第59話俺がいるからさ?いつでも。

  両手を握っては白野のことが心配になっていた委員長は教師に呼ばれていたことにビクッと肩が跳ねては思わず大きな声を発してしまい、「は、はい!」「これは私の携帯電話よ、」呆然としている委員長の左手を握っては携帯電話を彼女の微かに赤い手のひらに乗せて行きながら、真面目な眼差しを彼女に向けている教師は言う、「何かがあった時は中に入っていた体育さんの番号で私と連絡して頂戴?」唯々諾々と首を縦に振っている委員長の銀色の眼を見つめている教師は右手の人差し指を立てては声を発してしまい、「もちろん白野さんが戻った時も電話をかけてね?」


  教師が自分の携帯電話のことに気が付いていたのではないかと不安になっていた委員長は、教師がまだ自分の事を信頼してくれていることに感動を覚えつつ軽く頷いては弱り切っている声を上げて行き、「う、うん…分かりました。」「うん、副委員長と一緒に皆のことをちゃんと見るんだぞ?」委員長の頷く姿を目尻に残しては、強く首を縦に振っていた教師が迷わずに自分たちに背中を向けて行く姿を琥珀色の瞳で映し出しては、教師の焦っている気持ちが垣間見えているような気がしている野黒新は横目で黄色の髪の毛をしていた図体が大きな男の子の隣りに座っていた和流に尋ねてしまい、「どうする?」


  自責しているような和流は強く歯を噛んでは軽く鼻翼に力を入れては、自分に何とか冷静を取り戻そうとしている、軽く唇を噛んでしまう彼は左手を上げて行きながら自分の熱くなっている額に当てつつ、両手を握っては祈っているかのようにガラスの外に視線を向けている春菜のことを見てしまい、「あっ…」忽然、閃いたかのようにあんぐり口を開けてしまう彼は強く右手を握っては迷わずにバスから降りて行こうとしている。


  和流が猛然と自分たちに背中を向けて来ていることに眉をひそめては、強く左手を伸ばしては彼の華奢な右肩を掴んでしまう野黒新、眉間に皺寄せている彼が自分に向けて来ている焦燥感に苛まれているような表情に微笑んでしまう野黒新は小首を傾げながらチラッと自分たちのことを見て来ている春菜に一瞥しては、和流に尋ねて行き、「何かを思い出したか?」和流のまるで冷静になれているかのようにゆっくりと体を自分に向けて来ている姿を見ながら軽く白野の居場所について聞いて見ようと思っている野黒新は声を上げて行き、「あいつはどこにいんだ?」


  チラッとまるで自分たちの事を気にしていないかのように各々でしたい事をしているクラスメイト達に一瞥した和流、目を細めている彼は両手を握っては野黒新に自分の軽率な思いを知らせてしまったら、義理堅い彼が自分の代わりに白野がいるかどうかも知らない場所に行ってしまうんじゃないかと思っては軽く唇を噤んでしまい、鼻翼に力を入れてしまう和流は野黒新に白野の心の中にある手柄を取られてもいいと思いつつ、困っているはずの白野のもとへ自分は向かいたいと思っては、自分が悩めば悩む程に時間が過ぎて行き、白野はますます不安と焦燥感に苦しめられてしまうのだろうと思っては強く歯を噛んでいた。


  和流の項垂れては歯ぎしりしている姿に戸惑いながら小首を傾げてしまう野黒新は彼に尋ねてしまい、「どうしたの?」軽く唇を噛んでいた和流は白野を不安から救えるのなら誰でもいいと決断しては揺るぎない視線を野黒新に向けては声を発して行き、「公園の中に迷宮があるんだろう?」眉をひそめては自分たちの事を黙々と見つめて来ている春菜に一瞥しては、ゆっくりと視線をガラスに向けている和流は言う、「多分だけど…あいつはあそこで蝶々を捕まろうとしているはずだ。」


  和流が紡いだ言葉に違和感を覚えてはつい絶句しては小首を傾げてしまう野黒新はぽつりと声を発して行き、「蝶々…?」野黒新が自分の言葉を信じられないでいる姿を見てしまうと、やはり自分が白野の事を助けたいと思いつつ、彼に説明したら白野の思いは台無しにされてしまうと考えては迷わずに声を上げてしまい、「説明している暇はないよ、」強く右手を握ってしまう彼は体が焦燥感に焼かれているような思いをしながらつい微かに震えている声を上げていた、「僕は彼女を助けに行かないと!」


