【第51話:それぞれの役割】
オレの、そしてオレたちパーティーだけの切り札。
バフの重ね掛けによる内部破壊は、理屈上はどんな魔物にでも通用する最強の攻撃方法だ。
しかし、強い魔物になればなるほど、最初はただ単に魔物を強化してしまい危険が増していく。
だから上手く立ち回って、時間をかけてバフを掛けていかなければならなかった。
そのため、まずはバフの本来の使用法。
仲間の強化を図る!
「範囲化!
一般的な強化としては最上位の補助魔法。
その効果は魔物にとっては微々たるものかもしれないが、人にとっては非常に有用なものとなる。
「きたきたきた~♪」
「……んん」
「わぁ♪ 凄い! 全身に力が漲るし、それに魔力まで……」
そう言えばメリアに
村にいた時はまだ
最近になって知ったのだが、この
しかもこの魔法を1.5倍で使いこなせる者はさらに少ないのだとか。
今はもうなりたいとも思わないが、従士として国に仕えるという道もあったのかもしれないな。
でも、今はこうして仲間にかけて喜ばれることが何よりも嬉しい。
「あぁ、魔物の力や魔力に比べれば微々たるもんだが、馬鹿にできない程度には強化されるだろ?」
「うん! 凄いよ!」
ずっと馬鹿にされてきた補助魔法を素直に喜んでくれるのは案外嬉しいものだ。
だけど、もちろん今はこんなことで喜んでいる場合じゃない。
前をみると、いよいよミスリルゴーレムがこちらに向かって歩き出していた。
「さて……そろそろ気を引き締めるぞ! フィア! ミスリルゴーレムは普通の武器は通じない。無理に攻撃せずに得意のスピードを活かして陽動に徹して敵を撹乱してくれ!」
「了解よ!」
「ロロアは
「わかりました!」
「メリアは……」
メリアにも同じような感じでこれからの行動を伝えようと思ったのだが、既に紙と筆を取り出し、さらさらと報告を纏め始めていたので、残りの言葉は飲み込むことにした。
「じゃぁ、こいつを倒して憂いを全てとっぱらうとしようか! いくぞ!」
「「「はい!!」」」
まずは自分の限界値まで自分を強化だ!
オレは走りながら、補助魔法を重ね掛けする。
「重ね掛け!
オレはさらに上がった身体能力でスピードをあげ、まずは一番手でミスリルゴーレムの元に駆けていく。
そのまま補助魔法がギリギリ届く距離まで達すると、間髪入れずにバフを重ね掛けしていった。
「
固有スキルの重ね掛けに関してはもう僅かな集中で発動できるので省略し、残りの詠唱は相手の攻撃を避けるための集中にさきたいので声に出して発動させる。
今のところ三連続での発動が限界だが、まぁこれでも単発で放つのとは大違いだ。
「
オレはそこまで早くないミスリルゴーレムの動きに合わせるように、今度は後方に下がって距離を保ちつつ再度三連続で
すると、そこでちょうどフィアが追い付いてきた。
「ちょっと~! 自分だけ1.8倍ってずるくない!?」
そんなこと言われてもな。練習の時に試してみたら痛みに耐えられなくて倒れそうになってたのは自分だろう……。
まぁただの軽口で、フィアもそんなことはわかっていて言っているのだろうが。
「ちゃんと私も1.8倍にしてよ!」
わかって……ないな……。
まぁ後でもう一回説明してやるか。
「忘れてるのかよ……。あとで説明してやるから、とりあえずこいつに勝つぞ!」
負けられない理由にしてはあまりにも軽いが、まぁ何が何でも勝ってきっちりフィアの頭に教え込んでやろうじゃないか。
「
「はぁぁっ!! こっちよ!」
オレがまた三連続で
本気で突くと槍の方が壊れるので手加減した上で、刃の方ではなく石突の方で突いている。
ただそれでも……。
「っ~……手加減したのに手が凄い痺れてるわ……」
誰に言うでもなくフィアの呟いたひとことが、あらためてミスリルゴーレムの頑丈さをあらわしていた。
「お姉ちゃん!
しかし、それに気付いたロロアがすぐさま治癒魔法を放ってサポートする。
オレは呟きが聞こえたのでわかったが、後方にいるロロアがすぐに気付くのはさすがだな。
これは長年一緒に過ごしている姉妹だからというより、ロロアの観察眼が優れているからだろう。
オレにも同じようなタイミングで治癒魔法がとんでくるからな。
さぁ、ミスリルゴーレムよ。
オレたちの絆の固さが勝つか、お前の頑丈さが勝つか勝負といこうか!!
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