第5話 数当てゲーム 初戦 sideキョウカ
今更ながらの、仮面の兎の追加ルールを聞き、改めて自分のカードに目を落とす。
配られた2枚のカード、1枚は『1』の数字が記入されていて、もう1枚は真黒な裏面でその数字が何かはわからない。
隣の女子生徒……黒瀬 零素……
私の目から見えるカードは『3』
そして、逆隣に居る保険医の先生、緑木 甚之介……
私から見えるカードは『6』
私から見えるカード『1』『3』『6』
見えないカード『2』『4』『5』『7』とりあえず、そこまでを整理する。
「それでは、私から……質問していいかな」
さっそく動いたのは、保険医である緑木。
そもそも、このゲームに置いて質問することは有効か?
私はそこに疑問を抱く。
「どうぞ」
お手並み拝見と行こう……
私はそう答えた。
「君たちの持っているカードの数字は『4』より上か下か?」
さて……この質問に答える事による危険性……
それは正直余り無い。
ただ……私が最初にしようとしている質問、それを考えるとすぐにバレるリスクがある……。
「そうね……その質問はパスさせていただくわ」
そう答える。
「私もパスします……」
レイスもそう答えた。
この愚かな質問を少しだけ推測してみよう……
その愚かな質問は緑木の巧妙なブラフであるのかどうか……
私は一度目を閉じ、思考をリセットすると……
緑木の目線に立ち、再度目を開く。
もちろん、彼のカードが見えるわけじゃないが……
彼の目線からは私と同じ『3』のカードが見えている。
同時に私には見えない自分の表のカードと私の裏のカードが見えている。
逆に私には見えている『1』のカードと『6』のカードは見えていない。
さて、この点を踏まえて彼が『4』の数字の上と下を質問する経緯を考えよう。
私の目から彼が見えているのが確定している数字が『3』
『1』と『6』は見えていないことが確定している数字。
そして、『2』『4』『5』『7』このうちの2つが見えている。
そして、この愚かな質問が彼の天然によるものなら……
『4』の数字の上か下か?という問いかけ……
もし、私かレイスのどちらかが『4』のカードを所持していた場合に回答ができない。
そうなると、緑木からはこの『4』の数字が見えているということだ。
もちろん、レイスの裏のカードは私にも見えている。
そうなると……私の裏のカードか緑木の持つ表のカードのどちらかが『4』であるということ。
緑木から見えるカードは『2』『3』『4』か、『2』『4』『7』か、『4』『5』『7』の3パターン。
もちろん、確定ではなく推測の範囲ではあるが……。
「私の質問は最後でいいわ、黒瀬さん先にどうぞ」
そこまでの推測を簡単に済ませると、そうレイスに言った。
「貴方たちから見える私のカードは『2』以下のカードですか?」
そう彼女は尋ねてくる。
答えは『3』だ。『3』以上になる……
「質問をパスしよう」
探りあい……自分も貰えなかった情報を相手にも与えないという所か。
さて……教えることで彼女は何処までその数字を推測できるのか……
彼女が見えている数字は私も見えている緑木の裏のカードの『6』
『1』と『3』のカードは見えない。
『2』『4』『5』『7』のうち二つが見えている。
このうち『4』は……私の裏のカードか緑木の表のカードである確立が高い。
『2』『5』『7』のうち、一つか二つカードが見えている。
そして、この質問から読み取れること……彼女の目線から『2』は見えていない。
彼女の表のカードは『2』ではなく、私の裏のカードも『2』ではない。
『5』か『7』どちらか一つは彼女に見えている。
伏せられているカードは『2』か『5』または『2』か『7』のパターン。
もし、彼女から『5』と『7』の二つが見えているとすれば『2』がすでに確定している。
あくまで……確定証言ではない……確率論だ。
もう少しだけ様子を見よう。
「……いいえ……『3』以上よ」
ここまで、数字を導き出してくれたお礼……
それくらいは教えてあげてもいい。
さて、私の質問の番だ。
目を閉じる。
だが……恐らく質問した所で拒否されれば、
私もあの人たちと同じように自分の情報をばら撒くだけだ。
だったら……どうすれば彼らを惑わす事ができるのか……
目を開く。
「じゃぁ……私が質問するわ」
「貴方たちの見えるカードに『1』のカードはあるかしら?」
そう尋ねる。
さて……どんな反応をするだろうか?
もちろん、『1』のカードは私の手元にある。
だが……この言葉を鵜呑みにすれば、この場に『1』のカードは存在していない。
それは、伏せられたカードが『1』であると彼、彼女は誤解するであろう。
明らかに二人の目の色が変わる。
……単純ね。
そう心の中で呟く。
あら……レイス、彼女の方は少しだけ勘ぐっているようにも見える。
表情を読まれないように感心する。
「今回も……答えをパスしよう」
緑木が先に答える。
「私もパスします……」
レイスもそう答えた。
あら……残念。
黒瀬さん……貴方がもし私の作戦に気がつき答えていれば、その男を嵌められたのに。
「黒瀬さん……君に質問しよう」
この質問で答えに辿り付いたというように緑木がそうレイスに問う。
「……黒瀬さん、君が持つカードは『2』以上のカードか?」
ここでも彼が『2』の存在を否定する……
3人が否定したカード。
私の中ではほぼ確定しているようなものではあるが……
やはり確証では無い。
4枚のカードがそれぞれ何か……それがわかってこそ完全勝利だろう。
可能性として『1』では無いことさえわかればいい緑木は、見えている『2』を無視して質問している可能性としては0では無い。
「……質問をパスします」
さて……彼女はどうする……
明らかに『1』を探している質問であることを気がつかない訳ではあるまい。
となれば、彼の手元に『1』は無い。
であれば、あなたは……一つの答えに辿り付いた。
レイスの目線が……伏せられたカードに動く。
さぁ、どうする?