  「待ってよ、」和流の泣き出してしまいそうな姿に目を細めては、彼にとって白野がどれだけ大切な存在なのかをもう一度知らされているような気がしつつ、走るのは自分より遅い彼の代わりに白野を探していこうかと考えている野黒新は言う、「まだ確証があるってわけじゃないのだろう?」野黒新のまるで自分の考えを木端微塵にするような一言に項垂れては、微かに残されていた希望に縋っていくしかないんだと思っている和流はぽつりと声を上げていた、「そうだけど…」


  和流の悩んでいる姿を目にすと、軽く右手で彼の弱っているような肩を叩いてしまう野黒新は迷わずに右足を前に向けて踏み出しては、彼の横顔を見ながら言葉を紡いでいた、「お前はここで俺の代わりに春菜のことを見ていろ?」野黒新に先越されたくないと思っている和流はつい自分でも疑ってしまう白野の居場所を迷わずに探していこうとしている野黒新の姿勢に絶句されてしまい、「はい?」


  和流の驚かされている姿を見つめては、彼に教師に叱れたくないと思う野黒新は微笑みながら彼に向けて言葉を紡いでいた、「白野を探すのは俺に任せておけよ、副委員長さん。」野黒新が自分でも疑ってしまう考えを当たり前のように信じてくれては代わりに白野のことを探してくれている姿を見てしまうと、白野のことを取られたくないと思っていた自分がとんでもないぐらいに小さく感じてしまう和流はぽつりと渇いた唇を開けてしまい、「新…」


  真面目に白野の居場所について話していた二人の会話を真剣に聞いていた春菜、白野の居場所も知らなければ彼女のもとへ駆けつける程の体力も持っていない自分を思ってしまうと、思わず苦笑いしてしまい、「私には…」軽く右手の人差し指で頬を掻いてしまう彼女は気まずそうにぽつりと声を発してしまい、「大した役目を果たせそうにないみたいですね。」春菜の自責しているような姿勢に目を細めては、軽く笑っている野黒新は声を上げて行き、「そんなことないぞ、」小首を傾げては自分にどうしてだと尋ねて来ているような彼女に向けては右手の親指を立てている彼は声を上げていた、「クッキーはまだ食べてないんだ、」ビクッと眉毛が跳ねて仕舞った春菜に微笑んでいる彼は右手を胸元に当てては自信に満ちている声を上げて行き、「俺があいつを連れて帰った時は皆で食おうぜ?」


  野黒新が自分に気を遣ってくれている言葉に心が温かくされているような気がしてしまう春菜、「うん、」淡い笑みを浮かべてしまう彼女は自分の隣りに置いていたランドセルに目を向けてはぽつりと呟いていた、「でも足りるかな…」春菜の項垂れている姿を見ながら左頬が和流の切羽詰まったように熱気を放っている眼差しに焼かれているようにと感じつつ、軽く笑ってしまう野黒新は言う、「俺は少食だよ。」そう言うと急いでいるかのよう和流に顔を向けている彼は揺るぎない眼差しを和流に向けては言い放った、「じゃ、俺が代わりに行ってくるから、」軽く歯を噛んでいる和流の不服そうな姿勢を見つめている野黒新は軽く右手を握っては軽く顎を下げて行き、「お前はここで先生の言いつけを守っていろ、な?」


  野黒新が自分を説得して来ている姿に目を細めては、いざ自分の推測が間違っていたら彼に迷宮の中に入らせては出られなくなってしまう目に遭わせてしまうんじゃないかと、懸念してしまう和流はぽつりと唇を開けてしまい、「でも…」「任せろ、」迷わずに左手を和流の右肩に置いていた野黒新は軽く左手に力を入れてはぼんやりと自分に顔を向けて来ている彼に向けては声を発していき、「あいつを連れて返せないと言うのなら俺は帰らない。」


  野黒新の決意に満ちていた一言に見開かされては、困っているような和流は目を半開きさせながらぽつりと声を発してしまい、「いや…そこまでするなよ、」まるで太陽のように輝いている琥珀色の瞳があまりにも眩しく思えてしまう和流はつい野黒新から視線を逸らしてしまい、「先生に困らせる人が一人増えるだけだろうが…」和流が自分のことを気にかけてくれている姿に微笑んでは左手を放して行く野黒新は言う、「そんじゃ、行ってくるよ。」


