第10話
「それじゃあシュート練習に切り替えようか」
「え!?」
「バスケにはスリーポイントシュートっていう必殺技があります」
「必殺技かどうかはわからないけどそれくらいは知ってるよ」
「ボールを手にしたら即シュート。それで点が入る。活躍した風になる」
「それにドリブル練習だと
「な……っ! それは俺のせいじゃない。
墓穴を掘ってしまった。あまり意識しないように努めていた
「なんで男の子ってそんなにおっぱいが好きなの?」
「なんでって聞かれても……いつの間にか興味を持ってたから」
「ふーん」
改めて聞かれると本当に不思議だ。いくら天使のように可愛い
ネットを検索すればもろなおっぱいどころか生まれたままの姿の成人女性の姿で見られるのに、こんな中途半端にしか見れない
「まずは私がお手本……になるといいな。やってみせるからマネしてみて」
それと同時に胸にある二つのボールも上下に揺れたのを俺は見逃さなかった。
「
「はい」
「女の子ってね、おっぱいへの視線に敏感なの」
「そうなんだ」
そんなことは百も承知だ。こんなに近くで
「今日ここに来たのは何のため?」
「
本当の彼氏じゃないからどうしようもできないし、先に進むにはどうすればいいかもわからないし度胸もない。
そんな自分の不甲斐なさを思うとせっかくのやる気がまた下がっていく。
「それじゃあもう一度お手本見せるから。今度こそシュートを見るように」
「……はい」
なんてことを考えたいたら鼻がむずかゆい。
ダメだ! 今シュートを見てろって言われたばかりだろ……はっくしょん!!!
大きなくしゃみが公園に響き渡り鳩の群れが飛びだっていった。
それなのに、
「どう? 私のが完璧なシュートかはわからないけど、まずはこの形を目指してみて」
「ごめん……シュートの瞬間にくしゃみしてよく見てなかった」
「え? くしゃみ? いつ?」
「気付いてなかったの?」
「ごめん。集中すると周りが見えなくて……って、
ート見てなかったの!?」
あのくしゃみに気付かないなんてすごい集中力だ。
おっぱいへの視線は気付いて、くしゃみには気付かない。
「わかった。もうこうなったら最終手段」
「ひえ!」
「……もし綺麗なシュートを決められたら、……っていいよ」
「え? なに?」
「もし綺麗なシュートを決められたら、……っていいって言ったの」
「綺麗なシュートって具体的には? 普通のシュートじゃダメなの?」
普通のシュートすら入るか怪しいのに『綺麗な』なんて抽象的な条件じゃ絶対にクリアできない。あと、後半部分がよく聞こえない。
「なんかこうシュって、がむしゃらな感じじゃなくて余裕でゴールに入ったらクリアよ」
「わかったようなわからないような。それでクリアしたら何だって?」
まるでキスでもされそうな勢いで顔をグイっと寄せてきたかと思うと、
「綺麗なシュートを決められたら、おっぱい触っていいよ。ってさっきから言ってるじゃん」
「ふえ!?」
耳に息が掛かるのと発言内容の突拍子のなさに動揺した美少女キャラみたいな声を上げてしまった。
この声に驚いたのか
「な、な、なんでそんな話になるんだよ」
「だって、そうでもしないとちゃんと練習してくれそうにないから」
「そこまでして俺にバスケの練習をさせたがるのはなんで!?」
俺が彼氏の練習台になっているの秘密だ。つまり、俺がどんなに
「私が求める最高の彼氏は運動も勉強もできるの。だから練習台である
「それでおっぱいで釣ろうってわけか。さっきまであんなに連呼してたのに急に恥ずかしがるし、訳がわからん」
「だから
「えぇ……」
おっぱいを触らせてもらう一歩手前まで親密になったのかと思いきや、モテないとバカにされた。女の子の心理状態マジで難しすぎる。
「ほら、本当の彼氏ができたら、死ぬ前に一度はその……してみたいじゃない。女の子だってそういう欲求はあるし。その練習も兼ねて……みたいな?」
公園でおっぱいと堂々と発言していたとは思えないような
中3の時点ですでに初体験を済ませたやつがいるという噂はクラスメイトの会話を盗み聴……声が大きくて勝手に耳に入ってきたことがある。
今の
全てにおいて
「まあ、その、ここまで来て何の練習もしないのはもったないし、シュートくらいは頑張ってみるよ」
シュート練習ならそんなに走らなくていいし、うまくいけば初おっぱいのチャンスもある。これを逃すわけにはいかない。
「うぅ……失敗した。なんでこんな約束を……。私は応援すればいいの。それとも成長しないように祈った方がいいの……」
「ごめん……あの約束、無理しなくていいよ」
青い顔をした
「ううん。覚悟はしてる。男の子を魅了するために私はこの体を育ててきたんだから!」
「自分で育てられるものなんだ」
世の中には貧乳で悩む女性も多いと聞く。努力ではどうにもならないことがあるんだと思ったものだけど。
「運も良かったかもね。お母さんも大きいから」
「
「そ、そんな。さすがに歳の差もあるし」
でも美魔女って本当に綺麗だよな。見た目は若いのに半端ない包容力を兼ね備えてるし。
興味本位で検索してヒットした美魔女のことを思い浮かべた時、俺の脳内にある閃きが降ってきた。
「
高校生をピークだと考えてるみたいだけど
「それはないわ」
はっきりキッパリ断られてしまった。
「たしかにお母さんは同年代に比べたら綺麗だと思う。それは間違いなく自慢できる。だけど、大人になって夫婦とか子供とか、いろんなしがらみができると簡単に死ねなくなる。死ぬことで少なからず迷惑は掛けると思う。それも考慮してやっぱり高校生がピークなのよ」
やっぱり
「ほら、辛気臭い話はやめにして練習練習」
自分のおっぱいを天秤に掛けているとは思えないほど積極的に練習を促す。
「はぁ……参りました。真面目に練習するよ。その、おっぱいは無理しなくていいから」
『無理しなくていいから』というのは、可能なら触らせてくれという意味である。
決して自分からこのチャンスを手放さない!
「よーしやるぞー」
棒読みで気合を入れてボールを手に取る。左手は添えるだけ。ってことは右手の力だけで投げるんだよな?
ポイっと投げたボールはゴールに全く届かず虚しく転がっていった。
「私のおっぱいは無事に済みそうね」
「本来の目的はバスケがうまくなることだからね!」
「今日の練習では100点満点中70点くらいを取って、明後日の仮入部で謎の覚醒を遂げて120点を叩き出すのが理想ね」
「それ主人公にしか許されないやつじゃん! 俺には期待できない展開だよ!」
どれくらいの時間が経っただろう。何度も何度もシュートをするも結局一度もゴールを揺らすことはなかった。
そんな俺の姿を見て
俺は
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