エルフが信仰を捨てる理由(お題:宗教上の理由で諦め)


 エルフの隠れ里にて、ひっそりと建てられたツリーハウス住宅での一幕。


 エルフの女性と人間の男性のカップルが、ベッドに座りながら話をしていた。


「聖神教徒をやめた? 本当か、アロマ」


「そうです、カグラさん。昨日付けで、私は修道女じゃなくなったのです」


 アロマと呼ばれたエルフの足元にはしわだらけになった修道服が雑に置かれていた。


「そりゃまた、なんでまた。聖神教といえば、エルフの国の国教じゃないのか」


 この世界における宗教でもっとも影響力のある信仰、それが聖神教だ。その教会本部がエルフの国にあるゆえ、聖神教とエルフの結びつきが強いと考える人は少なくない。


 カグラも例にたがわずそう考えていたのだが。


「あ、誤解なさってますね? カグラさん、エルフが聖神教を信仰するのは義務じゃないですよ? 推奨こそされますけど、信仰を捨てても罰されることは無いです」


「そうなのか? でも、今までの冒険で聖神教に入信してて別に悪いこと無かったろ? 聖なる加護とかで魔法の性能を底上げできたし、蘇生魔法を使えたしで」


「いやですねぇ、カグラさん! もう私達は結婚して冒険者を寿退職するんですから戦闘スキルなんか関係ないですよ! そもそも、私が修道女をやめるのは別の理由ですし」


「その理由って?」


 カグラに聞かれると、エルフは息をひときわ吸ってから力強く答えた。


「我慢の限界だからです!」


「我慢?」


「肉を食べられない生活はもううんざりなんです! 今まで私が好きこのんで仲間が肉食うのをじーっと眺めてたとでも? 野菜と果物で飢えをいやすのはもうイヤなんです! ハンバーガー食べたいんです! マンガ肉がっつきたいんです!!」


「そ、そうか。それで昨日アロマは狂ったように肉ばっか食べてたのか」


「その通りです! ベジタリアン糞食らえです! 時代は肉です! 肉食系です!」


「おぉう……」


 いささかアロマの勢いに気圧されながらも、カグラは安心した。


 アロマが自分の種族の伝統的宗教をやめたと噂で聞いて、カグラはなにか深刻な事情があるのではないかと心配したのだ。


 しかし、それは杞憂だった。


 アロマは肉を食べたい、ただそれだけの事だったのだ。


「ちなみにカグラさん! 聖神教が禁じていたのは食欲的な意味で肉を食べることだけじゃなく、”男と女”的な意味でも肉の欲を禁じていたのです! しかしその縛りがなくなった今、ついに捧げられます! 今までカグラさんにあげたくてもあげられなかった私のバ







 ※ここから先の展開は青少年に好ましくないため聖神教に検閲されました

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