  宛ら自分に返事をさせるチャンスを与えないでいるかのように言葉を残しては、前の席に向かって全力疾走して行く野黒新の背中姿をぼんやりと目で追ってしまう和流、「無理矢理だな…」鼻腔を擦っていく彼の黒い髪の毛から漂っていたレモンの香りに目を細めてしまう和流は悔しそうに歯を噛んでは、彼の後を追ったとしても、先生たち大人には自分らより手っ取り早く白野のことを見つけ出せる方法があるんじゃないかな思っては、野黒新のように全ての事を考える前に行動に移している背中姿が羨ましく思いつつ、内心で自分への不満を露にしているかのように声を発していた、「任せるぞ…」


  ”ヒュー”宛ら風を起こしていたかのように迷わずに自分の左側を通ってはバスから降りていく野黒新の横顔に銀色の瞳が奪われている委員長、強く両手で教師が自分にくれていた携帯電話を握りしめてしまう彼女は内心の思いに駆り立てられては、迷わずに左足を踏み出しては野黒新の背中を追ってしまい、「あ、あの…野黒さん!」強く両手を握っては前に向かって走り出していた野黒新はつい怖がっているように微かに震えているような幼い女の子の声に視線を奪われて行き、「委員長?」体がまだ公園の入り口に向かって走りたがっているかのように前のめりになっていた野黒新は強く右足の靴底でアスファルトを踏んでは、ぱちくりながらバスから降りている赤い髪の毛に視線を奪われている、「どうした?」宛ら赤い風と化しているかのようにポケットに小さな手を突っ込んでは幼い顔を自分に向けて来ている彼女の緊張している姿を目にすると軽く笑っている野黒新は、右手の人差し指で自分の右側の方向を指差しては声を発していた、「トイレはあっちであるはずだぞ。」


  両手で自分の携帯電話を握っていた委員長は視線を左右に向けては教師が自分たちの事を見ていないのかと不安になっていた、野黒新が自分に向けて来ているふざけているような表情に左側の細い眉毛が上げられている彼女、教師に問題児と見なされている野黒新と自分が一緒にいるところを目にするときっと彼の事を差別している教師は彼の事を悪く言うのだろうと心配になっては、強く両手を握って文句交じりに声を発して行き、「ち、違いますよ!」


  委員長の向きになっては橙色の夕焼けに照らされている頬が微かに赤くなっているさまが少しばかり愛おしく見えている野黒新は、微笑んでは言葉を紡いで行き、「分かってるよ、」チラッと視線を彼女の後ろにあるバスに向けていた彼は琥珀色の宝石のシールを貼っていた携帯電話を握りしめては、自分に向けて歩いて来ている彼女に言う、「お前もバスでいてろ?」言葉を紡ぎながら自分たちが乗るバスの周りにあるバスに視線を向けていく彼は声を発していた、「でないと先生に叱れてしまうぞ?」


  野黒新が自分の事を気にかけてくれていることに嬉しく思いつつ、彼は彼自身より自分の事を思ってくれているのではないかと不安になって委員長は小首を傾げては彼に尋ねて行き、「じゃ野黒さんは平気なんですか?」「ああ、」当たり前のように返事をする野黒新は軽く顎を上げては、自分の急いでいるかのように発していた声に驚かされているかのような彼女の事を見ながら言葉の続きを紡いでいき、「平気だよ?」ニヤリと右側の口角を上げている彼は軽く左手の親指を胸元に当てては言葉を紡いでいた、「俺は叱れるのが慣れっこだ。」


  目を細めてしまう委員長は銀色の瞳で彼の顔を瞳にある黄色の星の中に封じているように微笑んでは、自分の両手で強く握っていた携帯電話の感触を感じてしまうと、やはり自分は彼の後を追っては彼の呼び止めていたのは正解だったと思いつつ、視線を自分が踏んでいたアスファルトに向けている彼女はぽつりと声を上げていた、「優しいんですね、やっぱりあなたは。」言葉を紡ぎながらゆっくりと額を上げている彼女のまるで夕陽に困らせているかのように目を細めている姿をぼんやりと見てしまう野黒新、わざわざ一刻も早く白野のことを探さないといけない自分を呼び止めたのは、その程度の事を伝えるためだったのかと文句を言いたくなっている彼は軽く首を横に振りながらぽつりと渇いた唇を開けてしまい、「はぁ…」


