第28話 今日も散歩に

 私とロコは、朝の散歩のために外に出てきていた。

 前までと同じように、アムルドさんとブルーガさんもこの散歩に同行する。

 そして、さらにもう一人この散歩に同行する人がいる。アムルドさんの妹であるラナリアちゃんだ。


「さて、それじゃあ、ロコをよろしくね、ラナリアちゃん」

「はい、任せてください」


 今日の散歩は、ロコのリードをラナリアちゃんに任せることにした。リードを持つ私を羨ましそうに見ていたため、そのようにすることにしたのだ。

 恐らく、ラナリアちゃんならロコを任せても問題ない。ロコもよく懐いているため、きっと普通に散歩できるだろう。


「ラナリア、先程話した通り、今日は見回りが多い。だが、怖がらなくていい。これは安全のためだ」

「お兄様、わかっています。私も、そこまで怖がりではないので、大丈夫ですよ」


 そこで、アムルドさんがラナリアちゃんにそう話しかけた。

 昨日の夜、不審者が庭に入って来たため、屋敷は警戒状態にある。そのため、庭では見回りが行われているのだ。

 ラナリアちゃんに、そんな見回りが怖くないと、アムルドさんは説明したようである。確か、ラナリアちゃんは人見知りをする方だったはずだ。そういう面から、アムルドさんは心配したのだろう。


「まあ、何かあっても俺が体を張って守りますから、安心してください」

「は、はい。ブルーガさん、よろしくお願いします」


 ブルーガさんの言葉に、ラナリアちゃんは少し萎縮しながらも頷いた。

 今まで見たことがなかったためわからなかったが、ラナリアちゃんはこのように人と話すのが得意ではないようだ。

 つまり、アムルドさんが言っていたラナリアちゃんが私に懐いてくれているというのは本当だったらしい。他の人とは明らかに態度が違うため、私もそれを確信できるようになったのである。


「……あの、一ついいですか?」

「うん? どうかしたのかい、ラナリア」


 そこで、ラナリアちゃんはアムルドさんの方を向いて、そう言った。

 何やら、聞きたいことがあるようだ。


「侵入者の目的は、一体なんだったんでしょう……」

「目的か……それは、中々難しいな」

「何か、盗もうとしていたとかじゃないんですかね?」


 ラナリアちゃんが聞きたかったことは、侵入者の目的だったようである。

 そういえば、侵入者がどのような目的で庭に入ってきたのかはわからない。

 普通に考えれば、ブルーガさんの言う通り盗みの可能性が高そうな気がする。だが、お金持ちとはいえ、護衛が絶対にいるこの屋敷をどうして選んだのかは疑問を感じるべきことかもしれない。


「私が気配を感じたということは、侵入者は私の部屋の近くにいたということだと思います。そのことが、なんだか怖くて……」

「……別に、それはラナリア個人を狙った訳ではないはずさ。ラナリアがあの部屋にいるなど、侵入者は知るはずはないからね」

「あ……そうですよね」


 ラナリアちゃんが心配したのは、侵入者が自分を狙ったのではないかということだった。

 自分が来た日に侵入者が入ったことで、そのように感じてしまったのだろう。

 だが、それはアムルドさんの言葉で否定された。侵入者が、ラナリアちゃんがいる部屋を知ることはできない。そのため、ラナリアちゃん個人を狙った訳ではないはずなのだ。


「まあ、あまり気にしても仕方ない。早く、散歩に行って、気分を転換しよう」

「あ、はい」


 アムルドさんの言葉に、ラナリアちゃんはゆっくりと頷いた。

 確かに、いつまでも気にしていてはいけない。侵入者のことなど、考えるだけ無駄なのだ。

 こうして、私達は散歩に出かけるのだった。

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