みそ汁は凍らせるべきか否か?(お題:幸福な汁)

 冷凍保存。


 それは数ある食材の保存方法でも、特に食材を長持ちさせることに特化した方法である。


 だがその長持ちぶりと引き換えに、重大な欠点があることは否めない。


 食材によっては、凍結から戻した食材の味が落ちる可能性があるからだ。


「だからおれはポリ太郎の案に断固反対だ! せっかく作ったみそ汁を凍らせるなんて!」


「いいじゃないかよ、タケル! みそ汁を腐らせてしまうよりはマシだろー!」


 アパートの一室、ポリ太郎の部屋にて2人の少年が議論を交わしていた。


 互いに丸テーブルを手でバンバン叩く音が鳴り響く。


「今日中にポリ太郎がみそ汁を食いきってしまえばいいだろ! ハラの中に入れてしまえば、そもそも腐ることを心配する必要ない!」


「食べ切れる量じゃないから保存方法に手をつけるんだって! というか、なんでオイラの食事事情にタケルが口出しするんだい!」


「自炊の師匠として弟子の暴走を見過ごすマネはできないからだよ! そのみそ汁だって、おれの監修が無かったら今頃ただの砂糖水だったんだぞ!」


 ぎゃーぎゃー、ぎゃーぎゃー。


 ポリ太郎とタケルの言い争いは加熱する。


 そうしていて、どれだけ時間が経ったか。


「こうなったら、先生に聞いてみるしかないな!」


 ポリ太郎が、妙なことを言い出した。


「先生? ポリ太郎おまえ、おれ以外に自炊の師匠がいるのか?」


「グーグル先生! お願いします!」


「って、ネット頼りかい!!」


 スマホを取り出したポリ太郎にタケルはツッコミを入れた。


 ポリ太郎は「みそ汁 凍らせる」と検索ワードを打って調べてみる。


 すると、


「あれ!? みそ汁を凍らせるやり方、普通にあるぞ!?」


「えっ、そんなバカな!?」


 ポリ太郎の言う通りだった。


 みそ汁を凍らせることを推奨する記事が見つかったのだ。それも複数、けっこうな数があった。


 確かに冷凍保存することで味が悪くなる食材もあるが、逆に味が良くなる食材もあるらしい。


 シジミなどの二枚貝、キノコ、大根や人参などの根菜がそうだ。


 ちなみにポリ太郎がタケルの監修のもと作ったみそ汁はしめじと大根が使われている。どちらも、冷凍保存に適した食材だ。


「…………(汗)」


「…………(ニヤニヤ)」


 バツの悪い表情をするタケルを、ポリ太郎は愉快げに眺める。


「……悪かったよ、おれの負けだ。冷凍みそ汁、試したきゃ勝手に試せ」


「あーい!」


 こうして今回の議論は、ポリ太郎の大勝利と相成ったのだった。

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