第4話すべての始まりはここから
母さんは車を運転する。
「母さんの運転久しぶりだね」
僕は内心ドキドキしていた。
「大丈夫よ、人も少ないし、なんならかっ飛ばしちゃおうかしら」
「スピードは守ってよ」
沙夜がぽつりと言う。相変わらずスマホとにらめっこだ。
「冗談よ、まぁ今日は引っ越し祝いにすき焼きでも作ろうかしら、それにしてもあのアパート全然人が住んでいないわね」
「そうなの?」
「ええ、引っ越しの挨拶にまわったんだけど、誰も出てこなかったのよ。もう夕方だし、誰かしらいてもいいと思うのよね」
「表札とかなかったわ、多分だれも住んでない」
「あら、そうなのかしら、沙夜よくみてるわね」
「母さんがみてないだけよ」
「でもまわりを気にしなくていいのは気楽でいいね」
僕は呑気に言う。
「着いたわ、あそこが私たちの命綱ね」
スーパーをみつけて、母さんは大袈裟に言う。
スーパーには人がぽちぽちといた。
久しぶりに人を見た気がする。
「あら、野菜とお肉が安いわ」
母さんのご機嫌な声が聞こえる。
ひとしきり買い物を終えるとまた僕らは車に乗って帰ろうとした。
すると一人の老婆が話しかけてきた。
「あんたたち見ない顔だね」
「はい、私たち今日越してきたんです」
「そうかい、まぁ色々と気を付けな」
にこりと笑って老婆は去っていく。
「薄気味悪い」
「沙夜、失礼よ」
「なんだか不気味だよ、母さん。早く帰ろう」
「そうしましょう、早く帰って夕飯の支度をしなくちゃ」
僕はあの老婆の言葉が気になって仕方がなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます