三回戦(準決勝)の模様
ここまで勝ち上がってきたのはアリゲーターガー、ホホジロザメ、ニシローランドゴリラ、ヒトの四種。魚類同士と霊長類同士で決勝戦のカードを決める流れとなった。
準決勝第一試合 アリゲーターガー対ホホジロザメ
奇しくも魚類同士の戦いとなった。硬骨魚類代表のアリゲーターガーと、軟骨魚類代表のホホジロザメが水中でぶつかり合う。
先に仕掛けたのはホホジロザメであった。体格、身体能力、凶暴性において圧倒的に上回るホホジロザメが、根は臆病なアリゲーターガーを追い回す展開となった。
やがて、ホホジロザメの口がアリゲーターガーをとらえた。アリゲーターガー自慢の硬いガノイン鱗も、海棲生物トップクラスの噛む力には耐えられなかった。そのまま鱗をばりばりとかみ砕かれ、アリゲーターガーは絶命した。
底の方に潜り、岩穴などに逃れれば、少し違った展開になったかも知れない。しかしアリゲーターガーは水面近くの浅いところを泳いでいることが多い魚であり、底まで潜っていくという行動を咄嗟にとれなかった。そこが勝負を決定的なものとした。二メートルという淡水魚としては大型の部類に入るアリゲーターガーも、六メートルの巨体を誇るホホジロザメには全く敵わなかった。
準決勝第二試合 ニシローランドゴリラ対ヒト
こちらもまた、奇しくも霊長目ヒト科同士の対決となった。どちらが霊長類の代表選手となるのか、神々の注目が集まる。
ゴリラは逞しい見た目に反して温和で、自分から攻撃を仕掛けるようなことは殆どない。肉食のために他の動物を襲うことはあるが、それはあくまで手頃な大きさの昆虫や小動物などに限られる。ヒトのように大きな獲物に自分から仕掛けることは非常に稀だ。
一方のヒト――ブリーフ姿の中年男性にも、戦闘の意志は全くなかった。ゴリラを前にして、完全に怯え切ってしまったのである。
ヒトの世界では、ゴリラという生物は力強いものの代名詞として扱われる。かつては暴力の権化のような認識をされていたが、ゴリラの生態について色々と分かってきた現代においては、「気は優しくて力持ち」な動物という印象に変わってきている。それでもやはり、「力の強い、筋肉の塊」として認識されているのは変わっていない。
互いに何も仕掛けないまま時間ばかりが過ぎていった。神々も流石に退屈したのか、どちらかを判定勝ちにしようという案が持ち上がった。
天空神と太陽神は、「ゴリラの方が圧倒的に身体能力が上なのだから、ゴリラを決勝に進出させるべきだ」と強く主張した。一方、大地母神と海神は「人間とホホジロザメ、この戦いはまさしくかの名作映画「ジョーズ」と同じ対戦カードである。どの道ゴリラでホホジロザメに勝つのは望み薄なのだから、工夫次第でサメに勝利しうるヒトことが決勝の相手にふさわしい」と反論した。他の神々の間でも意見が割れた結果、「くじ引きで決めよう」ということになった。
……そのくじの結果、ヒトを決勝へと上げることに決まった。
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