第330話わしはここで一休みしようじゃないか。

  やけにパワフルなようにと伝わって来ては、心臓を軽くノックしているような声と言葉を、自分に向けて来た爺さんに飽きれてしまいそうに感じつつ、そんな精神論でどうにか人生を上手く過ごせていけるのなら、人類には自分のような酷い思いを残される奴もなくなるのだろうなと、心の中で呆然と爺さんの話を聞いて行きつつ、まるで自分の言動を抑えに来るような左側のポケットに入れていたパンの存在に微かに苛立ちを覚えながら、軽く歯を噛んでは、老人である爺さんに逆らっても、ただ惨めな自分を更なる窮地に追い込めては、より格好悪い奴にするほかないんだと思ってしまう野黒新、自分にやけに期待しているような眼差しを向けに来る爺さんに弱らされては、思わずため息を吐いてみたくなってしまう彼は、世界には自分の居場所はないんだと、ぼんやりと考えては、携帯電話に言わせていき、『何とか…頑張って見るよ。』


  孫が何とか元気になっているような振りをしてくれては、ちゃんと立ち直るまでの一歩を踏み出してくれていたことに、口角をくすぐられているような気がしてならないでいる爺さんは強く右手にあるビニール袋を握っては、何度も首を縦に振っていく、「よろしい、それじゃ、」ゆっくりと胸元をドアの方向に向けて行きながら、急いで昼飯を用意していかないとと強く考えている爺さんは、ゆっくりと上手く伸ばすことができずにいる両足をドアに向けて踏み出していた、「わしはもう野菜だの、豚肉だのを買って来るから、」軽く口角を上げては、両膝が空っぽになっているように、上手く自分の山を抱えているようにと感じさせに来る胴体を、支えることが出来ずにいるような気がしては、思わず老いれていく自分の体に苦笑いして見たくなる爺さんは、潤んでいる琥珀色の瞳で自分の少しばかり狼狽な姿を映し出して来ている野黒新の瞳を見つめていき、「お前はそこでしずく君への返事でも考えていろ?」


  爺さんの歩いていくと、微かに戦慄しているようにも見えて来る灰色のズボンに、心臓を縮められているように感じては、爺さんの辛く歩いている姿に体を引かれているように感じてしまう野黒新は、大慌てで左手を彼が握っていたビニール袋に向けて伸ばして行きつつ、右手にある携帯電話を弄っていく、『俺が買ってくるよ。』「ほほぉ…?」野黒新が自分に投げて来る微かに意外にも感じてしまうと同時に、当たり前のようにも思える話に眉毛を微かに跳ねらせているように感じては、まったりと自分の右手にあるビニール袋を受け取っていく彼の様に微笑んでいく爺さんは、ゆっくりと左手の親指を彼に向けて立てていた、「殊勝な心掛けじゃないか。」


  またしても軽くピンク色の舌を吐き出して来ては、自分に可愛くアピールしに来るような爺さんの様に困らされているように感じつつ、急いでいるようにと手にあるビニール袋をポケットに突っ込んでは、両手で携帯電話を抱えていく野黒新、『流石にいつまでたっても、』爺さんの立っているのは、酷く疲れているようにも感じさせに来る戦慄している両足に、心を抉られているような気がしてならないでいる彼は、思わず強く歯を噛んでしまい、『爺さんにそんなことを全部抱えさせるのは申し訳ないし…』携帯電話から上げていく平坦な声に困らされては、もう少し爺さんに自分は本当は滅茶苦茶彼のことが気に掛けていて、心配しているんだと言うニュアンスを言葉に込めて行きたいと願ってしまう彼は、軽く歯を噛んでは、落ち込んでいるようにと眉間に皺寄せていき、『心臓だって…』


  「あはは、」両膝が外側に向けては何とか体を上手く支えて行こうと強く考えつつ、孫が自分に向けて来る酷く弱っては、老い耄れた自分を憐れんでくるような姿勢に、口角を微かにくすぐられているようにと感じてしまう爺さん、「良いってことよ、」まったりと首を横に振って行きながら、自分は長く生きていけないのであろうと心の中で思ってしまう爺さんは、ぼんやりと霞んでいく視野の中で野黒新の瞳を見つめていき、「わしはもうこんな年だからのう、」弱っているようにと軽く首を傾げては、彼の瞳を凝視していく爺さんはぽつりと声を発していた、「いつ逝ったって構わないぞ?」


