第19話

実は忘れていた事がある!!何せ42年も前の話だから。              オジサンが家に来た最後の日の事だか、抜けていた話がある!!           それは最後に来た日のその前の時に、オジサンは帰る時に私に何度も叫んだ。明日警察署ヘ、自分に会いに来る様にと。いなくても受付に頼んでおくから、話が通る様にしておくから、とにかく来てくれと。       母と祖母はこれを聞いていたので、翌日は学校を休ませた。私が放課後、学校を出てから警察署に行かれたら困るからだ。又は学校から戻ってから、急いで行かれると思ったからだ。何しろ家から歩いて10分かそこらなのだから。                母は休ませれば、祖母が一日中私を見張り、行かせない様にすると思った。それが母の アイディアだ。             だが祖母はそんな女ではない。自分さえ良ければ他人の事などどうでも良いし、別に気にしないし何とも思わない。全て自分中心で、大変に横着でいい加減な、約束なんて絶対に守りたくないし守れない女だ。      だから私が学校を休んでも、家になどいない。昼間からフラフラと近所を欲付き歩く。パチンコをするだとか、友達の家で話をしている訳ではない。友達などいない。(昔は割とそんな年寄りがいたかもしれない…。) 只どこかの店に入って見ていたり、近所の人間と道で会えば立ち話をしたりだとか、その程度だが、要はいない時間がある程度ある。だから私は午前中に、祖母がいない間に家を抜け出し、言われた様に、急いで警察署へ 行った。                 中に入り、カウンター、いや受付にはズラッと警察官が座っていて、殆どが若い男だった。だから一斉に私を見た。       私は、緊張と恥ずかしさで嫌だったが、受付に近付いて行った。           皆、若い男達が凝視している。全員が、自分の所に来てほしそうな感じだった。相手が まだ10代の娘だし、外国人の顔で、当時は若いから可愛らしかった。        それにあんな所にずっと座っていて退屈だ ろうし、だから彼等の物凄く強い視線を感じた。                  だが私の間違いは、女ばかりの家庭で非常に厳しくてうるさくて、だから殆ど男と接する事が無かったので、恥ずかしいから、一番端で下を向いて何かをしていた、太った中年の婦警の所ヘ行ってしまった事だ。     彼女は話しかけると上を向き、私の顔を見ると非常に驚いた。何の用かと聞かれ、あのオジサンに来る様に言われたからいるかと訪ねた。                 だがオジサンはいなくて、その婦警は私の事を、何処の学校だと聞いたり、何故今学校に行っていないのかだとかを叱り始めて、帰る様に言った。              もう丸で話にならなかった!!      すると隣の、30歳位のイケメンの警官が見かねて、自分が相手をすると言って私を呼んだ。                  そして私に楽しそうに質問をしだして、私も気が楽になり、答え始めた。優しいし感じが良いから、私も嬉しそうに答えた。    オジサンが私に今日此処に来て、自分の名前を言えば分かる様にしておくと言った旨を伝えた。                 そうして話しているのを横で聞きながら、 婦警はイライラしていたが、ついには爆発した。隣の、自分よりも若い男女が楽しそうに会話をしているのに腹が立ったのだ。   他のカウンター内の男達もいつまでも私を見ている視線は感じていたが…。      それでいきなり、この男性職員に言った。 それ以上私と話をしては駄目だと。    この彼が驚いて抗議すると、今度は怒鳴った。それ以上話すと、そうして自分の言う事を聞かないと承知しないと。これは命令で、でないと何か処罰する風にするからと。  私も驚いたが、彼も非常に驚き、仕方無く命令に従った。そして貝の様に口をつぐんで、私が話しかけても返事をしなかった。目も私を見ない様にまっすぐ前を見て、それは正に蝋人形か剥製の動物の様だった。     周りの他の男達が私を憐れむ様に見ていた。この女だけが嬉しそうだった。      仕方無く、私は彼等に背を向けて出入り口へ歩いて行った。             「あの、あの子じゃないですか?!○○さんが言ってたのは。」            いきなり、私と話していた彼かその女に言ったのが聞こえた。            女が聞き返す。             「ほら、この間、○○さんが話していたじゃないですか?凄く可愛い子がいて、だけど親が酷いって話を。」            女がいきなり私に呼びかけた。      「一寸、待ちなさい?!戻りなさい!」  私は恐くなり、走って入口を出た。女がカウンターから出ると、外に立っていた中年の制服警官に叫んだ。            「その子を捕まえて?!早く!!」    その警官が急いで私の側へ走ると捕まえようとした。私は素早くかわして、丁度青く変わった信号の横断歩道を走って、一目散に家ヘと戻った。               祖母はまだ家にいなくて、私が出ていたのは分からなかった。            だから、オジサンがその同じ日に又家に来たのが最後の日で、母に手錠をかけた日だ!!来た時に、カーテン越しの私に謝った。まさか学校を休ませるとは思わないから、だから放課後に来ると思ったから、その時にいる連中に私が来る事を話していたのだと言って。「リナちゃん、ごめんね?!リナちゃん!!」、「オジサンが悪かった!!リナちゃんの事、昼間の連中に話してなかったから!!学校が終わってから来ると思ってたから!!本当にごめんね?だからリナちゃん、出て来て?!」             そうして何度も謝った。そして出て来る様に頼んだ。                それで、その日に母や祖母ヘ、以前の学校のミッション系のインターナショナルスクールで、担任だったシスターから私の話や自分達の話を色々と聞いたと言ったのだ。    確かそうだ!!             そして、やっと何とか私がカーテンの内側から出てオジサンのほうへ行こうとすると、母が怒り狂い、私を攻撃しだしたのだ。   だから、オジサンが部屋に飛び込んで来たのだ!!

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