冷凍みかんを空に投げたら

君の意味は百年後には無意味になるのに

今日も路傍で花は咲く

春の甘いにおいの風はまだ冷たくて

手を握った湿り気と熱に嘘はなくて

絶望してみたくなるほど鮮やかなコントラストを

そんなにたやすく空に描くのだ


色と線と君がいたことと

帰り道の柿の木のむくどりと

ぽとりと落ちた椿の花と

あっという間に解体された誰かの家


過ぎていった一つひとつを言葉に残して

しに意味を付け加えていく愚かな僕も

いつか無に帰すから無意味なのかな

なんて一瞬の感動すらも

本物から遠ざけて現実で上書きしてしまう


ベージュの草のカーペットはちくちく硬くて

シート越しにくすぐったくて

君は馬鹿みたいに笑う

君は馬鹿みたいに笑う

そんな君に意味がないなんて言わないで欲しくて

君がいなくても僕は今日も空に笑う

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る