二回戦の模様

二回戦第一試合 アデリーペンギン対アリゲーターガー

 ラーテル対ホホジロザメの戦いと同様、今回も水場と陸地を備えるフィールドでの戦いとなった。

 アデリーペンギンは相手のフィールドである水中に飛び込み、アリゲーターガーと対峙する。ラーテル対ホホジロザメと違うのは、ペンギンが潜水上手な水陸両用動物であることだ。

 体格と防御力ではアリゲーターガーに分があるが、機動力と攻撃性ではアデリーペンギンが勝る。先に仕掛けたのはアデリーペンギン。アリゲーターガーの左脇に回り込み、嘴で執拗につつく。だが今度もアリゲーターガーのガノイン鱗は全く攻撃を寄せつけない。まるで重戦車のような装甲だ。

 アリゲーターガーもただやられるばかりではない。身をくねらせて、アデリーペンギンに噛みつこうとする。だがアデリーペンギンはそれを素早く避け、そのまま陸に上がって呼吸した。アリゲーターガーは体が硬く、体を折り曲げるような動きがあまり得意でない。アデリーペンギンの回り込み攻撃は有効であったのだ。

 その後もアデリーペンギンのヒットアンドアウェイ戦法は続いた。元々あまり好戦的でないアリゲーターガーが心身ともに疲労し戦意を喪失してしまえば、この戦いはアデリーペンギンの勝利となっただろう。しかし、そうはならなかった。アリゲーターガーの牙がとうとう疲労したアデリーペンギンの首を捕えた。そのままアリゲーターガーはアデリーペンギンの柔らかい肉を咀嚼し、胃袋へと収めたのであった。

 負けはしたものの、体格において勝る相手に奮闘したアデリーペンギンには、天上の神々から賞賛の拍手が送られた。彼を天にあげて星座にするべきか否かの会議が、大会終了後に開催される模様である。


二回戦第二試合 アメリカブタバナスカンク対ホホジロザメ

 一回戦で必殺兵器をお披露目し、優勝候補アムールトラを退ける番狂わせを成し遂げたアメリカブタバナスカンク。次の相手はまたも優勝候補のホホジロザメだ。

 ヒレを水面から立てて泳ぎ回るホホジロザメを見つけたスカンクは、水場を警戒して近寄ろうとしない。賢明な判断であろう。

 業を煮やしたホホジロザメは、水面から大ジャンプし、陸上のスカンクに襲い掛かった。ホホジロザメは身体能力に優れており、アザラシなどを捕食する際に大きくジャンプをして海中から飛び出すことがある。

 避けられないと判断したのか、スカンクはその場を動かない。あの悪臭汁によって退散させようというのだろう。

 だが、神々の予想に反してスカンクは悪臭汁を出さず、そのままホホジロザメに丸呑みされてしまった。それもそのはず、一回戦でスカンクは体内に溜めた悪臭汁を使い切っていたのだ。結局、二度目のジャイアントキリングは起こらず、優勝候補ホホジロザメが準決勝に進出ということになった。


二回戦第三試合 ニシローランドゴリラ対ヒクイドリ

 力自慢同士の対決となった。ウエイトではゴリラが優勢だが、ヒクイドリの凶暴性や爪の切れ味は侮れない。

 先に仕掛けたのはヒクイドリであった。右脚による強烈な蹴りを、ゴリラ目掛けて放ったのだ。この黒い筋肉の塊はすんでのところで蹴りを回避したものの、爪がかすめ、左腕の皮膚を少し切り裂かれてしまった。

 ヒクイドリはすぐさま追撃にかかり、二度目の蹴りを繰り出した。だがここでゴリラが危機感を覚えたのであろう。繰り出された脚を右手で掴み、そのままゴリラパワーでへし折ってしまったのだ。

 右足を折られたヒクイドリは身動きが取れなくなり、ゴリラの勝利となった。


 二回戦第四試合は、ベトナムオオムカデ対アフリカウシガエルの勝者と、マントヒヒとの戦いを制したヒトとの戦いとなるはずであった。しかしベトナムオオムカデとアフリカウシガエルが相打ちとなったため、ヒトがそのまま三回戦に進むこととなった。

 ブリーフ一丁のおじさんは、敷物代わりに敷いた大きな葉っぱに体育座りをしながら、明日の仕事のことを考えていた。このまま見知らぬ場所に閉じ込められていては、明日無断欠勤してしまうのではないか……仕事には行きたくないが、こんな形で無断欠勤しては後が怖い。この男の胸中にあるのは、勝利の喜びなどではなく、食い扶持を失うことに対する恐怖であった。

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