なごやか海デート(お題:女のぬるぬる)

 海水浴デートでのカップルの一幕。


 レジャーシートとパラソルを設置し終えた直後、バクヤは彼女のマリーに頼み事をされた。


「日焼け止めを塗って欲しい?」


「うん! お願いバクヤ!」


 そう言ってマリーは日焼け止めクリームのボトルをバクヤに渡すと、仰向けに寝てブラ紐を外してしまう。


「って、おいおい。まだ俺、やるなんて一言も!」


「え~? いいじゃん。これって海の定番イベントってやつでしょ? 付き合ってる私達がやらない理由なんてないでしょ!」


「む、むむぅ」


 バクヤは反論できなかった。マリーの言うことには一理ある。


 少々恥ずかしいが、これも彼氏彼女が乗り越えるべき壁というやつなのか。


 覚悟が半分、やけっぱちが半分な心境で、バクヤは日焼け止めを両手に塗り込んでいく。


 十分にクリームが両手に用意できたところで、バクヤはマリーの体に触れはじめた。


 まずは首元から。


「ひゃぁん!」


「うおっ!?」


 変な声を出されて、とっさにバクヤはマリーの体を手放してしまう。


「もぅ! バクヤ、驚きすぎ!」


「わ、悪い」


 気を取り直して、バクヤはマリーの体に日焼け止めを塗っていく。


 首筋、背中、腕の裏側、太もも。


 自分でいつでも触れる男の体と違って、マリーの体は想像なんてしようもないほど柔らかかった。


「ねぇバクヤ。そろそろ体の前の方も……」


「ところでマリー。女の子って日焼け止めを塗る時、なんでブラを外すんだ?」


 マリーの声にかぶせるようにバクヤは質問した。


「ん……言われてみれば深く考えたことないなぁ。背中のブラ紐が、日焼け止めを塗る時に邪魔になるから、かな?」


「それは、公衆でブラを外す恥ずかしさに勝る理由になるのか?」


「なると思うよ? 仰向けになって胸を隠してさえいれば。それより、そろそろ体の前の方も……」


「マリー。海が青い理由に心当たりあるか?」


「ん……なんだろ、どこかで聞いたことはある気はするけど覚えてないや。ググればわかると思うけど。ねぇ、それより体の前の方も」


「………………」


 バクヤは硬直した。


 露骨なマリーの色仕掛けをかわすための質問がこれ以上思いつかないのだ。


「……マリー、前は自分でやってくれ」


「えー!? バクヤのバカ! けちんぼ! へたれ! 根性なし!」


「勘弁してくれ! これ以上は俺の理性と羞恥心が限界なんだ!」


 悲鳴じみたバクヤの声は、夏の海水浴場のにぎやかな空気に消えていった……。

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