  両手で携帯電話を握っては内股になっている委員長の萎縮している姿に目を半開きさせては、チラッと視線をバスの後ろに向けていく野黒新、宛ら自分に何かがあったのかと尋ねて来ている緑色の瞳を目にしてしまうと同時に、自分を催促して来ているように両手をガラスに当てては座席の上に右ひざを付けていた和流の困っているような表情を見てしまうと、自分も彼と同様に白野のことを気になっている野黒新は軽く両手を握っては、準備運動をしているかのように両足を上げて行き、「すまんが急いでいるんだ。」


  野黒新が今にも自分から離れようとしている姿に見開かされては、夕陽を背にしている彼の凛とした顔立ちと、自分だけを見てくれている彼ともう少しだけ一緒にいたいと思っていた委員長は急いでいるかのように右足を前に向けて踏み出しては左手を上げてしまい、「ちょっと待っててください。」小首を傾げては自分に向けてぱちくりして来ている彼に淡い笑みを見せては、友達の為に体を張っている彼はやはり自分が思うような素敵な人なんだと思えている委員長、「はい、」彼と話が出来るせいで緊張しては汗ばんでいる両手で握っていた携帯電話を彼に向けて渡して行く彼女は言う、「これ、わたしの携帯電話なんですけれど…」ぼんやりと高く上げていた両足のゆっくりと落ち着かせつつ自分の手にある携帯電話を見て来ている彼に説明するように言葉を紡いで行く委員長、「中に先生の番号を入れていたので、」口角を上げては紅潮している頬に笑窪が浮かんでいる委員長は琥珀色の瞳の中にある自分を見つめては声を上げていた、「もし白野さんが帰った時は連絡します。」


  「おお!」委員長がわざわざ自分を呼び止めてくれていた訳を知ってしまうとつい繊細な眉毛を上げてしまう野黒新は、嬉々とした表情で彼女の両手から自分の瞳と同じようなシールが貼られていた携帯電話を受け取って行き、「サンキューな、助かるぜ。」野黒新が自分だけに向けて来ている屈託のない笑みに苦笑いしてしまう委員長は右手の人差し指で恥ずかしさのせいで痒くなっている頬を掻いてしまい、「猪突猛進にも程が…」


  軽く両手で握っていた携帯電話を見下ろしている野黒新は軽く右手で携帯電話を受け取っては、バスの上にいる二人に何とか説明するようにと手にある携帯電話を見せて行きながら納得しているように軽く頷いている春菜から、銀色の瞳の中にある自分に目を向けている野黒新は言う、「白野の奴を見つけた時も連絡するぞ?」野黒新が自分と連絡してくれると口にしていた一言にビクッと左側の眉毛を上げられては、興奮気味になってしまう委員長、「う、うん、で、でも!」軽く両手で握ってしまう彼女は困っているように苦笑いしながら言葉を紡いで行き、「携帯電話は没収されてしまうかもしれないから…」ぼんやりと唇をすぼめてしまう野黒新は彼女の困っている姿に軽く首を縦に振っては声を上げていた、「じゃかけない。」


  野黒新の携帯電話を握ってはポケットに突っ込もうとしている姿を見つめては軽く鼻翼に力を入れてしまう委員長、「あ、あと…」両手を握っては祈っているような彼女はまた彼に一歩近づくことが出来ていることに嬉しく思いつつ、宛らお互いの呼吸を感じられるこの距離が恋しく思えてしまう彼女は携帯電話に残されていた物を彼に見せたらまずいと思っては、急いでいる彼の邪魔になりたくないという思いり苛まれては、口角が斜め下の方向に向けている彼女は言いづらいそうに彼の瞳を見つめてしまい、「しょうせーうっ!」危うく彼の事をモチーフにしていた小説を書いてますと言ってしまいそうな彼女は大慌てで首を横に振ってしまい、「ううん、」軽く鼻翼に力を入れてしまう彼女は猛ペースで人差し指を突いては、肩を縮めながら彼に向けて声を発して行き、「中にある物はあんまり見ないでくださいね…?」


