第4話 意外と評判が良いので生放送をやってみる
軽くレベル上げをした後、ログアウトして動画の編集をする。今回はまずいつもと違って大部分を早送りにする。いつもならカットして面白そうなところだけ残していたのだが、今回は全体を通して見ていても面白くないものなのだ。
そして最後に、ログアウト直前に取ってきたメッセージを音声付きで挿入。内容は、この企画に関しては動画ではなく生放送をメインにしたいということとその理由。視聴者に認められるとは思わないが、これはもう決めたことだ。
「うー、あ。疲れたなあ」
久しぶりに楽しんだが、ゲームをまともにしたせいで疲れた。前回の企画の終了報告の動画にもコメントが沢山来ていたが、それを見るのは明日にしよう。
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ここ数日大量に動画をとるために無茶していたこともあって、起きるのが遅くなった。目を覚ましてすぐ前回の企画の終了報告と、先程投稿されたばかりの『ステータス完全平均値』企画の二本の動画に来ていた感想に目を通していく。
まずは前回の極振り企画の最後の動画。こちらはやはり企画の終了を嘆く声が大きい。確かに、前回の企画はこれまでの極振りの中でも仕様にぶっ刺さっていたと思う。かなりぶっ飛んだ性能を発揮していた。それが無くなってしまうのがもったいないという人が多いのだろう。
一方で、まあいつも通りだよなという感想も多かった。
極振りというのは、一つに偏ることで何かに特化する行為である。ただどのゲームでもそうなのだが、特殊な効果を持ったアイテムによって欠点を補ったり、長所を回したり出来ることが多い。それが極振りと合致してしまうと、極振り勢以外が全く歯が立たない、といった状況を生み出してしまうことが多い。
さらに言えば、今回の俺はその極振りの中でもそれを活用して唯一級のアイテムを入手してしまい、そのアイテムの効果もあって周りが決して追いつけない状態になってしまっていた。
そんなアイテムを実装するなよとも思ったのだが、運営としても俺のような極振り勢がそのアイテムを取得するとは思わずネタとして入れていたのだろう。
結果、俺がそれを取得して暴れ初めて三日ほどで運営から修正が発表され、俺の元にもそれを使うのを控えてくれという連絡が来た。
そんな状態がゲームとしてまともなはずがない。俺の動画の視聴者もあくまでエンターテイメントとして楽しんでいるのであって、それが運営のナーフに潰される所までがコンテンツである。いつまでも同じことで無双していたら誰も見なくなるだろう。
中にはそれを動画に取り上げゲームの環境を壊した俺を批判するコメントも幾つか寄せられているが、そんなもの知ったことか。
俺はあくまでシステムで許された範囲の遊びをしてそれを投稿し、それを運営が確認した結果これはまずいなとなったから修正された。
コメント数が多いので返信は基本しないことにしているのだが、
『次はどんな企画にするんでしょうか?』
という内容のコメントに対しては最新の二つの動画のURLを貼り付けて置いた。
一通り目を通し、いつもの俺のコメント欄らしく荒れているのを確認して次の動画のコメントを見る。完全平均値の動画だ。
「意外と受けが悪くない、みたいだな。物好きが多すぎんかうちの動画」
まあ人とワイワイ盛り上がるでもなくただただ極振りで効率よく走る動画を見ているのだから物好きに変わりは無いのだが。
『さすがにネタが切れたか』『極振らないの?』『それじゃあ見る人減らない?』と言った意見が多い一方で、好意的な意見もかなりある。
『いつも余裕がない感じだったから、ゆっくり楽しむのは良いかもしれないですね』『アマツの話し方が好きだから今まで通りにやるなら見るよ』『むしろ初心者向けの動画で良いんじゃないのでしょうか』など、今後の俺の方向性に関して考えてくれている人も多い。まあそこまで考えてもらうと投稿者としては申し訳なくなってくるのだが。
そして最新の動画。これは概ね肯定的な意見が多かった。中には『極振りをやめたお前なんて誰も見ない』『散々環境荒らして自分はまったりかよ』と言った意見もあるのだが、大半のそういった人物は前の動画で見るのをやめているようで好意的な人ばかりが残ってくれているようだ。
『なんか一周回って楽しそう』『ゆっくり遊ぶのも良いな、俺も参加したい』『生放送やるなら見に行きます!』と言ったコメントは見ていて嬉しくなる。
「なら早速生放送でやってみるか」
概ね好意的な意見が多いのを見て、次のログインから早速生放送をしてみることにする。パソコンの設定を変えてゲーム内の映像をそのまま放送できるようにし、コメントがゲーム内の俺の視界に写るように調整する。
ついでに、常に俺の視界にはっついているカメラを可動式にした。俺一人では動かし続けるのは難しいかも知れないが、常連の数名にならカメラを任せることが出来るので彼らに任せてうまくやってもらおう。
他の投稿者の中には撮影者を雇っている人もいるようだが、俺はそこまではっきりと見た目を意識しているわけではないので今までやってこなかった。これからは必要になるのだろうか。
「よし、準備OK、っと。それじゃあやってみますかね」
新しいことにチャレンジするワクワクと、ゲームそのものに対するワクワク。二つのワクワクが湧き上がってくる。こんな感覚は久しぶりだ。
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