第3話 お仕事の内容
『次のニュースです。
昨日、
『海上に浮かぶ真円の島にそびえる大きな木。
と思いきや……これ、近くで見ると大きな鉄骨の塔なんです。
……』
スマホでニュース動画を見てみれば、中々にタイムリーな話をしてくれている。
昨夜、俺のところに来た黒スーツはN-TOLからの使いだったらしい。
10年程前から名を上げた会社で、ゲーム製作やアプリ製作等でヒットを飛ばす一方、環境貢献の名文で海上都市建設までやってる大手企業として有名だ。
だからかニュースのコメント欄には"優良企業アピール”だとか、"ゲーム会社はゲーム作れ”とか、決して好意的ではない意見が並んでいる。
言い返せば、それだけN-TOLの製品に皆期待しているということなのだろう。
そんな大会社が俺にスカウトをして来た。
なんで? って当然思ったが男の話を聞くに一応納得出来るものだった。
「ワタクシこういった者でして……」
お決まりの台詞で渡された名刺には
N-TOLの総務部人事課人材スカウト係、らしい。
「実は新開発のゲームのテストプレイのようなことをやって頂きたく、人員を募集しておりまして。テストプレイは長期に渡って実施して頂くことになりますので、失礼ですがこうして現在特定の職業に就いて良いない方にお声がけさせて頂いているのです」
「テストプレイのような……デバッグってことですか?」
「それもあります」
「それも……?」
「機密情報が多く、現時点では話せないことが多々あります。詳細をお話しするには口外しないことをお約束頂く誓約書を記載頂くことになっておりまして……もしご興味をお持ち頂けたのであれば、先ほどの名刺にある番号までご連絡頂ければと」
そんな感じで男は言うだけ言って帰って行った。
さすがに怪しんだが、スマホで調べると男から貰った名刺の番号は確かにN-TOLのもので間違いなかった。
「電話……してみっか……」
現状無職でこの後やることも決まっていない。
仕事のスカウトにわざわざ来てくれたのはそれだけで有り難いし、最近やっていないとはいえゲーム事態が嫌いになったわけじゃない。
今は肩や手の痛みも落ち着いたし、でも長時間はやっぱり厳しいか……
「話だけ聞いてみよう……」
口外しない事を約束すれば、話を聞いたところでやらなきゃいけなくなるわけじゃない。
相手は大企業。
俺に拘る理由なんぞないだろう。
条件が合わなければ断っても、「では、さようなら」で終わるだろうし。
「よし……」
名刺を見ながらスマホで電話をかける。
『はい、N-TOL人事課人材スカウト係です』
3回目のコールで出た女性の声に、名乗ってみれば話は早かった。
『では、いつ頃ご来社頂けますでしょうか?』
「いつでも」
『では明日の10時では如何でしょう?』
「あ、大丈夫です」
『では、明日の10時で。交通費はこちらでお支払い致しますので、公共の交通機関をご利用の際は領収書のお受け取りをお忘れなきようお願い致します』
「承知しました。では、失礼します」
『はい、失礼致します』
◇◆◇◆◇
遠くへ早い時間に行くなら車より電車の方が良い。
道の渋滞具合が解らないから。
愛車を駅の近くの駐車場に停め、電車に揺られること1時間ちょっと。
スマホのマップに従って歩くこと15分。
「でけぇ……」
見上げる程に高いビルに気圧されながら、そのビルへと歩を進める。
入ってすぐにある受付に名前を言うと、話は伝わっていたらしく、すぐに客用の入場証兼カードキーを渡してくれた。
「このカードキーで右手のゲートを開けて頂き、エレベーターで2階までお上がり下さい。エレベーターから左に行きますとB会議室がありますので入ってお待ち下さい。すぐに担当の者が参ります」
受付に言われた通り進む。
「こちらへどうぞ」
エレベータが開くと女性が一人。
女性の後ろに受付があるから、多分1階の受付が連絡したのを受けて案内のために待ってくれていたのだろう。
流石大会社。
前の会社ならあり得ん。
とにかく人件費節約って煩かったし。
受付に促されるまま、会議室の椅子に座る。
時間は9時55分。
丁度良い時間だ。
「お待たせしました」
受付が用意してくれたコーヒーを啜っていると、予定通りの10時丁度に会議室のドアがノックされ、男が入ってきた。
一昨日俺のところに来た黒原だ。
「本日は御足労頂き、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ……」
お決まりの挨拶を終え、早速要件に入る。
「それでゲームのテストプレイということなんですが……」
「ええ、実は現在開発中のものでして、まずはこちらの誓約書にサインを……」
一応目を通す。
内容は確かにここで見聞きしたことを口外しない事を約束するものだ。
口外した際には賠償金の支払いを求める場合もあると、結構厳しめの内容になっていた。
まあ、話さなきゃいいだけだから、そこは良いんだけど。
話す相手もいないし。
そう思って誓約書にサインをし、黒原に渡すと、黒原は会議室のモニターを起動した。
「それではお仕事の内容に関してですが」
「あ、すいません。質問は随時でよろしいでしょうか?」
「ええ」
黒原がそう言いながら映し出した内容。
それは驚くべきものだった。
折角確認した質問をすることが出来なかった位に。
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