第7話
その夜、
【明日、
【駅で待ち合わせ?】
【そう。そこから歩いて近所の公園まで行くから】
いつも東京方面の電車に乗るので学校とは反対側。結構通学に時間を掛けてるんだな。
【時間は】
【9時でいい?】
【たっぷり練習しなきゃだし】
【ガチなやつじゃん……】
【ガチで練習しなきゃ意味ないよ】
さすが努力の人。この妥協しない姿勢が
【わかりました。9時に
隣の席に座る同級生だけど成績もヒエラルキーも
明日は早起きしなければならないのでもう寝ようかとも思ったけど、
【毎日学校まで行くの大変そうだね】
用件は済んだけどメッセージのやり取りなら人の目を気にしなくていいので何となく話を広げてみる。
【そうなの!】
【毎日ぎゅうぎゅうの電車だし】
【ハァハァ息の荒いおじさんはいるし】
【最悪!】
立て続けに通学電車の不満を爆発した。おじさんにハァハァされることはないけど満員電車がキツイのには同意だ。
【もっと近くにも偏差値の高い進学校あるでしょ?】
【なんでそっちにしなかったの?】
同じ中学の人が居ないのは俺もだけど、それは単純に通っていた地元の中学が荒れていたので偏差値も低かったからだ。
もちろん真面目に勉強してたやつもいるけど別の進学校に通っている。
今思えばあいつらと仲良くなってたらまた別の人生が待っていたのかな。
【私が電車に乗ることで、私の存在を知ってくれる人がいる】
【毎日見かけていた女子高生がある日を境に居なくなったら】
【悲しんでくれると思うから】
【それは最高の死のため?】
【そう】
迷うことなく即答された。
【前も言ったかもだけど別に死ぬことはなくない?】
すぐに既読になった。だけど返信はない。一言で返事ができる質問ではないし。
【私のピークは高3、18歳の時】
【若さを失ったらどんどん劣化していく】
【勉強もスポーツも努力では周りに追い付けなくなる】
【私は18歳で最高の死に方をするためにずっと準備してきた】
たった一週間だけど
俺からしたら充実した学校生活を送れそうな
【そっか】
一言だけ返信した。それから数分。もう会話は終わったと思ったその時、新着を知らせる音が部屋に響いた。
【彼氏の練習相手を
【明日はバスケの練習頑張ろうね】
あと2年ほどで死ぬ予定とは思えない前向きなメッセージが届いた。
動機は歪んでるけど、それでも、女の子、いや、彼女からこんなことを言われたらヤル気が出るのが男子高校生って生き物だ。
最高の彼氏ならここで気の利いた一言を返すだろうけど俺はただの練習台。
ひとまずここは既読を付けて、明日に備えてもう寝ることにした。だって俺は最高の彼氏じゃないし。
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