第6話 数当てゲーム②
カードが配られる……
ギンの手元に配られたカード。
『3』のカードと裏のカード。
教師である桃井……
見えるカードは『1』
そして、同じ学園の女子生徒……麻橙ネネ……
見えるカードは『6』
見えているカードは『1』『3』『6』
見えないカード、伏せられたカードは『2』『4』『5』『7』
先の勝負でわかったことは、迂闊な質問は逆に回答者へのヒントを与えるということ。
仮面の兎の開始の合図が響くが、警戒してか誰も動かない……
「じゃぁ、私から……」
ネネが小さく挙手し、最初の質問者を名乗り出る。
「お二人の所持する表のカードは『5』より上ですか?」
ネネがそうギンと桃井に尋ねる。
俺のカードは『3』、答えるならノー『下』になる。
『6』のカードは目の前の桃井の裏のカード、これは今質問した麻橙にも見えているカード。
ここで対象になるのは『5』と『7』のカード。
考えを集中する……ここで麻橙がこの質問をして優位に立つ事。
俺の『裏』のカードが『5』か『7』であった場合だ。
桃井には自分の裏のカードの『6』が見えず、俺は自分の『5』か『7』のカードが見えていない。
『5』、『6』、『7』の2つが見えている麻橙にとって……『上』と答えるのは自分のカードが残りのいずれかであることを暴露しているようなもので……
二人が『下』と答えた場合には……彼女には伏せられたカードの数字がその時点で確定するというわけだ。
大人しそうな顔をして……案外一番敵に回すと危険だろうタイプだ。
一番最初の質問でそこに辿り着くのだから……
「その質問はパスさせてもらう……」
ギンはそう答える。
「上ね……」
迷いなく……桃井は宣言する。
馬鹿……なのか、何か周りを惑わす策があるのか……今は判断できない。
桃井の表のカードは『5』か『7』ということだ。
「それじゃ、私が質問するわ」
次に桃井が挙手する。
「あなたたちの見えるカードに『4』以下のカードは2枚であるか?」
以上、以下……ではなく、2枚丁度であるかどうかとうことだ。
情報としては、双方の意見が聞ければ相当大きいだろう。
見えるカードは『1』『3』『6』……答えはYES、2枚だ。
考える……これを拒否すれば……次の麻橙の質問に拒否することができない。
「答えはNOです」
麻橙はギンより先に答える。
「……質問を……拒否する」
完全に追い込まれる……ダメだ。
桃井に情報を与える以上に……麻橙がこの俺の返答で答えに辿り着くような気がした。
『6』は麻橙にも見えている数字だ。
俺がここでYESと答えれば、俺の表のカードも麻橙に伏せられているカードの数字にもヒントを与える。
……拒否権がなくなった……これ以上、麻橙に質問のチャンスは与えてはならない。
だが……この一つの質問で……
それに、2人は俺の質問に拒否ができる……
ダメだ……諦めるな……
目の前のコインを誰かに渡すな……
レイを守る……そう誓った。
アレはきっとレイに危険を齎す凶器になる。
そして、レイを助けるための凶器にもなる。
レイのためなら、俺はそれを奪い、それを振るおう……
キョウカ……あの女のように俺は天才じゃない……
完全回答なんて不可能だ。
頭が悪いなら悪いなりに考えろ……利用しろ。
なぜ……今、お前……俺はピンチなんだ?
