7話目

 ノエリアさんからまさかのドラゴン退治のお誘い。


 ドラゴン怖い超怖い。


 丁重にお断りした。したよ? だからやんないってば!


 俺が嫌だって言ってるのに、ノエリアさんは無理やり俺から大事なものを奪いやがった。というかすでに奪われていた。


「それ以上駄々こねるなら、このエロ本を後輩ちゃんに見せちまうよ」


「やめてくださいそれだけは本当にシャレにならんです」


 烈火のごとく怒るネルの姿が目に浮かぶ。エロ方面にはとくに厳しそうなんだもん。


 抵抗する術をなくした俺は渋々と彼女の依頼を受けることにしたのだった。


 依頼が終わったらエロ本はちゃんと返してもらおう。なかなか手に入らない貴重品だからな。この芸術品を作り出した作者に乾杯。



 そんなわけで、ドラゴンが現れたらしい山に向かった。


「こんなところにドラゴンなんているんですか? ここって弱いモンスターしか出ないっていう始まりの町なんですよ」


 当然のごとくついてくるネルの疑問。それは俺も思った。


「なぜか最近居ついたみたいさね。詳しいことはあたしにもわからないよ」


 そんな適当でいいのか? 一応ドラゴンなんてモンスターの中じゃ最強種だぞ。


 まあリーダーであるノエリアさんがそれでいいならしょうがない。俺たちゃついて行くだけですぜ。


 俺とネルとノエリアさん。あとはもとからノエリアさんパーティーだった仲間が五人ほど。みんな女戦士である。みんなグラマラスである。ここ重要な。


 なんだハーレムじゃないか。


 できればいつもノエリアさんのパーティーにお世話になりたいんだが、ネルがそれを嫌がってしまうのだ。


 今回は強いドラゴンが相手だからとオーケーが出た。見張りに自分も行くとか言ってたけどなんの見張りなのか。ドラゴン退治を見たいってことなのだろうか。


 まあいいや。


 ノエリアさんのパーティーの皆様方は巨乳ばっかり。最高です! 桃源郷はここにあった!


 適当にモンスターを蹴散らしながら進む。回復役は後ろからゆっくりお姿を眺められるからいいなぁ。プリーストって天職なのかもしれん。


「ふんっ!」


「ぎゃあっ!? な、なにしやがる!」


「目つきがハレンチですよ先輩」


 戦闘中のノエリアさんたちを眺めていたらネルに思いっきり足を踏まれた。体重軽いくせに的確に痛いツボを突いてきやがる。


 くそー! この後輩がいなけりゃじっくり拝めるのによ。


 文句を言いたいが後輩の方が不機嫌そうだったので言葉を飲み込まざるを得なかった。俺よえーな。


「あっはっはっ! 夫婦ゲンカかい? もうすぐドラゴンの根城が近いんだからそのへんにしといておくれよ」


 笑いながらノエリアさん。ネルはますます不機嫌になった。


 緊張感のないまま突き進み、ついにドラゴンがいるらしい洞窟を発見した。


 ちなみにここまで回復魔法は一回も使用していない。ノエリアさんたちのパーティーは強いのだ。もっと強いモンスターが出るところに拠点を移せばいいのに。


 このままドラゴンが出なきゃ俺とネルはやることをなくしてしまう。


「本当にいればいいけどな」


 洞窟を前にそんなことを呟いてみる。


 それがフラグってやつだったのだろう。


 突如、俺たちの頭上が陰に覆われる。


 なんだ? そう思ったのはこの場にいる全員だったろう。みんなで空を見上げた。


 そこには空を覆い隠すほどのドラゴンがいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る