第5話最初の死体

「よし、着いたわよ」


「母さんスピード出しすぎだよ」


「ふふ、久しぶりの運転でテンションあがっちゃった」


「お陰で何回もゲームオーバーになった」


ぶつぶつと沙夜が文句を言う。


「さ、あなたたち荷物を持つのを手伝って」


僕たちは買い込んだ食料をもって三階の部屋まで階段で上がった。


母が鍵を探す。


「あれ?どこかしらポケットに入れたのに」


「鍵…開いてる」


沙夜がドアノブを動かす


「え、鍵は閉めたはずだよ」


「お父さんが気づいて開けてくれたのよ。さすがお父さん」


ぼくたちはとりあえず、買い物袋を玄関に置いた。まずは手洗いうがいだ。


「ただいま、とうさ…」


僕は目の前の光景が理解できずに立ち尽くした。


僕が歩みをとめたことで、沙夜と母さんが僕にぶつかる。


「ちょっと、何立ち止まって…」


「いやぁぁぁぁぁ」


母さんが悲鳴を発する。


僕はとっさに沙夜にみせないように背中を向けて抱きつく。


イスには首から上のない父の死体が座っていた。


その後沙夜は冷静に警察を呼んだ。


僕はパニックになる母さんをなだめるので精一杯だった。


しばらくして警察がきた。


無精髭をはやした古くさい刑事だ。


「ちっ、またおきちまったか」


また?どういうことだ。


「で、被害者の状況は?」


刑事は部下に聞く


「被害者は今日ここに越してきた、南川純平42歳。家族が外出から帰宅したあと首を切断されていたとのことです」


「そうか、じゃあ自殺だな」


えっ?


「ちょっとまってください、首を切断されていたのに自殺なわけがないでしょう、ちゃんと調べてください」


「奥さん、旦那さんに何か悩みはあった?」


母さんはパニックになってそれどころではない


「じゃあ、お嬢ちゃん。君はなにか知らないか?」


「いい加減にしてください、これは殺人ですよ、自殺な訳がない、調べてください」


「わかった、わかった。とりあえず、お父様は我々が連れて帰るから、現場はこのままにしといてくれ」


刑事たちは足早にさってしまった。


廊下には父の血が残っている。僕は先程の光景を思いだし急いでトイレに向かい嘔吐した。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


「はぁはぁ、沙夜、お前は大丈夫なのか?」


「怖いよ、怖いけどお父さんは戻ってこないんでしょう」


沙夜の冷静さに言葉をうしなったが、遠くからは念仏のように壊れた母さんの声が聞こえる。


何かが狂い始めている。




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