それを考えろ……そしてそれはきっと答えだ。
「二人の目から『2』より大きいカードは2枚あるか?」
できるだけ、頭の悪そうな質問をする……
桃井の質問同様に2枚であることを限定する……
冷静を装う……
俺はまだ……何もわかっていない。
辿れ……数字を……結べ……
「いいえ……2枚じゃないわ」
桃井の言葉に……最後の線が結ばれる。
「はい……2枚になります」
どちらか片方聞ければ良かったが……
完全に追い込まれた表情のギンの口元が緩み不敵に笑う。
「……答え合わせだ、うさぎ!」
そうギンは言った。
「はぁ、ふざけんなてめぇ、もうわかったのか?」
仮面のうさぎは不愉快そうにそう言いながらも答えを確認する。
先の優等生のような、確証はない……
完全回答もできない……
それでも……馬鹿なりに辿り付いた答えだ。
「伏せられたカードは『4』だ」
そう答えを出した。
うさぎがそのカードをオープンする。
「………正解だ、ちきしょう」
正直、ここに居る誰より安堵しているのは本人だった。
「おい、きっちり聞かせろよ、小僧」
兎が……ギンに解に辿り付いた経緯を確認する。
答え……ギンの表のカードは『3』裏のカードが『2』
ネネの表のカードは『7』裏のカードが『1』
桃井の表のカードは『5』裏のカードが『6』
伏せられたカードは『4』
「……先の回答のように綺麗なもんじゃないけどな……」
そう言い、ギンは説明を始める。
「俺の持つカードは『3』見えているカードは、麻橙さんのカードの『1』と先生の『6』の3枚」
まず自分のスタートである3枚。
「最初の麻橙さんの質問……所持する表のカードは『5』より上かどうか……この質問で先生は『上』と答えた……『6』はすでに見えているカード、先生のカードは『5』か『7』……そしてこの質問から推測できるのは麻橙さんにだけ5から7のカードは2枚以上すでに見えている……自分の手札か、俺の裏のカードか……少なくとも伏せられたカードが1から4である確立は大きい」
「すでに、『1』と『3』が見えている自分からすれば……『2』と『4』の確立が高くなる……次の先生の質問、『4』以下のカードは2枚か?『5』以上のカードを2枚以上所持している先生、そしてこれにNOと答えた麻橙さんにはやはり5~7のカードを把握していると考えられる……」
「俺の最後の質問……『2』より大きいカードが2枚かどうか……『1』のカードが見えていて、二人の表のカードが確実に2より大きいとわかっている以上、その答えは俺のカードが『2』であるかそれ以外の数字かを知ることができる」
「結果……先生から2枚じゃない、麻橙さんは2枚丁度……1が見えている先生、そして自分のカードは5以上であるのに、2以上のカードが2枚ではない、麻橙さんは自分の裏のカードの1が見えていないのに、2以上のカードが3枚じゃなく2枚になる理由は……俺の裏のカードが『2』であることを示す」
そうギンが答える。
「最終的に……先生の表のカードは『5』か『7』、麻橙さんのカードも『5』か『7』……正直、絶対的な根拠はなかったけど、これまでの流れから取り除かれる数字はやはり『4』」
その自分の推理を語り終える。
ギンがコインを手にレイスと赤桐の側に戻る。
「流石だね……」
赤桐が、ギンの戦果を賞賛する。
この状況……こんな場所で喜ぶような場面ではないことは理解しているが……
「そんじゃ、残りは4名だからなぁ、まとめてやっちまうぜ」
残って居るのは、赤桐、灰場、水口、紫々戸の4名
言われ、素直に席に着く赤桐……配られるカード。
自分の表に見えるカードは『1』
灰場の裏のカードは『7』
水口の裏のカードは『6』
リンネの裏のカードは『9』
赤桐から見えないカードは『2』『3』『4』『5』『8』
「あーー、えーーと、先に僕は皆に謝らなきゃ」
リンネがそう3人にへ告げる。
「僕は天より授かった特殊能力があります」
ケラケラと笑いながら告げるリンネ。
誰もが胡散臭くリンネを見るが、いつの間にか先ほどまでしていなかった薄いオレンジ色の入ったサングラスをつけ、徐にみんなのカードに手のひらをかざして、透視していますみたいな仕草をしている。
「なんだい、そのサングラス、先ほどまではしていなかったはずだけど……」
赤桐のそんな言葉に、リンネは笑いながら。
「いやだなぁ、ただのオシャレ……僕、結構イケてるだろ?」
どこまで本気なのか……ここに集められた中で一番に奇妙な人間であるというのは言いすぎではないだろう。
「ヒント……この伏せられたカードは1以上9未満です」
そう言って一人おかしく笑っている。
「なんだよぉ、つまらないなぁ……このカードは1ではありません」
リンネはそう宣言する。
「だって……『1』のカードは……」
そう言って、カードを順番に見渡し、赤桐の前で目を止める。
「ねぇ?」
そう含みのある笑みを赤桐へ向ける。
