第309話 クルミ味噌応用
クリ味噌の味見もして、十分餅でも楽しめそうだと確認し……クリ・クルミ共に量産した方が良さそうだとなり、それから家事なんかを終えて夕方。
粗熱が取れて味が落ち着いたクルミ味噌の味を改めて確かめた俺は、これはもっと他の料理でも使えそうだなと、そんなことを思う。
香りは強く、味は美味しく、砕いたクルミの確かな歯ごたえもあって、飽きること無くいくらでも食べられてしまう。
これはついでに色々試して見ても良いんじゃないかとそんなことを思い……夕飯のための食材を取ってこようと倉庫に向かう。
すると居間でゆっくりしていたコン君とさよりちゃんがその気配を察知して動き出し、俺の手伝いをするために倉庫に来てくれて……コン君に大きな大根二本を、さよりちゃんに袋入りのピーマンを預け、俺は大根や他の野菜と豚肉を手に取って台所に向かう。
そうしたらエプロンをつけて手洗いをし、食材を洗って道具を揃えて……まずは大根から調理をしていく。
葉の部分を落として太めの輪切りにし、皮を剥き……煮崩れ防止に角を取って、それを量産する。
「にーちゃん、これは何するの?」
「うん、これは煮込むだけだね」
作業の途中でコン君に質問されて、俺がそう返すとコン君とさよりちゃんは「それだけ?」なんてことを言いながら首を傾げる。
「うん、それだけ」
なんてことを言いながら輪切りを作り上げたら、大きな鍋を用意し水をたっぷりと入れたなら、大きな出汁用昆布を入れてコンロに置き、火を点ける。
そうやってじっくりと昆布出汁を煮出したら、昆布を取り出し大根を入れて中火くらいで煮込んでいく。
「よし、これはこれで終わり、あとは煮上がったら取り出すだけだよ。
次は……ピーマンいこうか」
作業を終えて俺がそう言うと、コン君達は何か言いたげにするが……次の作業が始まったこともあり、意識を切り替えてそちらに注目する。
と、言ってもこちらも簡単な料理だ。
ピーマンを細切りにし、長ネギも同じく細切りにし、豚肉も出来るだけ細く切りそろえる。
そうしたらそれらをフライパンで炒めて……ある程度炒めたらクルミ味噌を入れて絡める。
しっかりクルミの香りが立ち、豚肉に火が通ったなら完成、大きな皿にドサッと盛り付ける。
「さて、今日は次でラストだよ、後はサラダと味噌汁、ご飯で夕ご飯は完成だね」
盛り付けながらそう言うと、コン君達の表情は更に困惑というか、納得出来ないとそんな顔になる。
そんなコン君達にはあえて何も言わずに……ちょっとしたサプライズ気分で料理を進めていく。
まぁ、そうは言っても大したことのない料理ではあるんだけども……なんてことを考えながら、豚バラ肉をまな板の上に広げていく。
そうしたら豚バラ肉の上に刻んだ大葉とミョウガを置いていって……その上にクルミ味噌を塗りたくる。
綺麗に塗っていったら豚バラ肉を丸めていって……丸め終わったら耐熱皿に綺麗に並べる。
並べ終えたらラップをふわっと被せてレンジでチン、お手軽に完成となる。
それから手を洗い包丁とまな板を洗い……サラダを作り、大根の葉や大根の切れ端で味噌汁を作り、炊きたてご飯とお茶を用意して完成だ。
「じゃぁ配膳を手伝ってくれる?」
コン君達にそう言うと、コン君達は首を傾げながらも手伝いをしてくれて……コン君達がいない隙に俺は、クルミ味噌を小皿に持ってその上に柚子の皮を刻んだものを振りかける。
お盆を用意しいくつかの皿とそれを持っていって……配膳が終わったコン君達が席についたのを確認してから、その小皿を取り出し、コン君達の目の前の皿に盛り付けた煮込み大根の上に柚子クルミ味噌を乗せてあげる。
それを見てコン君達は目を丸くする。
そんなコン君達を見て小さく笑い……匂いを嗅ぎつけたのかやってきたテチさんと一緒に『いただきます!』と声を上げ、それから「まずは大根からどうぞ」と皆に勧める。
昆布湯で煮込んだ大根は、箸を挿すとすっと切れて……おでんの中の大根のような感じに仕上がっている。
そんな大根に昆布の出汁がたっぷりと染み込み、それだけだと味気なくて食べられたものではないのだけど、柚子クルミ味噌を塗ったなら解決で……なんとも良い香りのする、たまらない味の大根が出来上がる。
それを口に運んだならコン君もさよりちゃんも、うんうんと頷いての納得顔になり、パクパクと大根を食べ始める。
「大根は野菜の中でも糖質とかカロリー少なめだから、こうやって食べるのもありなんだよねぇ。
塗る味噌の量を自分で調整して、大根多めに食べたならダイエットとかにも良いかもね。
クルミ味噌じゃなくて、普通の味噌でも良いし、砂糖を入れて煮込んだ味噌でも良いし……そこは好みかな。
柚子の皮は出来たら使いたい所だね」
ピーマンと長ネギと豚肉の炒めものも、クルミ味噌が良い具合に味と香りをつけてくれていて美味しく、クルミ味噌の肉巻きもなんともたまらない。
クルミ単体でも良い香りだけど、大葉やミョウガ、柚子など更に良い香りを足しても良い感じで……箸が止まることなく進む。
ご飯も進むし……うん、正月関係なしに量産しておいても良いかもしれないなぁ。
コン君もさよりちゃんも夢中で食べていて……そんな中、特に食欲を爆発させているのはテチさんだ。
特に柚子クルミ味噌がお気に入りのようで、結構な量を用意した大根の輪切りが次々になくなっていく。
「……柚子が気に入った? それとも柚子とクルミ味噌の組み合わせ?」
俺がそう尋ねるとテチさんは大きな輪切りを丸々一個口の中に押し込み、頬を膨らませながらモグモグモグモグと咀嚼し……こちらをじぃっと見つめたまま咀嚼し、ごくりと飲み込んでから言葉を返してくる。
「全部かな、柚子もクルミ味噌もこの大根も、妙に口に合う。
大根は好きでも嫌いでもなかったものだから……妊娠での変化かもしれないな」
「そっか、ならこれからは大根を多めにしておくよ。
今は大根が美味しいシーズンだし、御衣縫さんがたくさん用意してくれたからね」
そう言うとテチさんは満足そうに頷いて……それからまた柚子クルミ味噌を塗った大根の輪切りを箸で突き刺し持ち上げ、ぐいと口の中に押し込む。
それからまたモグモグモグと咀嚼して……それを真似しようとして口の大きさからか断念するコン君達に「無理しないようにね」と声をかけてから普通に……箸でちょうど良い大きさに切ってから食べるという、普通の食べ方で大根を存分に楽しむのだった。
――――あとがき
お読みいただきありがとうございました。
応援や☆をいただけると、クルミ味噌の仕上がりが良くなるとの噂です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます