第14話

私は裕が死んだ時には何とも思わなかった。それでもうんと小さな時には、一緒に遊んだ事もあった。だがそれも私が2歳か3歳位だったし、どちらかと言うと虐められていた事のほうが多い。             だから私は口から出そうになった言葉を飲み込んだ。                「良かったジャン?もう色々と面倒かけられないで。」                本心そう思ったからだ。だが言えば雅子は発狂して怒っただろう。          だからこう言った。           「じゃあ、恭子も悲しんでいるね。」   「そんなの、当たり前じゃないの?!兄弟なんだから!!」             そう怒鳴った。             私は、何もそんなに怒って言う事ないのでは?、と言おうとしたが、黙っていた。更に何か憎らしい事を言うに決まっているし、 いちいち相手にしないほうが賢明だと思ったからだ。何しろ大切な息子に先に死なれているのだから!!             ちなみに私はつい最近、裕に散々盗まれた蝶額について、あれは普通に買えば幾ら位なのだろうと思った。            あの時、質屋は裕に確か3万円を渡したのだが。質屋の親父はあれが幾らかは分からなかったと思う。だからそうした金額を渡したのだ。                  恐らく、ああした物を見た事は無かったの ではないだろうか。何故なら、当時うちへ来た人間は皆あれを見ると、ジーッっと見入ったり、何かコメントをした。綺麗だとか、あれは一体どうしたのか等だ。       一番最初に家へ来た人間、大人は皆そうだった。子供でも、私の友達もそうした子が殆どだった。                私が10年程前に、犬の話を聞いたりしてお世話になった、犬の世界では有名な調教師の先生も、お礼に一つ送ったら、着いた当日に直ぐに電話があった。          非常に喜ばれて、あんな物を見た事が無い、大変に綺麗で素晴らしいと何度も繰り返して言われた。本を沢山出したり、外国にも何度も行かれている方だが。         それで兎に角、今はもうブラジルでもとっくにあれを作って売ってはいけなくなったのだが、もし日本でも古いのを売っているのなら、幾らなんだろう、と思って検索してみたのだ。                 出て来た!!中古の蝶額が!!それらは大体3000円から8000円位の間で売っていて、35個位あった。              家にある蝶額と同じフレームのもあったし、だからあれは、殆どかある程度が、裕が母のを盗んで売っていた物ではないだろうか? だけど本当に酷い事をする…。      そう言えば昔、何度か家に、母宛にだが温泉のある地域の旅館から、請求書が来ていた。何万円かの泊まり代金だ。違う旅館からもしばらくすると、来た。          裕が泊まって、払えないから母の住所を言ったのだ。恐らくは自分の住所もうちにしたのだろう。                私達は直ぐに分かったから、それらを旅館に送り返したり、親に送った。       何とも図々しくて非常識な男だ!!    だが、これは元々の性格もあっただろうが、親の躾がうんと悪くてどうしようもなかったからだ。                何故なら、この親達は母や私の事を内心非常に馬鹿にしていた。下に見ていた。そして、そうしたかったのだ!!         裕の糞クズは死んだ。散々、ここに書き切れない程の嫌がらせや酷い事を我が家で、母や、特に私にしまくった最低のろくでなしだった。                 でも割と早く死んだ。まだ50歳だ。憎まれっ子世にはばかる、は成立しなかったのか?!                 だからこの小駒乃裕は、もう悪さが出来ない。少なくとも悪霊にでもならない限りは!!だが異常な程我が儘な、下らない男だったから、なって又しつこく、何かをされたらどうしよう?!            まぁ、そこまで心配をする必要も無いだろうとは思うが…。そう願いたい。      続. 

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