  朗らかなまでに死を受け入れようと語って来る爺さんの態度に、口角が斜め下の方向に向けられているように感じつつ、思わず苦しそうにと強く歯を噛んでしまう野黒新は何度も鼻翼に力を入れていき、『そんなことを言わないでよ…』呆然と傷心に霞まされているような視野の中で、爺さんの弱っているようにも見えて来る胸元を探していた野黒新、悔しそうにと強く右手を握っては、もし人間には心臓がいなかったらと、有り得ないと知りながらも、心臓に喧嘩を吹っ掛けて見たくなっている彼、『どうして…心臓なんてもんがあるんだろうか…』


  微笑んでは、野黒新が自分に向けようとする言葉をぼんやりと待っていた爺さん、携帯電話から伝わって来る自分の心をくすぐりに来ているような言葉に、口角を軽く上げられているように感じては、ゆっくりと胸元を彼に向けたままで歩いていく爺さんは、ぽつりと渇いた唇を開けていき、「それは、人間によりこの世界の素晴らしさを知る為に。」”ドクンー”刹那、まるで演技をしに来るような、酷く神々しい声色で自分に話を向けに来ていた爺さんの声色に、眉毛を跳ねらせているような気がしてならないでいる野黒新、「え?」


  まったりと目を細めては、彼に他愛のない話を向けている自分の姿勢に、見開かされている様を見つめていく爺さんは微笑んで言う、「我が儘で、勝手な神が人間に与えていたものさ。」宛ら慈しみに満ちているような眼を自分に向けてくれては、ちゃんと自分の顔を映し出して来ているのに、何処か遠くを見据えているような気分に感じさせに来る爺さんの豹変してはいないけれども、酷く自分の存在を凌駕しているようなオーラを感じさせに来る様に戸惑っては、ぼんやりと眉毛を顰めていく野黒新、『爺さん…?』


  まるで自分の少しばかり真面目に人なら馬鹿にするような話をする態度に、萎縮しているようにと肩を縮めていく孫の様に心がくすぐられているように感じつつ、可笑しそうにと軽く右側の口角を上げていく爺さんは、まったりと左手の人差し指を立てては、彼の胸元を指差していた、「その心臓で、いいものを感じていくのもいいし、悲しんでもいい。」流し目で漠然と白皙の皮膚に包まられていた喉仏を上下にして行く孫の霞んでいたような、暗闇に飲み込まれていく眼を見つめてしまう爺さんは言う、「そのどっちもが、」ゆっくりと左手の人差し指を落として行きながら、彼の魂がいつか救われる事を心の底から祈ってしまう爺さんは、残念そうにと微笑んでいく、「神が人間に感じて欲しいものさ。」


  爺さんが急に昼ご飯の食材から神が人類を作り出していた訳を語りに来る様に、あんぐり口を開けられているように感じつつ、あまりにも幅の限界を破いたくらいに広い話に絶句されては、面白さをやや超えているような話題に苦笑いして見たくなってしまう野黒新は、まるで自分にふざけるような話を向かせないでいるような、爺さんの滅多に見かけない本気の眼差しに困らされては、ごくりと固唾を飲み込んでいく彼は軽く両手にある携帯電話を弄っていた、『深すぎて分からないよ…』軽く歯を噛んでは、そもそも世界は本当に神に作られていたのかどうかすら分からないのにと、爺さんに文句を向けてみたいと思ってしまうと同時に、もし本当に神が存在すると言うのなら、どうして自分だけではなく、春菜のような善良で優しい女の子まで酷く苦しむのかと、神に向かって叫んで見たくなっている彼は悔しい思いを噛みしめて行きつつ、携帯画面を弄っていき、『どうして楽しい世界を作らないんだ、神って奴は…』


  携帯電話から自分に向けて来ているような一言に、目を細められているように思いつつ、まったりと目線を天井に向けていく爺さんは、ゆっくりと空気を吸い込んで言う、「そりゃ、楽しいことしかいないのは、」軽く口角を上げては、自分に彼が適当にも思えるくらいに紡いだ問題を、本気で知りたがっているような様を見ていく爺さんは微笑んでいた、「非常に恐ろしいことで、世界が成り立たなくなってしまうとまでは行かないけど、」まったりと視線をサイドテーブルの上に置かれていた画帳と手紙の群れに向けていく爺さんは、切なげに呟いていき、「絶対今のより悲しいことになるのだろうな。」


