第2話〈人造人間転生〉

ゴボゴボと音を立てる。

生暖かい水の中で眠る俺は目を開いた。

……どういう状況だこれ?

緑色の液体の中で俺は呼吸器を装着されていて液体の中を浮いていた。

うわぁ……もしかして俺生きてるのか?あれか、最新の医療技術かコレ。

なんと言うかアレだな、アニメとかで見たことがある培養器で成長するホムンクルス見たいな気分だ。

……あれ?なんだ、硝子越しに見える顔……子供か?呼吸器付けてやがる。

顔色悪そうな子供だな、俺と一緒に培養器入るか?……って、あれ?

瞬きとか、俺が手を動かすと一緒になって動いてやがる、と言うか、この子供、俺か?

え、これ、硝子に反射して写ってるの、俺かよ……嘘だろ、髪の毛生えて無ぇじゃんハゲてやがる。

子供になった事よりもそっちの方がショックだ。……いやなんで子供になってんだよハゲに驚いておかしい部分をスルーしそうになったわ。

おい、責任者誰だよ。最近の医療技術は若返りを可能にしてんのか?スゲーな医学。

………と言うか、俺何時までこの中に入ってんだよ。誰か居ないか?出してくれー。

そんな事を考えて一時間か二時間程経過した時、硝子の外からカツカツと音が聞こえてくる。

なんだ、ようやく責任者が来たのか。すんませーん、トイレ行きたいんですけど出して貰えますかー?


「――――――」


ッて、うわ、なんだコイツ。カラスみたいな仮面被ってやがる。

あれだ、ペスト医師だ。白衣に鳥の形状をした仮面を被ってら。

なんだ、液体が邪魔で何も聞こえねぇよ。つかこれ責任者か?明らかに変質者だろ。

これが医師なんて無いだろ、こんな格好許されるのは黒死病流行った時かハロウィンの仮装パーティーくらいだろ。


ん?なんか電子音が聞こえるぞ、ぴぴぴって、なんだこのペスト医師、この培養器を操作してんのか?開けるつもりか?!

シュゴゴーって、なんだこの音、あ、液体が排出されてんのかコレ。液体抜くのは良いけどタオル無い?濡れてるの嫌なんだけど。

あ、硝子が開いた……さぶッ!なんだ此処、寒いッ!部屋に北極作ってんのか!?

濡れたタオルぶん回したら秒で凍えそうなんだけど、濡れた体をフルチンで走ったら凍え死ぬぞコレ。


「やあ息子。気分はどうだい?」


口に付いてた呼吸器を無理矢理外されて息を吸う。

あぁクソ。肺が凍える。タオルくれタオル。いや下さいお願いします。


「あー……ぐ、ぅ」


すいませんタオル下さいって発音しようとしたら変な声が出た。

呼吸器付けてたから発音が出来ないのか?うわ、舌動かそうとしたら舌が重いッ。

つか、体中がダルッ。動かそうとしたらプルプル震えてやがる。あ、この震えは普通に寒いだけか。鳥肌立ってる。


「……おや?なんだい息子。体を震わせて、寒いのかい?」


寒いんですよ。頭を縦に振ってそれを主張する。

するとペスト医師は息を飲んでいた。なんだよそんな驚いた感じは。


「これは凄い!まさか元素から生成した人体に魂が宿っているッ!器から魂が生まれたのかな?それとも空の器に別の魂が憑依したのかな?あぁ、こんな事は初めてだ、素晴らしい……」


……ん?なんだ、コイツ。既視感があるな、何処かで見た事ある気がすっぞ。

あれ……なんだっけ、テレビで出てた?こんなマッドサイエンティストの様な言葉を発する奴なんて早々忘れる様なもんじゃないけどな……。


「キミは便宜上漆號しちごうと呼ぶ事にする。君を創って七人目の人造人間だからね」


……あっ!その呼び方、あれだ。思い出したっ。

黒羽尾カラス、またの名前を人吉ひとよし吉人よしとっ!

え、ウソだろお前あれだよな。俺の書いてた『現代退魔奇譚』の人間だよな?

まだ立ち絵とかなかったけど設定だけは存在してた奴。

確か正式に登場するのは『現代退魔奇譚・零』だったんじゃ無いんだっけ?

え、なんだよ。容姿の設定決めて無かったから誰だか分からなかった。

人造人間を作る術理を持つ術師で、人造人間を壱號弐號って呼び方をするから、その呼び方でようやく分かったわ。


………え?と言う事はなんだ、アレか?俺死んで、自分の世界に転生したのか?

ここ『現代退魔奇譚』なのか?マジか。……つー事は。あれか。

ヒロインとかいるんだよな……。


「ぎ、ひゃひゃ」


やべぇ、変な笑い声が出た。マジか。俺好みのヒロインがこの世界に存在してんのか。こりゃこんな所でボーっとしてる場合じゃねぇ!主人公がヒロインを攻略するよりも先に俺がヒロインを攻略しねぇと!!


「三年の培養器に入っていたのにもう動けるのか、凄い……と言うか、何か執念を感じるねぇ」


「ぎゃひゃひゃぎぐぎゃばッ!!」


ぐあッ!走ろうとしたら普通に転んだ。体が慣れてないんだ。クソ。

……あ、ヤベェ、此処ペンギンが住む様な凍えた部屋だから、濡れた体で寝そべると体が引っ付いちまった。あイデデデッ!お、俺の大事なイチモツがッあああッ!!


「ふむ、体が引っ付いてしまったか……待っていなさい、今お湯を持ってこさせよう」


ありがとうございますっ!畜生、コイツ主人公にとっての敵なのに優しいじゃねぇか。ありがとうペスト医師。これからはお父さんって呼ばせてもらうぜ。


「お湯の温度?百度で大丈夫だろう」


大丈夫じゃねぇよ!火傷するわこのクソ親父ッ!!

テメェそれぶっ掛けたらこの組織ぶっ壊す様に行動してやるからなこの野郎ッ!










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