第3話
教室に戻ると
そうなると当然俺の席は名前もまだ覚えていないクラスメイトに使われていて……。
「まいったな」
つい独り言が漏れてしまう。休み時間が終わるまであと1分ほど。トイレに行く時間もないし、廊下でうろうろするのも精神的にキツい。
「あ、
声の主はさきほどとんでもないモノを見せてしまった
「え……あ、俺?」
「
まさかさっきの件をここで暴露して俺の高校生活を完全終了させるわけじゃあるまいな。
そんな考えが脳裏をよぎりつつも、ここで無視したらそれこそ高校生活が終わるので恐る恐る返事をする。
「な……なにかな」
こいつら勉強もできて可愛いとかチートかよ。
「ねえねえ、天使ちゃんとコイツって知り合いなの? 塾が一緒だったとか?」
「ううん。さっき会ったばかりだよ」
よく知らないとは言えクラスメイトなのにコイツ呼ばわり。やっぱりモテそうな女子は恐い。
そんな女子の中心にいる
いかんいかん。思い出したら興奮してきた。
「? どうしたの?」
「なんでもないよ。ところで何か用?」
キーンコーンカーンコーン
用件を聞こうと思ったところで休み時間の終了を知らせるチャイムが鳴った。
中学校に居たギャルっぽいのはチャイムなんておかまいなしでだべっていたから、この点に関しては進学校に来たかいがあったらしい。
「ごめん。またあとでね」
男子トイレで何も見てないような、それこそまるで別人のような天使スマイルを見せてくれた。
そもそもあれだ。男子トイレに入ってきた
俺は
『私、本当に不器用で初めてのことは絶対に失敗するのよ』
初めてあんなことをしたから失敗した。俺にマウントを取りたくて見栄を張っただけ。
一瞬ビッチ説が浮上したがやっぱり天使は天使だった。
何も知らない
練習相手だっていいじゃないか。普通に過ごしたら何もない高校生活に舞い降りたこの奇跡。存分に堪能してやる!
ふと左に座る
視線はあくまでも黒板。相手に悟られないようにチラリとだ。
鼻筋が通っていて横から見ても美しい。それに胸の膨らみも横から観察することでそのサイズを推し測ることができた。
とても手の中に納まりそうにないボリューム感。しかし、だからと言って大きすぎるわけではない。
ちょうど手にフィットするのだ。俺の本能がそう告げている。おっぱいをエロいと思うようになってからおっぱいを揉んだことなんてないけど。きっとそうなんだ。
そんなことを考えていると
バレた!?
俺は意識を黒板に集中させる。男子トイレでの出来事は共通の秘密になるとして、ホームルーム中にチラチラ観察してるのがバレるのはマズい。クラス中の女子を敵を回すことになる。
額にじんわりと嫌な汗をかくのを感じた。落ち着け俺。まずは
煩悩を滅して再び視線を左へと移す。すると次の瞬間
「はい。私と
静まり返った教室の中で声を上げるほど俺は未熟じゃない。
どんなに驚いたとしてもそのリアクションをグッと押し殺して陰に徹するのだ。
なんていうのは建前で驚き過ぎて声も出せないし身動きも取れなかった。
これではまるで調教された犬だ。
「えーっと、立候補はありがたいんだけど、
「え? あ、は、はい」
担任の浅倉先生に話を振られて何も考えずに返事をしてしまった。
浅倉先生は独身だと自己紹介で言っていた。それにも関わらずどこかママみを感じる。うっかり『母さん』と呼ばないように注意が必要だ。
「では、クラス委員は
何の意味かわからないが教室内に拍手が巻き起こる。
は? クラス委員?
「1年間よろしくね。
「んん?」
どうやら俺は陰の者には似つかわしくない。あるいは無理矢理押し付けられるクラス委員のポジションを手に入れてしまったらしい。
この場合は押し付けられたと言っていいのかわからないけど、
同時に殺意を覚えるような視線を感じる。
面倒なクラス委員とは言え天使と一緒に居られる時間が増えるんだからそりゃそうだ。
自分の意志で立候補したならともかく、
ホームルームが終わったらどんな仕打ちが待っているのか考えるだけで恐ろしい。
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