  爺さんが真面目に自分が紡いだ誰もが答えを知れるはずのない質問に、返事を向けてくれていたことに驚かされつつ、眉毛が微かに跳ねらせていたような気がしている野黒新はつい、爺さんが自分が携帯電話に言わせていた質問に向けていた返事が気になり、困惑気味になってしまう彼はぼんやりと微笑んで見せて来るような爺さんから、目線を携帯画面に向けていた、『どうしてそう言い切れるのよさ…?』


  ゆっくりとソファーに向けて歩いて行きながら、自分に目線を固定されているようにと、自分の横顔を見つめて来る野黒新の琥珀色の瞳に一瞥していく爺さんは言う、「毎日めちゃくちゃハッピーな気分に慣れてしまうと、」自分の紡ぐ言葉に困らされては、漠然と眉毛を顰めつつちゃんと話を聞いてくれているんだぞと、語って来ているようにと何度も頷いて来る彼から目線を黒いソファーに向けていく爺さん、「それこそ自滅する行為だからね。」


  「え…?」爺さんが自分に語って来る天国のような存在でしかいはずの世界観が、酷い地獄のようにと語ってくる姿勢に戸惑いつつ、彼の考え方に少しばかり興味を引かれているような気がしてならないでいる野黒新は、ぱちくりながらまったりと背中をソファーに向けていく爺さんの目を瞑っている様を見つめていく。「考えてみ?」ゆっくりと長く立つと少しばかり痺れているように感じては、体がやけに重たくなっているような感覚を癒していくようにと、臀部をソファーに掛けていこうとする爺さんはぱちくりながら、自分の顔を見つめて来る琥珀色の瞳を凝視していき、「普通に暮らして行けた時はハッピーだとは、」チラッと視線をサイドテーブルの上に置かれている野黒新の思い出の群れに一瞥してしまう爺さんは、ぽつりと声を発していた、「今になると思わない?」


  爺さんが酷く人生のスランプに陥っては、抜け出せるようなビジョンがまったく見えやしないでいる自分に語って来る、過去の自分が何も出来ないままで英雄になれると、自惚れては、幼き日の春菜に何度もヒーローになると言い放った日々を思い出していくと、確かに普通に暮らして行けてて、両親を無くすことも無ければ、自分の未来に酷く夢を抱えては、春菜を癒していけるような想像をして行けるような過去の自分は、酷く幸せな時間を過ごせていたようにと感じてしまう彼はごくりと固唾を飲み込んでは、ぼんやりと渇いた唇を開けたままで頷いていき、「ああ…」


  軽く両手を握っては、両腕を太股の上に置いていた爺さんは、ぼんやりと佇んでいる彼の眼に淡い笑みを浮かべて言う、「けれどそれはお前がそのようなドラックを決めたような楽しい日々を過ごしていないからであり、」自分が急に少しばかり危険な話をし始めていたことに、不満を覚えているようにと繊細な眉毛を顰めていく彼の瞳に微笑む爺さん、「もしより素晴らしい快楽を得て仕舞ったら、」ゆっくりと目線をサイドテーブルに向けていく爺さんは、心を通っていく憂いに苦笑いして見たくなりつつ、今更彼にこんな話をしたって意味のないことなんだと考えてしまう爺さんは、微かに沈んでいるような声を発していた、「その今のお前が幸せだと思っている時間も、」自分が言葉を紡いでいくことに緊張をしているようにと眉間に皺寄せたままで、軽く両手を握っている野黒新のごくりと喉仏を起伏させていた姿勢に向けて、口角を上げていく爺さんは流し目で彼の顔を見つめていく、「それと比べると大して楽しくなくなるのだろう?」


