第27話 不審な人物

 私はロコを抱えながら、廊下を歩いていた。

 昨日の夜は、ラナリアちゃんと眠ることになった。

 結局、その後は何も起こることはなく、ぐっすりと眠ることはできたが、まだ色々と気になっている。

 昨日の夜何かあったのか、それを聞くために、私はアムルドさんの所に向かっているのだ。


「あれ?」

「クゥン?」


 そんな私の目に、とある人物達が入ってきた。

 それは、アムルドさんとブルーガさんだ。

 二人は、真剣な顔で何かを話している。それが何を話しているのかは、中々気になるものだ。

 もしかして、昨日のことを話しているのではないだろうか。状況を考えると、そのように思えるのだ。


「少しいいですか?」

「え?」

「おっ……」


 私が声をかけると、二人は少し驚いたような顔をした。

 その反応は、話していたことを聞かれたくなかったというような反応だ。

 やはり、二人は昨日のことを話している気がする。私の直感が、そう告げているのだ。


「二人とも、何を話していたんですか?」

「いえ、なんでもありません。たわいのない話をしていただけです」

「おう、ただの世間話をしていただけだ」


 私の質問に、二人はそのように答えてきた。

 その反応は、明らかに何かを隠している反応だ。

 それなら、少し質問を変えてみた方がいいかもしれない。この質問への反応で、二人が昨日のことを知っているのかどうかは、わかるはずである。


「昨日の夜、何かあったんですか?」

「えっ……」

「ほう……」


 その質問に、アムルドさんとブルーガさんは驚いたような反応をした。

 この質問にそのような反応をするということは、昨日の夜のことを知っているということである。


「知っているんですね?」

「……ええ」


 私がさらに問い詰めると、アムルドさんはそのように呟いた。

 やはり、二人は昨日の夜のことについて知っているようだ。


「昨日の夜、何かあったんですね? 一体、何があったのかを教えてもらえますか?」

「実は、昨日の夜、この屋敷の庭に侵入者がいたらしいのです」

「侵入者?」


 アムルドさんの言葉に、私は少し驚いた。

 しかし、それはある程度予想できていたことだ。ラナリアちゃんやロコと予想した通り、侵入者がいたのである。


「俺が対処して、侵入者は追い払うことができた。だが、そういう奴がいたということは、色々と問題なんだ」

「ブルーガさんが……」


 私達の予想は、さらに当たっていた。

 不審者とともに、ブルーガさんがいたから、ロコは吠えなかったのだ。

 恐らく、ロコはブルーガさんがいれば、不審者を追い払ってくれると思ったのだろう。そのため、あのような反応をしたのだ。


「あなたに、不安を与えないように伝えないことも考えていたのですが、気づいていたのですね」

「ええ、私ではなく、ラナリアちゃんもこのことは知っています。そもそも、最初に不審者に気づいたのは彼女なんです」

「そうですか……それは、驚きですね」


 私がラナリアちゃんのことを伝えると、アムルドさんは驚いたような顔をした。

 ラナリアちゃんの勘の良さには、私も驚いている。恐らく、アムルドさんも同じように考えているのだろう。


「これからしばらくは、警戒態勢を続けます。だから、そこまで問題はないと思います。ただ、ミナコ様も充分に気をつけてください」

「ええ、そうしようと思います」


 アムルドさんの言葉に、私は頷く。

 侵入者の目的が何かわからないが、計画しておく必要はあるだろう。


「あ、アムルドさん、それなら、今日の散歩について聞いてもいいですか?」

「散歩ですか……とりあえず、警戒はしているので大丈夫だとは思います」

「そうですか、それならよかったです」


 そこで、私は散歩について聞いておいた。

 もしかしたらできないかと思ったが、問題はないらしい。

 それなら、この後すぐに散歩に行くとしよう。少々怖いが、見回ってくれている人も多いと思うので、きっと大丈夫なはずだ。

 こうして、私は庭に侵入者が入ってきたことを知るのだった。

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