第15話

そうだ!刑事のオジサンは、私の署名した その書類が母のせいでパァになり、さぞやがっかりしたと思う。赤いハンカチの巡査もだ。                  実はオジサンは家にその後何度か来たし、私の下校時に学校の近くで待っていてくれて、私と数回話したのだ。          1度目に家に来た時には、私は隠れていて出なかった。母と祖母が出た。私は出て来るなときつく命令されていたからだ。オジサンが玄関に来て、外から声がした時点でだ。  だから階段の一番下にいた。だが階段の前には、玄関からは見えない様に、カーテンがしてあった。私はそのカーテンの内側にいて、様子を見守っていた。          オジサンは私に話したいからと何度も何度も母や祖母に頼んだが、断られた。     母達は、裕の盗みの件で、再度私に協力してほしいと思った様だ。だから非常に嫌がった。                  だが、そうでは無かった。それで来たのではなかったのだ。             何故なら、1度撤回したらもう同じ件で被害届を出せないと、後から、下校時に会った時にそう言ったからだ。          私は馬鹿な母にされた事を言い、私の意志で取り止めたのでは無いと言って謝ったのだ。又もう1度、今度こそそんな事はさせない からもう一度署名すると強く言ったのだが、オジサンは残念そうにそう言ったのだ。  母はオジサンが来たのは裕の件だと思い、だから悔しいけどもう諦めていたし、その事で姉の雅子と仲たがいになるのを嫌がったのだと思う。姉妹の中では一番慕っていたからだ。                  祖母は、自分に関係しない事で、自分が得をする事以外は、何でも面倒臭い事はことごとく嫌ったからだ。            そして私も裕の件かと思ったが、違った。 だからオジサンはうちに入り、玄関に立ちながら、何度も何度も私の名前を呼んで、出て来る様にと頼んだ。私も出て行きたかったが、オジサンが帰った後が凄く恐かったから、出られないでいた。         彼は私をとても気にかけてくれた。彼は彼なりに私を好いてくれた。だから私も、変な意味では無く、オジサンが好きだった。   二回目に家に来た時にも、同じだった。  オジサンは確か、直ぐに又家に来た。次の日かその次位だったと思う。結果は又同じだったが。                 オジサンはしばらくいてから帰った。前回と同じ様に、母や祖母に、頼むから帰ってくれと散々言われて。            帰ると二人は又同じ事を何度も言った。  「本当に困るね〜。どうしよう?」    「そうだね〜、みんな、この子のせいだよ!!」                そしていつもの様に祖母がドヤ顔で偉そうに言った。                「ねー、あんた?あんたのせいなんだよ?!全部あんたのせいなんだよ、分かってるの?だから、もし又来ても、絶対に出るんじゃないよ。いいね?!」            私は仕方無く承諾した。         オジサンは数日すると又来た。そして又私の名前を一生懸命に呼んだ。私は階段の、カーテンの裏側にいたが、出るか出ないかと凄く悩んでいた。              オジサンが母や祖母に言った。      「私も少し調べさせてもらいましたから。」「ハッ?何の事でしょうか?」     「リナちゃんの事です!前の学校に行って、色々と聞いてきましたよ?」       オジサンは私が昔、12歳迄通っていたミッション系のインターナショナルスクールヘ 行き、当時の担任だとかに私の家庭の事を聞いてきたのだ。             そして私が色々と、今で言う虐待やパワハラ、モラハラを受けていたし、うちがそう した家庭だと教えてもらったと言ったのだ。                  母達は仰天して、違うと騒ぎ始めた。何故なら自分達にはそうした自覚は丸で無かったからだ。                 母や祖母は、自分の物や自分の家の物なら、何をしても自由だしその権利があると思う タイプの人間達だった。それは相手が同じ人間で、子供でも、又は犬や猫やその他の生き物にでも該当した。           だから何を赤の他人が言っているのだろう?!、と思い、大迷惑な顔をしながら困って騒ぎ出していた。            オジサンは又私の名前を大声で何度も呼び、出て来る様にと頼んだ。         「リナちゃん、リナちゃん、出て来て?!」「リナちゃん、早く出て来て?!リナちゃんはこんな所にいちゃいけない!!こんな所にいちゃ駄目だ!!」           そして、ついに私はオジサンに誘われて拒み切れずに、カーテンの外ヘ出た。     オジサンの顔がパッと明るくなった。   母が驚いて私を見る。          そしていきなり、山姥さながらに私に飛びかかって来たのだ!!          続.                                                        

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