第25話
本当にこの恭子には驚く。とにかくそれからは、うちへ来ても今迄の様に私にベタベタしたり、私と楽しそうに話したりしたりを一切しなくなった。 そして私を避ける様になり、私ではなく母や祖母に話しかけたり、いつも側にいる様になった。私が話しかけても無視をしたり、そっけない感じで離れる。 そしてそれからは異様な事が沢山起きる様になったのだ。例えば私宛に、申し込んでもいないしていないダイエット商品の案内書の パンフレットやサンプルの錠剤だとか粉の製品が大きな封筒で届けられる。そうした物が幾つもいきなり送られて来る。 最初何故かは分からなかったのだが、ある時に分かった。丁度恭子が家に来ていた時に そうした物が送られて来たからだ。 私が又か⁉、と嫌な顔をしながら呆れてそれを開封して見ていると、そして祖母や母も 何故そんな物がやたらと最近私宛に送られて来るのかと側で不思議がっていると、恭子がニヤニヤしてとても嬉しそうな顔をしてその様子を見ていたのだ。 だから、自分が私の名前で勝手に申し込んでいたのだ!!彼女は私の住所の他に、生年月日を知っているから、簡単に申し込めた。 だが普通、そんな事をするか?!しかも何度も何度も。 そうした会社はしつこく幾らでも同じ物を 送り付けて来る事もあるから、私は何箇所かへ、仕方無いから電話をして断った事もあった。私が申し込んだのでは無く、他人が面白いからと悪戯をしたので、私は何も買うつもりは無いと。 又、一度は私自身も恭子の名前で何か同じ様な物を、サンプルだとかを申し込んでやった。 それからはもう違う会社からそうした物は送られて来なかった。 だがそんな事ばかりではなかった。 更に私が、又母や祖母までもが驚く事柄も幾つかあった。 例えばある時は、普段手ぶらで来るクセに、その時は横浜駅近くにあるデパートで洋菓子を買って来た。そしてそれは最近流行りの プリンで、とても美味しいから皆で食べようと言って箱から出した。 だから私達は、母と祖母と私は、キッチン テーブルに着いた。すると数が一つ足りない。恭子は嬉しそうに一つずつ、自分と母と祖母の前にプリンを置いた。だが、私の分は無かった。 そうして自分は当たり前の様に食べ始めた。私は驚いたが、母も祖母も流石にそうだった。 「叔母さん、早く食べて!これ、凄く美味しいんだから。」 「だってあんた、リナちゃんのは?一つ足りないじゃないの!」 「あぁ、買ってないよ。」 「エッ、何で?!」 「買いたくないから。」 「買わない?!あんた、人の家に遊びに来ながら、そこの家の子に何も買ってこないの?他の人間にはちゃんとに買っておきながら、そんな事をする訳?!」 「あんた、随分と酷い事をするんだね〜。」祖母も加勢した。 「叔母さん、良いから早く食べてよ?あぁ、美味しい!!」 恭子は母が責めた事に驚きながらも、気にしないふりをしながら自分のプリンを食べ始めた。 「嫌な子だね〜〜〜っ!!」 祖母が呆れながら言った。 「何、その態度??そんな事をして、こっちが喜ぶとでも思うの?!あんた、本当に馬鹿なんだね〜っ?!」 「とにかく食べてよ?!凄く美味しいんだから!!」 恭子が焦りながら言う。こんな展開になるとは思っていなかったのだ!だが、幾ら毒親でも一応は私の親だ。流石に怒る時には、たまには怒る!! 母が私に言った。 「あんた、ママの分を食べなよ?!ママ、いらないからさ、プリンなんて。あんた、これ食べて良いよ?」 「駄目ーっ?!」 恭子が凄い声で喚く。 「何で駄目なの?!そんなの、私の自由でしょう?これは私にくれたんだから。違うの?!」 「それは私が叔母さんに買ったんだから!」「なら私が何をしたって自由じゃない?あんたがうちのリナちゃんに、あんたの従兄弟にだけ、買わなかったからいけないんだから。ほら、リナちゃん、早く食べな!じゃなきゃママと分ける、これ?」 「いらないよ、そんな物!!食べたくなんかないから、そんな物。そこまでしてまで。」私は馬鹿にして笑いながら言った。 「ああ、そうだね?大した事ないもんね、 こんな物!」 母は恭子に凄く呆れながら、そう言って怒りながらも、一口プリンを口に入れた。そして言った。 「フン、何がそんなに美味しいのよ、こんな物?!どうってことないねー。」 恭子が驚きながらも凄く悔しそうな顔をする。 「リナちゃん、あんたこんなの、どうって事ないよ。」 母が私に、笑いながら言う。 「アハハハ、そう思ったよ!」 私が返事した。 祖母も一口食べて言う。 「あらぁ、本当だ?!あんまり騒ぐから よっぽど美味しいかと思ったらねー?フフフ。」 「何言ってんの?!これ、今凄く流行ってるんだよ?!凄く美味しいって、雑誌にも 載ってるんだから!!」 「アハハハ!恭子、そんなのは何もこのプリンだけじゃなくても、他にも幾らだってあるんだよ?美味しいだとか有名だとか、雑誌に載ってるだとか流行ってるだとかのお菓子なんて、そんなのは幾らでもあるの!!あんただってデパートでこれを買う時、他のそうした有名な店が周りに沢山あったでしょう?なら、もっと美味しいだとか凄いお菓子もあるんだよ。」 恭子は黙っている。 「そうだよ、あんたはこれがよっぽど美味しいと思ってるみたいだけど。確かに不味くはないよ。だからって別にそこまで騒ぐ程美味しくなんかないし、プリンじゃなくても、 もっと美味しい物だってこっちにはウジャ ウジャあるんだよ。あんたは、田舎だから、余り色んな物が沢山周りに売っていないから、そうして物凄く感動するんだろうけどね。」 祖母も言った。 「でも、流行ってるんだから!!」 悔しそうに、泣きそうな顔で反論する。 「流行りなんて、コロコロ変わるんだよ。 それに、流行ってなんかなくても昔からある美味しい物や、美味しいお菓子はあるの。 そんな事はみんな普通誰でも知ってるし、 そんなのは都会なら色々と売っていて、普通に幾らでも食べられるんだよ。あんたは違っても。どう、分かった?!」 祖母が噛んで含む様に説明しながら、又続けた。 「それからね、人の家に何か手土産を持って来るなら、その人数分を持って来るんだよ。でないと、貰ったほうも嬉しくなんかないんだからね!!そんなのは、あんた、当たり前の事なんだよ?!」 たまには良い事を言う、私の祖母だった。 だが気の強い、負けず嫌いな恭子はこれに
ついて反省もせずに、更なる悪事を考え出す。只、もう我が家に手土産のお菓子や食べ物を持参しなかった…。 両親にどっぷりと甘やかされた若い娘には常識や歯止めが無くなるのだろうか?私の、利口ぶっていても、中身は常識外れの馬鹿な従兄弟はそうだった…。
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