彼女は邪念を振り払うように、伏せられたカードから目線を戻すと、真っ直ぐ私の目を見た。
「……キョウカさん、貴方へ質問します」
……そうね。
「あら……なにかしら?」
質問の内容はわかっている……
「貴方の目から『1』のカードは見えませんか?」
こんな訳のわからないゲームに参加させられているという事を忘れ、少しだけ楽しくなってしまう。
「あはは、そうね……当然、その疑問は抱くべきね」
ここで見えてるって言ってしまってもいいが……
それは、私の表のカードが『1』だと確定してしまうことになる……
「その回答は……パスするわ」
もう少しだけ、疑心させておこう。
さて、あと私は……自分の仮説を確信に変えるだけだ。
「それじゃ、私から質問するわ……あなた達の見えるカードに『4』のカードあるかしら?」
そう尋ねる。
「私からは『4』のカードは見えません」
レイスがそう答える。
私の裏のカードが『4』である可能性が消える。
私のカードとレイスのカードは『5』と『7』
どちらが『5』でどっちが『7』かわからないが間違い無いだろう。
「質問の回答は拒否しよう」
最後の質問拒否を使い切る。
恐らく彼のカードは『4』で間違い無いとは思うが万全を整えよう。
「私から質問する……」
緑木から『1』のカードで周りが見えなくなった焦りが見て取れる。
「無槻さん、無槻さんから見た私の裏のカードと黒瀬さんの裏のカードを足したとき、その解は6以上になるかい?」
またも笑いそうになる……
自分にしかそこから導き出される解がわからないと、上手く質問を装ったつもりなのか?
お陰で彼のカードが丸見えになる。
彼のカードを『4』と仮定した場合
彼に見えないカード『1』『2』『6』『7』
レイスのカードは『3』……
彼の知りたいカードに『3』を足した場合、『4』『5』『9』『10』
彼のカードを『2』と仮定した場合
彼に見えないカード『1』『4』『6』『7』
これに『3』を足した場合『4』『7』『9』『10』
その数字から考えれば、緑木のカードは『4』以外には考えられない。
緑木は『6』以上の数字になるかを質問した。
『6』以下になる数字は『1』と『2』の可能性しかない。
これまでの話の流れを聞いていれば自分のカードが『2』ではないことくらい辿り着けるだろうが……恐らくそこまで推測ができていない。
先ほどの『1』に対する流れ……私に対してレイスがした質問……
『1』が私の目から見えるか?という質問に、自分の裏のカードにまだ『1』の可能性があるなんて考えないだろう。
ようするに……緑木に『2』のカードが見えているのなら『6』以上ではなく、『8』以上の数字で質問していた筈だ。
「6以上になりますね……」
私はそう答える。
間違いなく緑木にまだ……ほとんどの数字は見えていない。
「……わたしの裏のカードは『4』以上ですか?」
次にレイスがそう尋ねてくる。
緑木は顔を伏せ……
「回答を拒否する……」
即座にそう回答した。
気をつけるべきはこっちであろう……
ここで迂闊にヒントを与えれば答えに辿り着かれる可能性がある。
「……そうね、私も拒否するわ」
そう告げ……私は締めの質問をする。
万が一……彼女が答えなくても伏せられたカードはとっくに見えている。
「それじゃ質問するわ……貴方たちから見える私のカードは、貴方達の持つカードより上か下か……それくらいなら教えてもらえます?」
その私の質問に……
「………うえ……です」
レイスはそう答える。
「下だな……」
質問にパス権のない緑木も答える。
「……案外、つまらなかったわね」
私の心の声がこぼれた。
緑木のカードは『4』で間違い無い。
そして『6』のカードは見えている。
残るカードは『5』と『7』
レイスは自分のカードは『上』だと答えた。
ここまでくれば、小学生でも全てのカードの数を割り当てられる。
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キョウカは時間を遡るように……
自分からの視点のゲームの説明をした。
改めて思う……
この女は次元が違いすぎる。
スタート、一週目……自分の質問がまわる前に私達の質問だけで、仮説だったとはいえ……答えに辿り着いていたというのか。
全く勝負にすらなっていなかった……
私の敗北……
だが……ゲームの流れはギンと赤桐へと伝えられただろうか。
……しかし、それは他の人にも言えるであろう。
最初のこの試合より卑劣な騙しあいになるんではないかという……嫌な予感がする。
ギンや赤桐は何らかの攻略法を見つけられただろうか……。
「それじゃ、2回戦、始めるぜっ……3人、前に出なぁ」
仮面の兎が言う。
ギンが黙って前に歩き出す。
そして、丸眼鏡のマトウ ネネ……
担任教師のモモイ リカの2人も席に着いた。
私の時と同じようにテーブルの仕掛けが動き出し、3人へカードが配られる。
そして、2回戦は始まる。
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