第16話 再会 その5
10年の時を経て、昔の知り合いたちが再会を果たす中。梅月松竹と睦月王春は山を登っていた。
「全く。せっかくの休みだってのに、なんで俺は山なんて登ってんだ・・・」
「ごめんね、しょう。どうしても役作りしたくって」
以前より歯切れの良くなった王春の言葉を聞き、「ったく。まあいいけど」と呟きながら、松竹は王春の背中を追いかける。
「着いた。見て、しょう」
「お〜。いい景色だな」
やっとの思いで山頂に辿り着いた2人が、そこから見える景色に息を呑む。
「しょう。先生の仕事はどう?」
「そうだな。大変だけどやり甲斐のある仕事だよ」
「そっか」
「そっちも忙しそうだな」
「そうだね。でも楽しいよ」
「そうか」
景色を眺めながら、近況を言葉に乗せて交換し合う。
「そういえば、徹たちは今日同窓会らしいな」
「へー、そうなんだ」
「合同野球部。懐かしいな」
「そうだね」
あの頃のことを思い出しながら、懐かしむように言葉を紡いでいく。
キャプテンとエース。先生と俳優。
肩書きは変わっても、変わらない『何か』が、そこには確かにあった。
「ところで今度の役は登山家かなにかか?」
「ううん。青春映画の主人公だよ」
「ん?山は登らないのか?」
「うん。都会の高校生役だね」
「・・・・・」
「・・・・・」
ふたりの間に沈黙が生まれる。
「じゃあなんで山登ったんだよ!?」
「『青春は体力が大事』って台本に書いてたから」
「どこからツッコめばいいんだ・・・」
いつまで経ってもどこか抜けたところがある幼馴染に、松竹は呆れたように笑みを溢した。
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