  「はぁ…」爺さんが自分に向けて来る当たり前のような話に困らされては、ドラッグに手を出して仕舞ったら誰もが普通の暮らしに戻れたりはしないってことぐらいは、知れているはずなんだとぼんやりと老い耄れたけど、やけに自分に何かしらの重要な事を伝えようとする爺さんにぱちくりしてしまう彼、『そうなる…と思うけど、』恐る恐ると肩を縮めて行きつつ、自分に考える時間を与えて来ているような爺さんの無言で笑って来る姿に、心臓を縮められているように思えては、もしかしたら彼は自分にちょっとハイになれるような事を勧めようとしていないかと、酷く心配になれている野黒新、『そんなもんに手を染めたりしないぞ。』


  「ふふ…」訝しげに眉間に皺寄せてくれては、自分の事を警戒しに来ているような野黒新の姿に、心をくすぐられているように感じつつ、まったりと額を上げては、天井を見上げてしまう爺さんは何度も鼻翼に力を入れては、ゆっくりと視線を彼に向けていき、「人間はダメだけどな?」宛ら自分の唇からぽつりと飛び出ていた一言に、酷く同感してくれているようにと何度も首を縦に振って来ている彼の様に、口角を軽く上げられているように思えては、ゆっくりと臀部をソファーの背に向けてずらしていく爺さん、「欲張りだからね。」目を細めては、孫を応援すると同時に、酷く弱っている彼から見れば、鼓舞されていると同時に、負い目を感じているのであろう手紙の群れと、野黒新のやけになっている現在を共に考えていくと、少しばかり困らされているようにも思えてしまう爺さんは、心にある葛藤が愛おしく感じつつ、人間らしい事をしているような気分になれている彼は、呟いていた、「だがそこが可愛いんだ。」


  『はい…?』爺さんの人間の罪悪の根源とも言えるものを、可愛いと語って来ていた一言に苛立ちを覚えては、思わず強く歯を噛んでいた野黒新は何度も鼻翼に力を入れて行きながら、そもそも春菜はドラッグを決めていた、きちがいに快楽を得る為に無残なまでに殺されていたことを思い出してしまうと、つい人間でる事を恨んでは、欲望もあって欲しくはないと強く考えてしまう彼は、不服そうにと何度も鼻翼に力を入れて行きつつ、両手で強く携帯電話を握っていき、『欲望が自滅を呼ぶのなら、どうして神は自分で調整していかないのかな…』歯ぎしりしていきつつ、もし欲望がなくなって仕舞ったら、白野も自分に手紙を書いて来ていないだろうし、多分自分も何かしらのことで困ったりは、ただ春菜が残してくれていた画帳を見るだけで、涙を零すようなことにもなっていないのだろうと、欲望が消えて無くなったりはしない事を知りながらも、人類を美化しているような爺さんに少しばかり向きになっているようにも感じてしまう反論をしていた彼は、もし本当に神がいると言うのなら、人間なんてものを作った神もきっと大概、汚らしい存在で違いないんだと強く感じている野黒新、『意地悪だろうが。』


  「これはこれは、」携帯電話から自分に向けて来る罵っているようなニュアンスが込められている言葉に、口角をくすぐられているように感じつつ、まったりと目を細めてしまう爺さんは軽く左手を上げては、ふざけていくようにと左頬に添えていき、「しんちゃんは自分がやる全ての事を、」自分が彼に向けていく姿勢に不満を覚えているようにと、歯を噛んでは不満そうな態度を自分に向けて来ている彼に、心を撫でられているように思えては、まったりと左手を頬から引いていく爺さんは真剣な眼差しを彼に向けていき、「自分で選ぶのではなく、」まったりと顎を引いては自分の顔を凝視しに来ている彼の琥珀色の瞳を睨むようにと、見つめていく爺さんは言い放った、「神様に委ねたいのかね?」


  ”ドクンー”「うっ…」刹那、まるで自分の心臓を抉りに来るような一言を投げに来ていた爺さんの、真面目にふざけた話を紡いだ事に苛立ちを覚えつつ、神なんてものは存在するはずもないのだろうと考えていく野黒新、軽く白い歯で唇を噛んでは、爺さんが自分に投げて来た質問は、適当に答えて行ければいいんだと思いつつ、漠然と顎を引いては自分の胸元を見下ろしていく彼、『それは…』まるで自分に爺さんの質問に頷くなと、語って来るような体の芯に微かな疑問を抱えては、有り得ない話にどんな返事をしようが、まったく変わるものはないのにと、爺さんが投げていた質問でやけに本気になれている自分に困らされている彼。


