通信。依頼先から。


「はい。私です」


『彼女は?』


「眠らせました」


『そうか。お休みのところすまんな』


「彼女のためなら。べつに。仕事は代わりに私が」


『いや、二人で行ってもらう』


「そうですか」


『官邸や管区の有象無象がごろごろしている街だ。こんな言い方はよくないが、まあ、今度こそ見つかるといいな。居場所』


「はい」


『本当は、おまえのとなりが彼女の』


 通信を切った。

 彼女の寝顔。安らかで、まるで凍ってしまったような。頬にふれる。暖かい。


「あなたが止まらないなら。私は。私も。あなたの隣で歩くわ」


 また今日が始まる。

 わずかばかりの眠りを残して。

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place 春嵐 @aiot3110

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