「2のカードでも、3のカードでもありませーん」
そう言ってまた……カードを見渡し、水口と灰場の所で同じく笑みを零す。
惑わしに決まっている……が、自分の『1』のカードのありかを目の前の男は本当に見透かしているように思える。
「あれ……じゃあ『5』のカードってどこだろぉ?」
そうきょろきょろしながら……
「あっそっかぁ」
まだ、透視していないカードがあったと手をパンと叩き、目線を伏せられたカードに落とす。
「……なぁ、ウサギ君、この彼の行為はルール違反に値しないのかい?」
赤桐がそうウサギに尋ねるが……
仮面のウサギもかなり悩んだ様子で……
「とりあえず、ゲームは続行だ、結果次第じゃ反則になるからなてめぇ」
そうリンネに仮面のウサギは告げる。
「了解、猛省させて頂きます」
敬礼のポーズをとりながらリンネはへらへらと謝罪する。
「最初に質問させてもらおう」
完全にゲームの進行が滅茶苦茶になってしまっているが、赤桐がそう流れを戻す。
「リンネ君と言ったね……君の透視能力というのは本物なのかい?なら……自分の裏のカードが何か言い当てることは可能なのかい?」
そう赤桐がリンネに尋ねる。
「あぁ……うん、いいけど……この場合、数字を特定する発言になるけどいいの?」
そうウサギにリンネが尋ねる。
「そのままの数字を聞いたり発言したりするのは禁止だ」
仮面のウサギはそう告げる。
「うーん、だったらこの言い方はありかなぁ……皆さんが見ている数字で一番大きい数字です」
リンネがそう告げると……全員の表情が固まる。
リンネの持つ裏のカードは『9』……間違いなく言い当てている。
「こ……答え合わせだっ!」
そう叫ぶように灰場が挙手する。
「伏せられたカードは『5』だっ!!」
そう灰場が叫んだ。
「………不正解だ」
ウサギはそう告げると……楽しそうにリンネが笑う。
「ありがとう……ペナルティーがどんなものか受ける人間を見たかったんだ」
そうケラケラと笑っていると……
「何者だってめぇーッ!!」
そう灰場はリンネに飛び掛ると、椅子と共に後ろにひっくり返りその場に倒れる。
灰場はサングラスを奪い取ると周りを見渡し、カードを見る。
「わはははははっ……あははははっ!!」
灰場に馬乗りされ地に寝そべりながら、リンネは両目を手のひらに覆うように大笑いする。
「なんだ……お前……本当に?」
サングラスをつけたところで何も見えない……当然ではあるが……
それ以上に証明できない……リンネの特殊能力……そんなものが……
「答え合わせだ」
倒れたまま……リンネが告げる。
「伏せられたカードは『8』だ」
そうリンネが宣言した。
「…………正解だ」
ウサギはそう告げる。
「種明かし……?してもいいけどその前に僕が反則かどうか先に判定してくれる?」
リンネがそうウサギに告げる。
「まぁ……今回は特別だ……種明かしするってんならコインをくれてやる」
ウサギは告げる。
「……読心術……だね」
赤桐がそう先に答える。
多少、自分も心得がある……だが、他の2人は兎も角自分までも読まれるとは以外だ。
そういったものには引っかからない自信はあったのだが……
「特殊能力だって言ってるのになぁ……」
そうリンネは笑いながら不服を漏らす。
「悪ふざけをして場をかき乱すふりをして、数字を一つ一つ言い、君はカードを透視するふりをしながら、一人、一人の表情や目の動きを探った、偶然にも君に見えないカードは『8』と『9』の二つのカード、自分のカードは何か?という質問にも、自分の裏のカードと伏せられたカードは『8』と『9』」
「君のカードがどちらであっても、この場にいる者から見えるカードは君のカードが一番大きいカードになる……そして、灰場くんを挑発し、自分を押し倒すよう誘導させ、事故を装い後ろに倒れた拍子にカードを落とし……素早く自分のカードを確認した……」
そう赤桐は自分の推理を話す。
リンネは楽しそうに笑いながら正解とは言わず拍手だけしている。
「おいっ、いくらなんでも反則だろっ」
水口がそうウサギに問うが……
「やめときなよ」
赤桐がそう告げる。
「正直、僕の推理が正しい保障も無いし、僕としては彼が本当に能力者であることより、僕の説明通りの人間であった方がもっと恐ろしい」
職業柄いろんな人間を見てきたが正直、ここまで不可解な人間は見たことがない。
そして、突如始まった謎の数当てゲームが終わる。
イカサマコインを手に入れたのはこのゲームの勝者である3名。
無槻 鏡華(むつき きょうか)
青都 吟芽(あおと ぎんが)
紫々戸 凛祢(ししど りんね)
の3名……この結果が今後のイカサマゲェムというものにどう響くのか……
そして回答件を失った、灰葉 項晴(はいば こうせい)
大時計の時刻はもうすぐ、半分の6:00:00を切ろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます