元極振りプレイヤーののんびり放浪記～極振りする度に運営がナーフを入れてくるので完全均等ステータスで遊びます～

第2話 ゲーム一年目にして初めてのチュートリアル

　外で取ったばかりの動画を編集し、投稿予約を一〇時間後に設定する。前回の企画、『DEX極振り』の終了報告動画も二時間後にはアップロードされる予定だ。

　一息つき、椅子に深く座り込む。ゲームの世界も俺に取っては心安らかに休める場所ではない。本当に休めるのは、この椅子の上と、夜寝るときだけだ。これからはゲームの世界も休める場所になってくれると嬉しいのだが。

「のんびりやるなら配信がいいんだろうがなあ」

　実を言えば、生活には全く困らないぐらいには動画を見てもらえているのだが、これまでほとんど生放送をしたことがない。常に録画を編集して投稿しているのだ。

　ただそれはあくまで面白い場面を編集するためであって、しばらくはのんびりした風景を送ることになる。特に面白くなる気もしないので、それなら垂れ流しにして編集する必要のない生放送もありだと思っている。

「まあコメントを待ってみるか」

　いずれにしろうちには、真剣に動画を見てどうするのがより良いかアドバイスをしてくれる視聴者が数名いる。その人達の意見も聞きながらこれから判断して行けばいいだろう。

「よし、いってみるか」

　ゲームを起動し、再び『鋼の大地』へとログインする。ログイン後ランチャー画面で作成したばかりのキャラクターベオウルフを選択し、ログインを選択する。今までのキャラクターより大柄なのでしばらく違和感があるだろうが、どうせそのうち慣れるだろう。

『チュートリアルを実施しますか？　スキップを行っても取得可能なアイテムは変化しません』

「チュートリアルを行う」

　一応これまでのプレイの中でシステムは把握しているのだが、せっかくなので全部一からやってみようと思う。

　チュートリアルを開始すると、セーブデータを選択する場所から別の場所へと転移する。場所は訓練場らしき広い場所だ。

「おう、来たな新人！　こっちに来い！」

　訓練場の中央に立っている人物に呼ばれ、そちらに向かう。

「俺がお前の戦闘チュートリアルを担当するメギドだ。短え間だがよろしく頼むぜ！」

　甲冑を纏った人物が言うと同時に、視界の端のウインドウが更新され、『メギドに従ってチュートリアルを終了する』というものに変化する。

「よし、それじゃあ早速始めるぞ」

　メギドの指示に従って、最初は武器の使い方、アーツと呼ばれる武器を使用した必殺技の発動の仕方、ガードの方法などを一つ一つ実行していく。

　俺自身はまだ武器スキルなどを一切取得していないが、チュートリアルのために一時的に剣と、剣を用いたアーツが使用可能になっている状態だ。

　最後にゴブリンを一匹倒してメギドのチュートリアルが終わった後は、彼に礼を言って訓練場から出る。するとまた別の場所へと転移させられ、今度は的がたくさん立った空間へと連れて行かれた。

　今度は魔法のチュートリアルのようだ。魔法の扱い自体は以前『INT極振り』や『MND極振り』をした際に使っていたので大体わかっているが、丁寧に話を聞きながら進めていく。目新しい知識は特に無かったが、普通のペースで進める場合にした方が良いことを教えてもらった。

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　武器、魔法とチュートリアルを終えた後、本来のフィールドへとログインする。だが、まだチュートリアルは終わっていない。最後にショップの利用の仕方のチュートリアルがあり、貰った金でポーションを買うことになる。

「おーっすおっちゃん」

「おう、冒険者だな。何か入り用か？」

　以前から慣れ親しんだ露店の主に声をかける。この世界ではプレイヤーだけでなくNPCが店を開いており、初心者の間はそこからアイテムを買うことになる。

　俺がこの店の主と再会するのは５度目か６度目のはずだ。キャラクターを作り直す度に世話になるのだが、その度に忘れられる。まあ向こうからすれば全部別人なので忘れるという言い方は良くないのかも知れないが寂しい話だ。

　他にも美女NPCがやっている店もあるのだが、俺はこの店の主のいかつい顔が好きなのである。そのいかつい顔が優しく笑うのが見ていて心温まるのである。

　思えば、動画の企画のためにゲームをプレイしていて疲れていたのだろう。

「初級ポーション５個くれ。チュートリアルで買わないと行けないんだ」

「あー、あれか。よし待ってろ」

　奥でゴソゴソと箱を漁ったおっちゃんが、木箱に収まった十本の初級ポーションを持って来てくれる。俺は箱を受け取って代わりにお金を払う。以前までならこの初級ポーションも入手してすぐに売り払っていたが、今回はそのまま使ってみよう。

「他に何かいるもんあるか？」

「いや、今日はこれで十分だ。ありがとなおっちゃん」

「おう、また来い！」

　ガハハッ、と大きな声でおっちゃんは笑う。彼とも、今回のセーブデータでは仲良くしたいものだ。

　おっちゃんの店を離れ、街の中をブラブラと歩く。録画はチュートリアルからずっと続けているが、これと言って見どころのある動画になりそうな気はしない。まあとりあえずレベル上げと攻略を進めてみよう。