  俯いては自分にどんな返事をするのかではなく、どうやって既に定まっていた返答を言葉にするのかが、分からなくなっているような孫の姿に口角が少しばかりくすぐられているように感じては、まったりと自分の身体を受け取ってくれていたようなソファーの背から体を離れては、両肘を太股に付けてしまう爺さん、「違うよね、」自分がぽつりと発していた一言に、左側の眉毛がビクッと跳ねてしまう野黒新の漠然と百足に押さえられているような左目の瞼を開けては、自分に萎縮しているような眼差しを向けに来る態度に微笑んでいく爺さんは言う、「でないと、ここで出会っていないから。」


  まるで自分の思いを見抜いて来ているような爺さんが紡いだ一言に、口角が斜め下の方向に向けられているように感じつつ、もし自分が素直に神に従ってたら彼と出会っていないようにと語って来るような爺さんの姿勢に、苦笑いして見たくなりつつ、もしかしたら自分が己の存在を部屋に閉ざしていた頃に、爺さんは怪しい宗教に洗脳されていないかと酷く心配になり、不安になってしまう野黒新、揺るぎない眼差しを向けて来ているのに、自分の存在を愛してくれているような笑顔を向けて来る爺さんの態度に困らされては、爺さんが元気になれるのなら、別に体に害するような怪しい宗教ではない限りは、自分は黙々と見守って行こうとぼんやりと考えては、爺さんが紡いだ神云々の話は実話なはずもないと強く知りながらも、彼が語って来る仮想でしかない神に、大人しく従っていくのは非常に癪に触るように感じてしまう野黒新は、迷わずに携帯電話に言わせていた、『神に全てを委ねると、』


  何度も鼻翼に力を入れて行きつつ、携帯電話から上げている平坦な声を耳にしながら、自分の人生はどれだけダメでも、自分だけのものでありたいと強く願っている彼、『俺はただの玩具になっちまうだろうが。』何故だか分からないくらいに、爺さんが自分に向けて来ていた彼が考えていた設定で、熱くなっている自分の心に口角を微かにくすぐられているように思いつつ、恥ずかしく感じてしまう野黒新は強く歯を噛んでは、額を上げて行きつつ、自分が彼に向けていく返事に微笑んでくれていて、何度も頷いて来る爺さんの顔を見つめていた、『いらねぇよ、間違った選択だろうが、俺は俺の人生を歩きたいし、』ごくりと固唾を飲み込んでは、まったりと熱くなっているい体を冷やしてくれるような空気を吸い込んで行きつつ、サイドテーブルの上に置かれていた画帳と手紙の群れに一瞥していく野黒新、『自分の思いで好きな人と一緒にいたい、嫌う奴をぶん殴って行きたい。』


  自分が彼の魂を刺激していたような話で向きになってくれては、元気になってくれているような野黒新の様に、心を弾まされているような気がしてならないでいる爺さんは大変満足しているんだぞと、自分の事を映し出して来ている琥珀色の瞳に向けて腕を組んでいく、「分かって来たんじゃない~」ニヤリと右側の口角を上げては、右手の人差し指を口角に添えてしまう爺さんは、流し目で彼の顔を見ていき、「おじいちゃんは嬉しいのう~」


  『爺さん…』まるで自分に元気になって貰いたいから、さっきのような話を自分に向けてくれていた爺さんの姿に、目を細められているように思いつつ、ぼんやりとしている目線をサイドテーブルの上に置かれていたリモコンに向けては、もしかしたら爺さんは自分が部屋に引きこもっては、ずっとアニメを見て来ていたせいで、されっぽい資料を集めては、独自で世界観を考えて来て、自分と彼の設定について熱く語って欲しいと、思ってくれていたのではないかと、漠然としている脳内で考えて行きつつ、嬉しそうにと腕を組んだままで何度も頷いて来ている爺さんの、ややふざけているようにも思える姿に、目を半開きさせて行きつつ、何度も鼻翼に力を入れていく野黒新は引き攣っているような右側の口角を上げて行きながら、爺さんならそんなことをして来そうだなとぼんやりと思っては、素直にお礼を彼に向けていくのは尋常じゃないくらいに恥ずかしく感じてしまう彼は、軽く携帯画面を弄っていく、『なんで急に創世の神みたいな感覚で話をしているのよさ…大丈夫…?』


