

そうはならなかった。

マヒロと俺は同じクラス。

そして、ユーマも同じクラスだった。


「次は音楽の授業だよ。とっとと教室にリコーダー取りに行かなきゃなんじゃない?

言っとくけど、あと、三分で授業始まるんだからね!」

「ミヒロも!とっとと一年三組に戻りなさいっ!」


「はーい!」


ミヒロはくるりと向きを変えた。


「先輩!いい返事、期待してますからね!」


「え、えーっと...」


今。女女してるのは妹のミヒロ。


この前行われた文化祭の美少女コンテストで

二、三年の綺麗な女子の先輩たちを差し置いて優勝したのはミヒロだった。


マヒロだって、髪の毛伸ばしたら

絶対負けてないのに。

マヒロはボーイッシュということもあり、

エントリーすらしなかったんだ。



姉妹なんだから、マヒロもミヒロも両方美人。


それにな、俺からみたら、

マヒロの方が可愛いと思うんだ。


俺はユーマとふたり、大慌て、

教室に戻って、音楽の授業の用意をした。


それから二人して急いで音楽室に向かったんだ。




ユーマは移動中も依然としてぶつくさ言ってた。


「あーあ

、俺、ミヒロちゃん

彼女にしたい」


「お前はさ、どーしてあの場でオッケーしなかったわけ?すげー、迷ってた風だったけど」


「いやー、

俺、好きな女子が別にいるんだよ」


「マジ...!?誰だよ!?」


「実はさ、幼馴染のマヒロなんだ」


「は?マヒロ!?ミヒロちゃんの姉ちゃんだよな」


「なんでまた、あんなベリーショートの

怖い女が好きなんだよ。

ポニテちゃうじゃねーか!!」


「あのな。

マヒロは小学生の頃はずっと髪の毛が長くてポニテにしてたんだ」


「だからこそ、の、さっき

ポニテは正義!って宣言してみせたんだ!」


「マジか!?」


「おう、今度、写真持ってきてやる。

滅茶苦茶かわいいんだぜ...!

今年のミスコンは、妹のミヒロちゃんが

優勝したけど!マヒロのやつは参戦すらしてねーけど!あいつが本気出して、髪の毛伸ばして

メイクしたら、もうな...!


ぜってー、一位だと思うわ!!」




音楽室の階段を駆け上がって、

そんなセリフを少し大きめな声で吐いてたら。


ドカーンと踊り場のところで

俺はマヒロと偶然にもぶつかって事故キスした。



「んん....」


「ええええ」とユーマ。


俺も腰を抜かした。


お互いの唇が離れてから、

ふたりして真っ赤になった。


「な、なんだよ、マヒロ...!急に現れんなよな...!しかも、おまえ、これから授業だってのに、なんで、違う方向に向かおうとしてんだよ...!」


「音楽のファイル、忘れちゃったのよ!!」


「おまえ、相変わらず、ドジだなぁ...!」



「う、うるさいっ!それよりなにより、

さっきの、

私のファーストキスだったのよ...!」



「俺だって、初めてだったわ」


「それよりな、おまえ、まさか俺らの

さっきの会話、聞いてたとか?」


マヒロは真っ赤になった。


あ、図星か。


俺は告白の手間が省けたと思った。


「き、聞こえたわよ...!

わ、私、髪の毛を伸ばしてあげても

いいわよ...!」


「あんたのために、ぽ、ポニーテールにしてあげてもいいんだからねっ!!」



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ポニーテールは正義!!と叫んだら幼馴染の妹が俺の彼女に立候補してきた 雲川はるさめ @yukibounokeitai

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