  委員長が自分がこっそりと彼女のプライバシーを侵害するのかを懸念している姿に軽く笑っては、当たり前のように握っている左手を胸元に当てている彼は言う、「見ないよ、じゃ行くぞ?」微笑んでいる彼は揺るぎない眼差しを自分に向けては強く両手で握っている彼女に言う、「ありがとうな、白山(しらやま)。」”ドクンー”忽然、野黒新の口から彼の声に乗っている自分の名前を耳にしていた事に見開かされては、思わず自分は夢を見ているのではないかと思ってしまう白山はつい両手で自分の唇を隠してしまい、目頭が温かい物に擦られているような気がしてしまう彼女は小首を傾げては、自分の事を心配しているような彼の顔を見ながら恐る恐ると首を縦に振ってしまい、「あ、う、うん…」感動に喉が詰まらせているようにと感じてしまう白山は強く首を一回だけ縦に振っては声を上げていた、「ありがとうございます…」


  白山の泣き出してしまいそうな姿に目を半開きさせては、可笑しそうに笑ってしまう野黒新は右手にある彼女の携帯電話の感触を感じながらぽつりと声を発してしまい、「何で礼を言うんだよ…」軽く渇いた唇を噛んでいる彼、強く和流の推論を信じては、迷宮の中で迷っている白野に待たせたくないと思っている彼は、揺るぎない視線を白山に向けては声を上げていき、「それじゃ行くぞ。」「は、はい、」ごくりと固唾を飲み込んでは軽く鼻翼に力を入れてしまう彼女は右手で暴れ回っているような胸元をなで下ろして行きながら、琥珀色の瞳の中にある自分を見つめている、「頑張ってください。」


  自分に向けて強く首を縦に振っては迷わずに背中を自分に向けて来ている野黒新の颯爽とした姿に心がくすぐられては興奮している白山は思わず体を縮めては声を発して行き、「ううう…!」頬が恥ずかしさに焼かれているような思いをしている彼女は恐る恐ると自分の痙攣しているかのような左手の人差し指で自分の事を指差してはぽつりと呟いてしまい、「な、名前を…お、覚えててくれてたんだぁ…!」口角が自ずと上げてしまう彼女は両手で頬を押さえては体を左右に揺らしてしまい、「きゃー~~!!」つい嬉しさのあまり声を上げてしまう彼女は急いでいるかのようにポケットに手を突っ込んでは、野黒新の声は電話越しだとどういう風に聞こえて来るのかが気になりつつ、携帯電話の緑色基調の待ち受け画面を見つめてしまい。


  視界を覆う程の緑色の上に咲く赤い薔薇に瞳を奪われては、ぼんやりと視線を右側に向けて行けば広がっている色とりどりの花の群れがまるで自分の事を受け入れているかのように満面の笑みで自分を受け取っている。肩を縮めている白野は怖がりながら左手で捕虫網を握っては捕虫網を地面に突き刺しつつ、自分の重たくなっているようにと感じてしまう体を支えて貰っている彼女は、右手で黄色の蝶々が入っていた透明な箱を抱えている。


  ”ヒュー”宛ら自分の事を冷やかして来ているかのような冷たい風に項を撫でられてしまう彼女は思わず肩を縮めてしまい、「うう…」体が勝手に震えてしまう彼女は悔しそうに唇を噛んでは、夕焼けに照らされている花の群れを見つめては、見渡せば自分の視界を嬲って来ているかのような花の群れに畏怖を覚えては、自分の嗅覚を誘っているような甘い香りは悪魔の誘いだと知りながらも、恐怖を噛みしめるように強く歯を噛んでしまう彼女は、軽く鼻翼に力を入れながら震えている両足で前に向けて歩き出している、「だ、誰か…」誰かに自分の事を気付けて欲しいと思いつつ、いざ誰かが自分に返事をして来たら相手はもしかしら人間ではない可能性は非常に高いと思っては、ごくりと固唾を飲み込んでしまう白野は肩を縮めながらぽつりと声を上げて行き、「いませんか…?」