  微かに眉間に皺寄せては、そもそも爺さんは本当に自分のために設定を考えてくれていたのかどうかも分からないのにと、心の中で呆然と考えては、横目でソファーに座っていた何処にも居そうな普通の彼を見ていきながら、老人になると、色んな病気に苦しめられるのが世の常識であるはずだと思っては、つい自分が人類を美化していたように、爺さんの事を美化しては、もっとリアルな可能性を忘れていたようにと感じている野黒新、『ボケてない?』


  「あははは、」まったりと両手を上げては、降参しているようなポーズを取りつつ、自分のことを本気で心配して来ているような孫に笑っていく爺さん、「ナイス突っ込みだね、」ぱちくりながら自分の笑っている様に、微かな安心感を覚えているようにと軽く左手を胸元に当てては、ぽつりと安堵の吐息を吐いていく野黒新の姿を見つめては、チラッと彼の膨らんでいたポケットに目線を向けていた爺さんは言う、「それじゃ、ちょっと行って貰うかね?」自分が紡いだ彼を屋敷の外に行って貰おうとする一言に、驚かされているようにビクッと眉毛を跳ねらせていく野黒新の姿勢に口角を上げては、彼のこれからを鼓舞していくようにと左手の親指を立ててしまう爺さん、「わしはここで一休みしようじゃないか。」


  『うん…』爺さんの猫背になり、真っ白になっていた髪の毛と彼の酷く疲れているように見えてしまう姿に、心を嬲られているように思えては、自分が生きているせいで自分のことを大切に思ってくれて来た人たちに、多大な迷惑をかけているんだと、心の中で悔やんでは、苦しそうにと軽く赤くなっていた鼻を啜ってしまう野黒新は、軽く右手にある携帯電話を弄っていき、『行ってくるね。』


  ゆっくりと右肩をソファーに付けて行きつつ、視野を横断しに来ているような黒いパーカーを着ていた孫の様に、微笑んで行きつつ、ぽつりと渇いた唇を開けていく爺さんは言う、「いい事は起きるよ、絶対に。」まるでドアに胸元を向けようとする自分の体を、無理矢理引っ張り返して来ているようにも思える、爺さんが自分に投げて来ていた一言に苦笑いして見たくなりつつ、今の自分にとっては、最早いい事と言う概念自体が酷く朧気になり、どんなことになろうとも、自分にとってはいいことにはなれそうにないと、感じてしまう野黒新はぼんやりと渇いた口角を上げていた、「はは…」


  自分に渇いた唇を見せてくれているようにと、自分の細めていく視界の中で佇んでくれている孫を見つめていく爺さん。体が酷く重たくなっているように感じては、宛ら自分の胸元を押し潰そうとしているようなくらいに、尋常じゃないくらいの辛い思いに、体中を占拠されているような気がしてならないでいる爺さん、「はぁ…」ぽつりと渇いた唇を開けては、皺だらけになっていた爺さんの額に、浮かべていく夥しい大粒の汗に、内心にある焦燥感を刺激されているような気がしてならないでいる野黒新、漠然と佇んでは、真っ白なベッドの上で寝込んでは、苦しそうにと息を吸い込んでいる爺さんの姿勢に心臓を抉られているように感じつつ、何度も鼻翼に力を入れては、床に付けていた両足で床を抉ってしまう野黒新は、強く右手にある携帯電話を握っていき。


  「新よ…」霞んでいく視野の中で、まるで自分の上げていた窶れていく声色に、驚かされているようにとビクッと肩を跳ねらせては、急いでいるようにと眉間に皺寄せたままで、自分に視線を向けて来る孫に淡い笑みを見せては、彼にもう自分のことで悔やんでいて欲しくないと強く考えている爺さんは、ぽつりと声を発していき、「如何やらわしはもう潮時になっちまったみたいだ。」「うっ…」自分の喉を殴りに来るような爺さんが紡いだ一言に、口角が斜め下の方向に向けられているように感じつつ、思わず右手にある携帯電話を強く握ってしまう野黒新は、悔しそうにと強く歯を噛んでは、右手にある携帯画面に表示されていた黒いシルエットに一瞥していき。


  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る