29.親交を深めるために戦いに行こう!
互いに互いの秘密を語り合わせた後、俺は二人に連れられてウェンドンという要塞都市にやってきた。俺の現在のキャラクター、ベオウルフの進行度では到達していないが、他のキャラクターでは必ず一度は訪れていた。
「俺もここに来れるんだな」
「到達している人がいれば一緒にワープできますから。今まではあんまり他の人と遊んでませんでしたもんね」
ガブちゃんを抱えたノノさんが、空を見上げながら答えてくれる。今まで見た動画を思い出してくれているのだろうが、少し恥ずかしい。
「なんか有馬さんに動画全部見られてるのすごい恥ずかしいんだけど」
「えーそう? 私達だってたくさんの人に配信見られてるし、なんなら虹の館の他の人のを見たりするよ? アマツさんもしかしてそういうのに慣れてない感じ?」
「いや、俺の場合はここ3年ぐらい動画撮影と編集しかしてないし俺の考え方とか全部動画見てればわかるしで、まあ何ていうか、全力で自己紹介してるというか全部見通されているというか……」
というか、それだけ俺の動画に惚れ込んでくれているという時点で何か気恥ずかしい。あっているかわからないが、配信者の界隈では『ガチ恋』『推し』という言葉もあるらしい。有馬さんもそういうのになるのだろうか。
「そうなの? ノノちゃん」
「そう、だね。だいたい覚えてるよ。どの企画でどこで戦って、最初はどんな感じだったかとか、どこから覚醒したかとか。あとその時アマツさんがどんな話してたかとかどんな顔してたかとか。流石に日付は覚えてないけど」
「それだけ覚えてれば十分だ。俺だって後語りの前に自分のメモとか動画見直したりとかしてるのに」
「大好きですから」
「の、ノノちゃん?」
神代さんに突っ込まれて有馬さんが慌てる。
「あ、アマツさんの動画、です! アマツさんは、その……」
「ええから行くぞ! この会話は俺が恥ずかしい」
「あれ、アマツさんも照れてる?」
「うるせ。良いから行くぞ。言っとくが、ここのダンジョンで俺が歯が立つところなんて無いからな」
有馬さんに俺の動画に対する思い出を話されると俺が恥ずか死するので、無理矢理にでも話題を切り替える。実際のところ、俺がこのエリアに到達していないのは実力が足りないからだ。最近は花の迷宮のボスを周回してレベル上げとアイテム回収、後は今後取得するスキルを模索したりとしていた。
「あ、それなら大丈夫。面白いダンジョンがあるんだよ。アマツさんもガブちゃんも楽しめるとこ。ついてきて」
「そんなダンジョンあったか?」
ここウェンドンはダンジョンが集中した都市であり、プレイヤーからはダンジョン街とか言った呼ばれ方をされている。様々なタイプのダンジョンが存在するダンジョン街だが、俺はすでにアイテム回収目的で一通り回っていたはずだ。中堅から高難度クラスのダンジョンが数多くあり、企画動画のそこそこの難所だったことを覚えている。
「多分アマツさんは回って無かったと思います。ダイジェストにも攻略している場面が無かったと思うので」
「そんなところがまだあったか? 一応アイテムとかは出来る限り確認したと思うんだけど……」
「アイテム自体は見た目だけのものだったりとかマイハウスの権利みたいなものが多い場所なので見逃してたんじゃないんですか?」
有馬さんに言われるが、全く覚えが無い。アイテムが手に入りそうな所は全部回ったと思うけどなあ。
「ほらついたよ。ここ、結構楽しいんだよね」
「私もたまにサーヤちゃんとか他の人と遊んだりしてます」
目の前にはダンジョンの入口らしき門、そしてその上へと続く塔。上へと登っていくタイプのダンジョンだろう。塔の中に入ると、最奥に転移結晶が浮いており、円状の壁には様々な紋様が刻まれている。
それを見て、ようやく思い出した。俺はこのダンジョンだけは、攻略しようとはしなかったのだ。
「あー、思い出した。ここステータスの極振りが意味ないから一回も入ってなかったんだ」
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