  潤んでいる視界の中でピンク色の花を見つめている彼女は自分が常に左側に向けて歩けば、一直線で前に向けて歩いていたら、運が良ければ自分は出口を見つめられるはずであって、運が良くなくとも次々は袋小路にある壁に沿って歩いてたらいつかはきっと出口に出られるはずだと思いつつ、足底が痺れては上手く前に向けて歩く事が出来なくなっている彼女は悲しそうに鼻を啜ってしまい、もし自分は歩いて来ている途中で入り口を見誤ってたらどんどん疲れがたまっている自分はますます判断力を失って行き、このまま迷宮の中で飢え死になってしまうんじゃないかと考えてしまうと、このまま歩いてたら自分は本当に妖精が住み着く都に行ってしまうと思っては、まだ家に帰っては和流と他愛のない話をしたり、本を見たいと野黒新の世話もしてあげたいと思いつつ、悲しそうに歯を噛んでしまう彼女はつい自分にはまだ色んな夢を持っていて、このまま誰もいないところで屍になりたくないと切に思っては、自分の心の中からこみ上げて来ている不安と絶望に打ちひしがれ、自分にはきっと迷宮から出られなくなるんだと思ってしまう彼女は思わず項垂れてしまい、繊細な両足がまるで色とりどりの花弁を敷いていた地面に引っ張られているかのようにゆっくりと両膝を地面に付けてしまう彼女、「だ、誰かぁ…!」赤くなっている瞳の中から透明な雫がにじみ出ては、例え相手は人間じゃなくとも、自分と話をしてくれるものが欲しいと切に思っては懇願しているような声を上げて行き、「助けてよぉ…!」右手にある大事そうに握っていた蝶々が入っていた箱を軽く地面に付けてしまう彼女は悲しそうに頭を上げては声を上げて行き、「寂しいよぉ…!」


  ”ター”突然、宛ら自分の髪の毛を吹き上がる風に乗っかっているかのような足音に戸惑いながら眉間に皺寄せてしまう白野、自分の後ろにある足音に心臓が握り潰されているような恐怖に体を抱かれているような気がしてしまう彼女は思わず顔を後ろに向けてしまい、荒れ狂う風に嬲られては色とりどりの花弁は緑色の壁から離れては宙を舞ながら右手をポケットから携帯電話を取り出していた野黒新の小汚くなっていた真っ白なパーカーをかざしている。


  目を細めては自分の事を見ていたせいで安心したかのように、ぼんやりと涙を零しながら軽く赤くなっている鼻を啜っている白野のことを見下ろしている野黒新は、軽く口角を上げては自分の額に滲んでいる汗の粒を左手の手の甲で拭きながらゆっくりと彼女に向けて歩いて行き、「寂しいなら一人になるなよ。」野黒新が花弁の雨で降臨していた事につい腹が減っていたせいで自分は幻覚でも見えているのではないかと思っていた白野、まるで生身の人間のように自分に左手を向けて差し伸べて来ている野黒新の微笑みに見開かされて絶句している白野、「えっ…?」


  華奢な肩で捕虫網を支えていた白野の恐る恐ると自分の中指の指先を軽く左手で掴んで来ている姿が可笑しく思えては淡い笑みを浮かべている野黒新、宛ら自分の温度を感じていたせいで心の防波堤が潰れて仕舞ったかのように、爆発した感動と苦しみに苛まれてはつい唸り声を上げて泣き始めている白野。チラッと彼女の地面に汚されていた太股の隣りに置いていた嬉しそうに羽ばたく蝶々を封じていた箱に一瞥した野黒新、淡い笑みを彼女に見せている彼は力を無くしているせいで上手く立つことがでいなくなっている彼女の事を見ながら軽く左足を地面に付けて行きながら、左手で彼女の汗に濡らされている頭を撫でては微笑んだ、「俺がいるからさ?いつでも。」


  「うぐっ…」野黒新に頭を撫でられている感覚を肌で感じてしまう、彼は自分が作り出していた幻なんかじゃなかったんだと思ってはつい捕虫網が邪魔な気がしては、捕虫網を隣りに向けて捨てて行った彼女は猛然と前のめりになっては両手を広が手行き、「新…!」強く自分の体にぶつけて来ている白野の体と彼女にくっついかれている汗ばんでいる頬に目を細めては、軽く左手で彼女の痙攣しているような背中を擦っている野黒新は言う、「よしよし。」自分の右耳で聞こえて来る彼女の悲しそうな泣き声を耳にしてしまうと、ついもっと早く駆けつけてたらなと思ってしまう野黒新、「やっと見つけたって…」ぽつりと渇いた唇を開けてしまう彼は軽く顎を上げては自分たちの事を囲んでいた緑色の壁を見ながら、自分の右肩を叩いて来ているかのように何度も頷いて来ている白野の存在を感じつつ、照れくさそうに軽く左手の人差し指で頬を掻いてしまう彼は言う、「言いたいところだけど…」ぼんやりと視線をまるで袋小路のように遠くにある緑色の壁に一瞥してはぽつりと声を発してしまい、「ここの壁の右側を出たらすぐにでも出口にいけるんだけどな…」

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