第20話 再会 その7


───現在 居酒屋


「はぁ。はぁ」


大広間の扉を開け、息の上がった状態で辺りを見回す松咲花。


「あれ?いない・・・」

「かんなのことか?」

「うわ!・・・中村くんですか」


そんな彼女に声をかけたのは、スマホを片手に持った中村拓だった。


「かんなはまだ来てないんですか?」

「いや、もう帰ったよ」

「え?」


スマホをポケットに仕舞い、元の席に戻る拓。

すると、その隣にいた徹が、立ち竦む花に向けてこう続けた。


「はじめちゃんが酔っ払っちゃったから、介護を頼んだっしょ」

「全く世話のかかる奴だよ。かんなが海外留学に行ってた時の成人式は頑なに来なかったのに、今日は二言返事で来るんだもんな」

「はじめちゃん可愛いとこあるよねー」


拓と徹が酒を酌み交わしながら、はじめのことを愚痴り始める。


「『いつまでもあると思うな、親と金と女房役』ってな」

「たくみん。どういう意味っしょ?」

「俺の役目はもう終わりってことだよ」


拓の言葉に、徹は無数のはてなマークを浮かべて、首を捻った。


「そう・・・ですか」


拓と徹の会話を聞き、安堵と寂寥が入り混じったような声で、花が呟く。


「花久しぶり〜・・って、どうしたの!?」

「何かあった?私たちで良かったら話聞くよ!」


花の異変に気付いた旧友が、心配そうに声をかける。


「あれ?なんで?」


その声で、花は自身の目から涙が流れていることに気が付いた。


涙をスーツの袖で拭い、旧友たちに顔を向けると、花はこう告げた。


「いえ。たった今、解決しました!」



涙という名の水を得て、少女の花は咲き誇る。


誰よりも華麗に。誰よりも力強く。

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